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「お前は用済み」と追放されたけど、俺のことが大好きな幼馴染も一緒に抜けたせいで元パーティの戦力が崩壊した件  作者: 荒火鬼 勝利


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第212話 狂った精霊


 短い休憩を終えたユーク達は、再び霊樹の枝の道を進み始めた。


 ストームバード二体を倒したことで、このエリアに敵はおらず、ユークたちは順調に距離を稼いでいく。


 やがて枝の道は終点に達した。そこには、霊樹の幹に沿って上へと伸びる、木製の階段が姿を現す。


「たぶん、この先がボス部屋に続く道だと思う……」


 ユークは階段を見上げ、ひとつ息をついた。そして最後尾で記録を取っていたアズリアに、申し訳なさそうに声をかける。


「アズリアさん。悪いけど、荷物と一緒にここで待っていてくれないかな?」


「え……?」

 アズリアは驚いたように目を見開く。


「万が一、この先で戦闘になったら、守りながら戦う余裕がないかもしれない。だから……ここで待っていてほしいんだ」

 ユークは深く頭を下げた。


「……そうか」

 アズリアはユークの切実な表情を見て、静かに頷く。


「わかった。私はここで待っていよう。君たちの無事を祈っているよ」

 一瞬だけ寂しそうな表情を浮かべたが、すぐにギルドガードとしての覚悟をにじませて笑顔でうなずいた。


「みんな、行こう!」

 ユークは仲間に声をかけ、霊樹の頂点へと続く階段を上り始める。


 木の階段を上りきると、かつてラルヴァの女王と対峙した広大な樹上の広間が広がっていた。


 その中心に立っていたのは、透き通るような肌と深緑の瞳を持つ絶世の美女。

 

