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「お前は用済み」と追放されたけど、俺のことが大好きな幼馴染も一緒に抜けたせいで元パーティの戦力が崩壊した件  作者: 荒火鬼 勝利


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第214話 第二形態


 精霊との戦いが終わり、静けさを取り戻したボス部屋に、ユークたちは肩で息をしていた。

 それぞれが傷を負い、衣服は土と血で汚れていたが――誰一人欠けてはいない。


「……ふぅ、なんとか倒した……のか?」

 ユークが荒い呼吸を整えながら言った。


「こんなに苦労することになるなんて思わなかったわ~」

 ヴィヴィアンが盾を突き立て、その場に腰を下ろす。


「……」

 その中で、テルルだけは首を傾げ、何やら考え込んでいた。


「どうしたの、テルル?」

 セリスが不思議そうに声をかける。


「うむ……さっきの戦いの最中、妙な“違和感”があっての」


「違和感?」

 ユークが眉をひそめる。


「なにか……スキルが発動できそうな感覚があったんじゃ。おそらく本体に攻撃していれば、実際に確認できたはずじゃが……」


「……気のせいじゃないの?」

 アウリンが肩をすくめる。


「う~む、試そうにも、もう倒してしまったからのう……」

 テルルが小さく唸った、その次の瞬間――


 床が大きく揺れた。


「なっ!? なんだ!?」

 ユークが叫ぶ。


 ボス部屋の床――木の枝が幾重にも組み合わさってできたそれが、バキバキと音を立てながら隙間を空けていく。


「まずい! 床が!」

 ユークが焦り、周囲を見回す。


「みんな、ジャンプしてっ!」

 ヴィヴィアンの鋭い声に従い、全員が咄嗟に跳びあがった。


「《インヴィンシブルシールド》!」

ヴィヴィアンのスキルによって、崩れ落ちる床の代わりに半透明な盾が床に敷き詰められる。


 ユークたちはその上に着地し、かろうじて落下を免れた。


「うわっ……下が見える……!」

 アウリンが青ざめる。盾の下からは霊樹の枝が広がり、さらに下には小さくアズリアの姿も確認できた。


 その間にもボス部屋全体が軋みを上げながら変形していく。絡み合った枝がうねり、やがて――


「な……!?」

 人型の歪なシルエットが浮かび上がる。


 そこから赤黒い霧があふれ、再び彼らを包み込んだ。


「まさか……! まだ生きてたのか……!?」

 ユークが目を見開く。


『よくもやってくれたな人間ども! こうなれば我が本体で相手をしてやろう!!』

 精霊の声と共に枝が変形を続け、女性を思わせる巨大な姿へと変貌していく。


「くっ! どうする!?」

 ユークが焦りをにじませる。


「こうなったら私がEXスキルを使うわ!」

 アウリンが一歩前に出た。彼女のEXスキルは魔法陣が魂に刻まれており、霧に魔力を奪われる状況でも発動できるはずだった。


「よし! アウリン、頼む――」


「待て!」

 ユークの声を遮るように、テルルが手を挙げる。


「テルル?」

 ユークが目を瞬かせる。


「まずはワシのスキルを試してみてはどうじゃ? なんとなくじゃが、奴には効果がある気がするのじゃ」

 テルルがユークを上目遣いで見上げた。


「そのスキルって、この霧の中でも使えるの?」

 セリスが問いかける。


「使える。ただし、鎌で直接叩き込まねばならん!」

 テルルの真剣な眼差しに、セリスは短く頷く。


「私は試してみてもいいと思う」

 そう言って笑みを見せるセリス。


「わかった、じゃあひとまずやってみてくれ」

セリスの言葉を聞いて、OKを出すユーク。


「……すまん」

 テルルが小さく呟いた。


「でも実際どうするのかしら? あれが相手なのよ?」

 アウリンが目線を送る先では、巨大化した精霊が大きく腕を振り上げていた。


「くっ!」

 ユークたちは咄嗟に攻撃を避ける。だが、足場となっていた盾のいくつかが破壊されてしまった。


「また来るわっ!」

 ヴィヴィアンが叫ぶ。


 もう片方の腕を振り下ろそうとする精霊。


「はあああああああ!!!」

 セリスが渾身の力で槍を構え、投げ放った。


 槍は一直線に飛び、巨大な精霊の顔面に突き刺さる。


「ぐあああああああっ!?」

 精霊は腕を振り下ろすのを止め、苦悶の表情で頭を押さえた。


「これで試せるんじゃない?」

 セリスが笑顔を見せる。


「えっ……あんた何をやったの……?」

 アウリンが引き気味に問いかける。


「あそこらへんに弱点がありそうな気がして、投げてみただけ」

 あっけらかんと答えるセリス。


「えぇ……」

 ユークたちは思わず顔を見合わせた。


「だが、これでやれそうじゃ!」

 テルルが大鎌を構え、一直線に精霊へと駆け出す。


「ぬああああああああ!!」

 叫び声を上げながら、テルルは大鎌を精霊へ突き立てた。


「EXスキル! 《ソウルイーター》!」

