第221話 古代ゴーレムの進軍
【影の塔・三十一階】
アンがすべてのエンシェントゴーレムを掌握した戦場は、まるで息をひそめたように静まり返っていた。
つい先ほどまで轟いていた金属音も爆発音も消え、空間を満たすのは、ただ微かな空気の揺らぎだけ。
動きを止めたゴーレムたちは、まるで忠誠を誓う兵のように整列し、光を宿した瞳をユークたちへと向けていた。
「……ほんとすごいな。さっきまでピンチだったはずなのに」
ユークが感心したように呟く。
「……信じられん。あの数のゴーレムを、わずか数分で支配するとはのう」
テルルが唸るように言い、跪いたまま動かないエンシェントゴーレムに近づいてペタペタと触っている。
「これだけのエンシェントゴーレムが味方になったのは心強いわね」
アウリンは跪くゴーレムたちを見回し、満足そうに微笑んだ。
そんな中――。
「っ! 《フォースジャベリン》!」
弛緩しかけた空気を切り裂くように、魔力の光が走った。
セリスの突きと共に放たれた光の槍が虚空を裂き、遠方の石壁を一直線に貫いて、破片を散らす。
「セリス!? 今のって……!」
突然の行動に、ユークは目を見開いた。
セリスは槍を構えたまま、鋭く周囲を見回している。
「今、誰かに見られてた!」
その声には張り詰めた緊張があった。
全員の警戒心が一気に高まる。
「どこっ!」
「みんなは私の後ろに!」
アウリンが杖を構え、ヴィヴィアンが前に出て盾を掲げる。
セリスはしばらく周囲を見渡していたが、やがてふっと力を抜いて槍を下ろした。
「……もういなくなったみたい。今倒したやつだけだったのかも」
セリスがまだ警戒を残した表情で報告する。
「……このエンシェントゴーレムたちをけしかけた奴か」
ユークが低く呟いた。
「なるほど、私たちは監視されてたってわけね」
アウリンが納得したように頷く。
「侵入がばれてたってことかしら~?」
ヴィヴィアンが問いかけるように言い、
「そういうことじゃろうな。まあ、もともと予想できてたことじゃ」
テルルが彼女の言葉を肯定した。
「アン。このゴーレムたちは動かせる?」
ユークが肩に腰かける小さな精霊へ顔を向ける。
『はい! いますぐにでも戦えますよ!』
アンが元気に答えた。
「なら、すぐにでも進もう。時間をかければかけるほど、敵に対処する余裕を与えることになる」
ユークの声が落ち着いて響く。
「そうね。いい考えだと思うわ」
アウリンが頷き、
「ちょっと緩んでたかもしれないわ~。気を引き締めなきゃ!」
ヴィヴィアンが盾をぐっと握りしめ、
「警戒は任せて!」
セリスが力強く宣言した。
『じゃあ、進ませますね!』
アンの声と同時に、ゴーレムたちの目が光る。
彼らは次々と立ち上がり、重々しい足取りで遺跡の奥へと進み始めた。
こうしてユークたちは、掌握したエンシェントゴーレムを従え、
影の塔の三十一階から四十階――ボス部屋を目指して進み始めた。
石造りの回廊が、果てしなく続いている。
床も壁も天井も、すべてが古代の文様で覆われていた。
ユークたちの足音が、空間に淡く響く。
前後には数十体のエンシェントゴーレムが無言で進み、その一歩ごとに石畳がわずかに震え、砂がこぼれ落ちた。
「……静かすぎるな」
ユークが低く呟く。
「確かに。不意打ちの一つでもあるかと思ったら、一切ないわね」
隣を歩くアウリンが答える。
「多分、撤退させたんじゃないかしら。セリスちゃんにやられて、個別に仕掛けてきても無駄だと思ったのかもしれないわね」
ヴィヴィアンが盾を構えたまま、慎重に周囲を見回す。
ユークは黙って頷いた。
確かに、これほどのゴーレムの群れを前にしては、普通の敵など歯が立たない。
けれど――胸の奥に、嫌な予感が残っていた。
「……でも、何かが待ってる」
セリスが遺跡の奥を睨みながら呟く。
「うん。なんだか誘われてるみたいだ」
ユークが真剣な表情で頷いた。
『何がきても私のガーディアンたちがやっつけちゃいますよ、マスター!』
アンが元気よくユークの肩で飛び跳ねる。
「ありがとう、アン。期待してるよ」
ユークは表情を緩めて、眉を吊り上げているアンに微笑みかけるのだった。
――三十一階から三十九階まで、敵影はなかった。
ひたすら静寂だけが続く。
それでも、彼らは慎重に進み続けた。
やがて、巨大な両開きの扉が姿を現す。
「ここが……ボス部屋か」
ユークの声が、扉の前で静かに響いた。
「やっと着いたわね」
アウリンの青い髪が、微かに揺れる。
静寂が極まり、空気が重く沈む。
ユークは息を吸い込み、仲間たちへと視線を向けた。
「行こう。――これが、この階層での最後の戦いだ!」
扉の向こうには、この階層のボスモンスターが待っているはずだ。
緊張を帯びたユークの声に、仲間たちも静かにうなずくのだった。
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ユーク(LV.49)
性別:男
ジョブ:強化術士
スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)
EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫
備考:これだけ戦力が揃ってるのに何が不安なんだろう……?
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セリス(LV.47)
性別:女
ジョブ:槍術士
スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)
EXスキル:≪タクティカルサイト≫
EXスキル2:≪ブーステッドギア≫
備考:あの後、あそこに行ってみたけど、なにも残って無かった。逃げられたのならちょっと危険な相手かもしれない。
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アウリン(LV.48)
性別:女
ジョブ:炎術士
スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)
EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫
EXスキル2:≪コンセントレイション≫
備考:嵐の前の静けさって感じね、そんなに大きな嵐じゃ無ければいいんだけど……
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ヴィヴィアン(LV.47)
性別:女
ジョブ:騎士
スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)
EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫
EXスキル2:≪インヴィンシブルシールド≫
備考:ちょっと油断しちゃってたわ…… あの時ユーク君に不意打ちされてたら危なかったかもしてないわね。
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テルル(LV.44)
性別:男(女)
ジョブ:氷術士
スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)
EXスキル:大鎌の才(大鎌の基本技術を習得する)
EXスキル2:≪ソウルイーター≫
備考:もっとゆっくりこのエンシェントゴーレムを調べたかったんじゃがのう。
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アン(LV.1)
性別:女(精霊)
ジョブ:霊樹の管理精霊(若芽の腕輪に宿る)
スキル:霊樹の加護(ユークの全能力をわずかに向上させる)
備考:ふふふ、私のガーディアンたちは無敵です! 誰にも負けません!
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