 霊樹の葉の色を映した長い髪、淡い桃色に透ける優雅なドレス――まぎれもなく、霊樹の精霊だった。


 だが、その顔にあるのは慈愛の笑みではなく、憎悪に歪んだ表情。そして何より、瞳は深緑ではなく血のように赤く輝いている。


「……精霊」

 ユークは一歩前に出て、震える声で語りかける。


『よく来たな、人間よ。あの寄生虫どもの女王を倒して以来か……。まさか貴様らが我の敵になるとは思わなかったぞ!』

 精霊は憎しみに歪んだ笑みを浮かべる。


「精霊! 塔に何が起きた!? この異変は何なんだ!? もし操られているのなら抵抗してくれ! 頼む!」

 かつて共に戦った彼女の姿を受け入れられず、ユークは必死に訴えた。


『我は正気だ。お前たちこそ、なぜ我らの邪魔をする。おとなしく終焉を迎える時まで待っていれば良かったものを!』

 精霊は冷たく言い放つ。


「ユーク、もう駄目だよ!」

 セリスが制止する。


「問答無用じゃ! 殺る気じゃぞ!」

 テルルは大鎌を構えた。


「ユーク! 説得はもう終わり! いつまでも付き合っていられないわ!」

 アウリンの声には焦りがにじむ。


 ユークは再び精霊の瞳を見つめた。その中に、かつての優しい光は微塵みじんも残っていない。


「……わかった。もうお前は敵なんだな。だったら……お前を倒して俺たちは先に進む!」

 悲しげに目を伏せた後、強い眼光で精霊を睨み、ユークは構えを取った。


『無駄な時間を過ごしたな』

 精霊は嘲笑ちょうしょうし、赤黒い魔力を両手から噴き上げる。


 次の瞬間、階段の入口が音を立てて根とつたに覆われ、完全に塞がれてしまった。


「なっ……!」

 アウリンが絶句する。


「後戻りはできないってことか……」

 ユークの胸に冷たいものが走り、口の端を持ち上げる。


『お前たちはここで我が直々に始末する。生きて帰れると思うな!』

 精霊の赤い瞳が狂気に光った。


『さあ、貫かれるがいい!』

 精霊の叫びと共に、周囲から巨大なツタが生え、槍となってユークたちに襲いかかる。


「散開! 全員下がれ!」

 ユークの指示で一同は広間に散った。


「《フレイムボルト》!」

 ユークは咄嗟に炎の矢を放つが、精霊に届く前にかき消される。


「なっ!?」

 ユークが目を見開いた。


 広間を包む空気が赤黒い魔力の霧に染まっていく。それは精霊の瞳と同じ、禍々しい色彩だった。


「っ、この霧……? だめだ、魔法陣が描けない!」

 ユークが空中に描いた魔法陣は、霧に触れた途端に霧散する。


 魔力そのものが分解され、形を保てなくなっていた。まるで霧が魔力を喰らう罠のようだった。


(まずい……これで、俺とアウリンは実質的に無力化された!)

 ユークの額に冷たい汗が流れる。


「ゴメン! 魔法が封じられた! セリスたちに頼るしかない、頼む!」

 ユークが叫ぶ。


「任せて!」

「問題ないわ〜」

「ワシの活躍を見ておれ!」

 三人が即座に応える。だが精霊を守るように絡みつくツタが邪魔し、有効打を与えられない。


(何か……俺にできることはないか?)

 ユークはポケットを探る。


(魔法が駄目でも、魔道具なら……!)

 取り出したのは、エウレから貰った正式版の爆発する魔道具“カウントボム”だった。


「みんな、離れて!」

 ユークの声で前衛三人が距離を取る。


(今だ!)

 ユークは複数のカウントボムを精霊の周囲にばらまく。爆発がツタの根元を吹き飛ばし、彼女を守る鎧を剥ぎ取った。


「セリス!」

「うん!」

 セリスは勢いよく駆け出し、混乱して隙をさらした精霊の胸元めがけて、魔槍を突き立てに迫った。


 だが、その瞬間セリスの身体が一瞬ふらついてしまう。


「セリス!?」

「っ! まだぁ!!!」

 しかし彼女は、その驚異的なバランスで体勢を立て直し、槍の刃を心臓めがけて突き立てた。


 ――だが。


「刺さら……ない……?」

 セリスが絶句する。


「何が……」

 ユークもその光景に愕然としたが、セリスの姿を見て息を呑んだ。


 セリスの体を薄く覆っているはずの強化魔法の青い光が消えていたのだ。


「っ……!」

 歯を噛みしめ、顔を引きつらせるユーク。


 仲間の攻撃に魔法属性を付与し、物理耐性を持つ敵に有効打を与える事を可能とするスキル、“リインフォース”。


 その効果が、赤黒い魔力の霧によって分解され、消えてしまっていた。


◆◆◆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ユーク(LV.45)

性別:男

ジョブ:強化術士

スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫

備考:魔法攻撃と強化魔法の両方を封じられ、窮地きゅうちおちいっているが、必死に打開策を模索している。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

セリス(LV.43)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪タクティカルサイト≫

EXスキル2:≪ブーステッドギア≫

備考:本人は気づいていなかったが、赤黒い霧によってリインフォースの効果が減衰し、ツタの防御を突破できなかった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アウリン(LV.44)

性別:女

ジョブ:炎術士

スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)

EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫

EXスキル2:≪コンセントレイション≫

備考:魔法を封じられた今、ユークと違い完全に戦力外となってしまったため、敵から離れた場所で状況を見守っている。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヴィヴィアン(LV.43)

性別:女

ジョブ:騎士

スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)

EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫

EXスキル2:≪インヴィンシブルシールド≫

備考:後衛の二人を守れる位置を取りつつ、前衛の攻撃にも参加していた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

テルル(LV.40)

性別:男(女)

ジョブ:氷術士

スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)

EXスキル:大鎌の才(大鎌の基本技術を習得する)

EXスキル2:??

備考:大鎌を扱えるようになったが、それはあくまで《《最低限》》であり、セリスのように自在に扱えるわけではない。そのためツタの防御を突破できなかった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アズリア(LV.30)

性別:女

ジョブ:剣士

スキル:剣の才(剣の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪ストライクエッジ≫

備考:任務を考えればユークについていくべきだったが、足手まといになってはいけないと考え、その場に留まった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



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