 大鎌の刃が突き刺さると同時に妖しい光が走る。


『ヴォオオオオオオ!!!』

 精霊の悲鳴が広間に響き渡った。


「一体どうなってるんだ……」

 ユークが唖然とする。


「どうやら、あやつの魂には“異物”が紛れ込んでおるようじゃな」

 テルルの声は低かった。


「なんでそんなことが分かるのよ?」

 アウリンが問いかける。


「ワシのスキル、《ソウルイーター》は、相手のレベルを一時的に奪う力。その時に分かったんじゃ。本来の魂とは別に、異質なものが魂を侵食しておる」


「でも……そんなの、どうしたら……」

 ユークが呟く。


「ワシに任せろ!」

 テルルが胸を叩き、鋭い眼光を放つ。


「テルル……?」


「本来なら奪ったレベルは時間が経てば戻る。だが――ワシならこのレベルを利用してモンスターを生成できる!」


「まさか……!」

 ユークが息を呑む。


「すまん、霧を散らしてくれ!」


 ユークたちが連携して周囲の霧を吹き払う。


「モンスター生成・魂喰い虫!」

 テルルの手から魔法陣が輝き、小さな棘だらけの銀色の虫が現れた。


「ちっちゃい……こんなので大丈夫か?」

 ユークが不安げに呟く。


「問題ない! 今回は魂の主が“味方”じゃからな! 行けっ!」

 魂喰い虫が飛び、精霊へと突入した。


「ぎゃあああああああああ!!!」

 次の瞬間、精霊は絶叫をあげ、体を震わせながら口をパクパクとさせる。


 そこからしばらくの間、広間には耐えがたい悲鳴と木々の軋む音だけが響き続けた。


 ユークたちは息を呑み、誰も動けない。


 その間も精霊は苦しみから逃れようともがき続る。


 時間の感覚が失われるほどの長さだったが、その抵抗は確かに少しずつ弱まっていった。


 やがて――その顔が、苦悶から解放されたように柔らかな笑みに変わる。


 木の体に亀裂が走り、音を立てて砕けていく。


 巨大な精霊の姿は崩壊し、やがて消え失せた。


 残されたのは静寂と、呆然と立ち尽くすユークたちだけだった。


◆◆◆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ユーク(LV.45)→(LV.49)

性別:男

ジョブ:強化術士

スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫

備考:少なくとも、かたきを討ち取ることはできたのかもしれない。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

セリス(LV.43)→(LV.47)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪タクティカルサイト≫

EXスキル2:≪ブーステッドギア≫

備考:さっきとは違い、霧が視界を完全に覆うことはなかったため、投擲で精霊の核を狙うことができた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アウリン(LV.44)→(LV.48)

性別:女

ジョブ:炎術士

スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)

EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫

EXスキル2:≪コンセントレイション≫

備考:今回の戦いで、自分は魔法を封じられると何も出来なくなる。という弱点が判明したので、今後はどうしたらいいのか悩んでいる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヴィヴィアン(LV.43)→(LV.47)

性別:女

ジョブ:騎士

スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)

EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫

EXスキル2:≪インヴィンシブルシールド≫

備考:インヴィンシブルシールドは、盾に連動して動くタイプと、自身の周囲に固定して展開するタイプの二種類を選択して発動できる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

テルル(LV.40)→(LV.44)

性別:男(女)

ジョブ:氷術士

スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)

EXスキル:大鎌の才(大鎌の基本技術を習得する)

EXスキル2:≪ソウルイーター≫

備考:彼女はレベルアップによって大鎌の才を得たと思っていたが、それは元々保有していたスキルが変化した結果であり、本来の取得スキルはソウルイーターだった。

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