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「お前は用済み」と追放されたけど、俺のことが大好きな幼馴染も一緒に抜けたせいで元パーティの戦力が崩壊した件  作者: 荒火鬼 勝利


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第213話 魔霧を越えて


「刺さら……ない……?」

 渾身の突きを放ったセリスだったが、彼女の攻撃は弾かれ、精霊の胸に小さな傷あとを残しただけに終わってしまう。


『残念だったな。これで終わりだっ!』

 あざけるように精霊の口元が歪む。


 精霊の赤い瞳が一瞬光り、再びツタの大群が地面から噴き上がった。槍のように鋭い先端が、四方八方からセリスを貫こうと迫る。


「くっ……! セリス、下がれ!」

「ヴィヴィアン、盾を前に!」


 ユークの指示に、ヴィヴィアンが即座に盾を構える。何本かのツタを弾いたが、防ぎきれない分が横から回り込んでくる。


「任せるのじゃ!」


 テルルの大鎌が横薙ぎに走り、辛うじてセリスに迫るツタの槍を断ち切った。


 だが、その動きはぎこちなく、切り払いきれなかった残りがテルルのほほを掠める。


「……ちっ!」

 血を拭い、テルルが歯を食いしばった。


「このままじゃジリ貧だ……」

 ユークは息を荒げ、必死に思考を巡らせる。


(魔法は封じられている。リインフォースも駄目……なら、俺にできることは……?)


 その時、赤黒い霧の揺らめきの中に“ある違和感”を見つけた。爆発したカウントボムの残滓だけが、わずかに霧を押しのけていたのだ。


(……そうか。この霧は魔力を喰う。でも、魔道具は既に“完成された魔法”。これなら霧に触れても分解されないのか……!)

 ユークは瞬時に閃き、叫ぶ。


「テルルっ! 爆風で霧を押しのける! その隙にセリスの槍にブラックアームズだ! 魔力で作り出した物質なら霧に消されない!」


「爆風で……? わかった!」

 セリスが息を整え、槍を構え直す。


「了解したのじゃ!」

 テルルがセリスの横へ駆け寄った。


「いくぞっ!」

 ユークはいくつかのカウントボムをセリスたちの周囲に投げつける。轟音と爆炎が広間を照らし、赤黒い霧を瞬間的に吹き払った。


「今だっ!」

「《ブラックアームズ》!」


 黒い粒子がセリスの槍を覆い、刃が黒く染まる。


「ヴィヴィアン、防御はお願い! テルルは私と一緒に来てっ!」

 セリスが二人に素早く指示を出して、精霊に向かって槍を構えた。


「まかせてっ!」

「わかったのじゃ!」

 二人が力強く頷く。


「これで全部だ! 全て持っていけ!」

 ユークは残りのカウントボムを全て投げつける。爆発が精霊を守るツタを根元から引き裂いた。


「今だ、セリス!」

「はああああああッ!!!」

 全身の力を込め、セリスが黒き刃の槍を突き出す。


 霧の影響を受けない槍は、精霊を守るツタの最後の一本を易々と貫通する。


「ちぃぃっっ!!!」

 しかしツタのせいで狙いがわずかに逸れ、槍は胸を外し、精霊の左肩を大きく抉るに留まってしまう。


『ぐっ……ぬうううう!!』

 精霊の悲鳴が広間に木霊する。赤黒い霧が一層濃くなり、憎悪と焦燥を帯びた魔力が周囲を覆い尽くしていく。


「ごめんっ! しくじった!」

 セリスが下がりながら謝る。


「ユーク! 今の爆弾が全部なのか!?」

 テルルが焦ったように問う。


「ああ、全部だ!」

 ユークも苦い表情で答える。


「そんな……!」

 ヴィヴィアンが悲壮な声を漏らし、盾を構えて前へ出ようとした。

 だがユークは目を見開き、盾の周囲を指差す。


「ヴィヴィアン! それって……!」

「……え?」


 ヴィヴィアンが不思議そうに首を傾げる。


 ユークの視線の先、彼女の盾の周囲だけ霧が消えていたのだ。まるで透明な壁があるかのように。


「そうか……! ヴィヴィアンにやったそれは、魔法を無効化する“アンチマジックメタル”で出来ておる。この霧も、ただの霧ではなく霧のように見えるだけの魔法じゃろう! だからお主の盾で無効化出来たんじゃ!」

