第207話 信奉者たちの狂宴
【賢者の塔 三十一階層?】
湿った空気に、異様な熱気が渦巻いていた。それは、闇の中で鼓動するように脈打つ、石造りの遺跡から発せられている。
まるで宇宙空間のような闇に浮かぶ遺跡。無数の石の道が宙を漂い、あちこちが崩れ落ち、先は見えない。
その不安定な空間には、赤いローブをまとった信奉者たちが、広大な闇の中でひしめき合っていた。彼らがまとう血のような赤は、不気味な存在感を放っている。
信奉者たちが操る装置は、血のような赤い光を放ち、ドクンドクンと脈動している。
一段高い場所に、赤いローブに同色のフードを付けた男が両手を掲げる。その目線は、信奉者たちを見下ろしていた。
「皆さん! ようやく賢者の塔の複製たる影の塔が完成しました!」
信奉者たちが、地を揺らすような歓声を上げた。
「「おおおおおおおお!!!」」
教主は、信奉者たちを労うように優しい声色で語りかける。
「ようやく我らの悲願、それが達成される第一歩まで来たのです!」
再び熱狂的な歓声が響き渡る。
「我々はこれまで虐げられてきた! だが、これからは違う! この輝きこそ、我らが永きにわたる屈辱からの解放だ!」
そう言って、教主はゆっくりとフードを取った。
白かった髪は銀色に輝き、青い瞳も紅蓮に染まっており。その姿はまるで魔族のように見えた。
「おおっ!」
「そのお姿は……!」
信奉者たちは、まるで神でも拝むかのように身を震わせる。
「そう、私は人間を超越し、魔族となったのです! 封印されし魔獣が復活すれば、世界中のすべての同胞を魔族にすることができる!」
教主は目を閉じ、ぐっと拳を握りしめる。その表情は、歓喜と、長年の恨みを晴らすような歪んだ満足感に満ちていた。
「これからは我々が愚かな人間どもを支配するのです! それを阻む封印も、わが主が解除している最中! あと一日で魔獣の封印も解け、我らの悲願が叶う!」
信奉者たちの興奮は最高潮に達した。
「この影の塔も完成し、皆さんの役割は終わりました。あとは、わが主が封印を解くのを待っていてください」
教主が手を上げると、台車に乗せられた血のように赤い宝石のようなものを、ゴーレムが運んでくる。
「皆さんには魔の宝玉を渡しておきます。これを身体に取り込めば、私のように魔獣の加護を得ることができるかもしれません。では、私は主の元へ参りますので」
そう言い残し、教主は立ち去った。
「こっ、これは俺のだ!!」
「いや、私が!」
「よこせっ! 触るな!」
集まった信奉者たちは、我先にと魔の宝玉に手を伸ばす。
その熱狂の中、一人の男が教主に声をかけた。顔に火傷のある男――かつてユークたちと戦ったこともある信奉者、ディアンだ。
「よお旦那。いい演説だったじゃねぇか。よくも心にもないことをああも言えるもんだぜ」
「ディアンですか。遅かったですね」
教主は先ほどまでの優しい目ではなく、冷たく見下すような目でディアンを見る。
「仕方ねぇだろ。体をぶった切られちまってよぉ。街に魔力が満ちるまで、動くこともできなかったんだからな」
ディアンは抗議するように言った。
「あなたがですか? それは珍しい。何か強敵でもいましたか?」
教主は驚き、珍しいものを見るような目でディアンを観察する。
「ああ、いたぜ。槍を使うメスガキなんだけどよ、とんでもなく強くてな……。ありゃあ王国の剣聖様並だぜ」
ディアンは笑いながらも、その目に強い敵意を宿していた。
「ほう。あの王子様を引き合いに出すとは。よほど強かったのですね」
教主は感心したようにうなずく。
「博士から貰ったこの手足じゃ足りねぇ。もっと力が必要だ」
そう言って、マーダーエイプのものに置き換わった手をディアンが見せつける。
「……まぁ、いいでしょう。では、あなたにもこれを渡しておきましょう」
教主はわずかに眉をひそめ、懐から魔の宝玉を取り出した。
「おいおい。俺は意志のないバケモノなんかになるつもりはないぜ?」
魔の宝玉を受け取ろうとせず、ディアンはばかにするように言った。
「これは彼らに渡したものとは違いますよ。ちゃんと意思は残るタイプです。元々私が使う為に用意していたものですから」
教主は淡々と訂正する。
「そうかよ。なら貰っとくか」
ディアンはそう言って宝玉を受け取ろうとするが。その手から逃れるように、教主はひょいと腕を上げた。
「おい!」
教主を睨みつけ、ディアンが怒鳴り声を上げる。
「例のものはどうしました? 手に入れられたのですか?」
教主もまた、冷たい視線でディアンを睨み返す。
「あっ……と。すまねぇ……」
ディアンはしまったといった表情でポケットを漁りはじめる。
「ほらよっ、ヘリオ博士の魂だ」
そう言って、長方形の結晶のようなものを教主に渡した。
「よろしい。では、これを」
教主は魔の宝玉をディアンに投げ渡す。
「おっとと。おい! 危ねぇじゃねぇか!」
ディアンが怒鳴っても、教主は彼を無視してスタスタと歩き始めた。
「ちっ!」
言っても無駄だと悟ったのか、ディアンは教主とは反対方向に歩き出す。
「ああ、そうそう」
突然、教主が足を止めた。
「あん?」
ディアンが振り返り、教主を見る。
「彼らに言ったことは、私の本心ですよ。心からのね」
そう言い残し、教主は再び歩き出した。
「へっ! そうかよ」
ディアンは吐き捨てるように言うと、そのまま闇の中へと消えていくのだった。
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教主の男(LV.??)
性別:男
ジョブ:??
スキル:??
備考:信奉者たちのリーダー。ヘリオ博士の魂を回収し何かに利用しようとしている。
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ディアン(LV.??)
性別:男
ジョブ:蜑」螢ォ
スキル:蜑」縺ョ謇(蜑」縺ョ蝓コ譛ャ謚?陦薙r鄙貞セ励@縲∝殴縺ョ謇崎?繧偵o縺壹°縺ォ蜷台ク翫&縺帙k)
EXスキル:≪繧ィ繧「繧ケ繝ゥ繝?す繝・≫
EXスキル:≪繝薙?繧ケ繝医た繧ヲ繝ォ≫
備考:かつて、霊樹のボス部屋においてユークたちと戦ったことのある火傷の痕のある男。ユークとセリスに恨みを抱いている。
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