 テルルが即座に理解して叫ぶ。


「アウリン! 俺たちのところに来てくれ! 頼みたいことがある! セリス、迎えに行ってやってくれ!」

 ユークは叫び、ヴィヴィアンに目配せした。彼女は頷き、盾を大きく振って霧を払う。


 ――その頃。


(奴らの姿が見えん……。だが魔霧は十分濃い。爆風程度で吹き飛ぶはずがない。魔力も封じられている。あとはツタで適当に攻撃しておくか……)

 精霊は霧を濃くしすぎて、ユークたちの姿を完全に見失っていた。


 その一方で、霧に包まれたユークたちは、アウリンが展開したエアーウォールの内側にいた。


 風の壁に守られた隔離空間の中では、ヴィヴィアンが盾を構え、残っていたわずかな赤黒い霧までも丁寧に払っていく。


 アンチマジックメタル製の盾は魔力の霧を寄せつけず、ユークが集中して詠唱できる澄み切った空間を瞬く間に作り出していた。

 

やがて――。


(な、何だ!? 魔霧が……!)


 視界の端で霧が渦を巻き、薄れていく。そこにはアウリンの風魔法が作り出した隔離空間があった。ユークはその中で魔法陣を描いている。


『させんっ!』

 なぜこんな事態になっているのか理解する暇もなかったが、咄嗟にツタを槍のように変えて放つ。


 だが――


「はああああっ!」

「ぬうううんっ!」

 セリスとテルルがそれを防いだ。


『ちぃぃぃいいっっ!!!』

 精霊が悔しげに顔を歪める。


 その間にユークの魔法陣が完成してしまう。


「《ストーンスタンプ》!!」

 ユークが描いた魔法陣から、超圧縮された石柱が、凄まじい勢いで直線的に伸びていく。


『そんなものっ!』

 足が床と同化し、動けない精霊は、いくつものツタを重ねて壁のように作り出し、ユークの魔法を防ごうとする。


 しかし――。


『がああああっ!!!』

 精霊の悲鳴が響く。石柱は幾重にも張られたツタの壁を貫き、胸の核を粉砕していた。


『くっ、そっ……!』

 精霊が胸を押さえてよろめく。


「《エアーストーム》!」


 アウリンの暴風が広間を吹き抜け、赤黒い霧を一掃した。


 霧が晴れた時、残っていたのはユークたちと、胸に石柱を突き立て膝をつく精霊の姿だった。


◆◆◆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ユーク(LV.45)

性別:男

ジョブ:強化術士

スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫

備考:アウリンが展開したエアーウォールで囲まれた空間内で、ストーンスタンプの詠唱を続けていた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

セリス(LV.43)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪タクティカルサイト≫

EXスキル2:≪ブーステッドギア≫

備考:精霊の肩を抉った直後、視界を奪われるのを避けてテルルと共にユークの元へ下がった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アウリン(LV.44)

性別:女

ジョブ:炎術士

スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)

EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫

EXスキル2:≪コンセントレイション≫

備考:ヴィヴィアンが盾で霧を払い作った一瞬の隙に、エアーウォールの魔法陣を展開し、空気の壁で囲まれた隔離空間を確保した。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヴィヴィアン(LV.43)

性別:女

ジョブ:騎士

スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)

EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫

EXスキル2:≪インヴィンシブルシールド≫

備考:アンチマジックメタルは炎や風など魔法による現象を無効化できるが、水や岩などの「生成された物質」には効果がない。もし魔霧が本当に魔法で生じた霧だったなら、ユークたちは敗北していたかもしれない。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

テルル(LV.40)

性別:男(女)

ジョブ:氷術士

スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)

EXスキル:大鎌の才(大鎌の基本技術を習得する)

EXスキル2:??

備考:彼女の大鎌は魔力で生成されたものであるため霧の影響を受けない。強化魔法がなくとも精霊に通じる威力を持つが、本人の未熟さから決定打には至らなかった。

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