第206話 霊樹の守護者たち
フォレストベアーのエリアを抜けると、ついに霊樹が間近に見える場所までたどり着いた。
「すごいな、これは……」
初めてその光景を目にしたアズリアが、感嘆の声を漏らす。
巨大な霊樹の根は大地を覆うように広がり、天然の迷路のように複雑に絡み合っていた。かつては無数のラルヴァに蝕まれていた根だが、今はその姿はなく、代わりに木の根を人型にしたようなモンスターが巡回している。
「ラピスから聞いたことがあるわ。あれがこの場所の本来のモンスター――ウッドガーディアンよ」
ウッドガーディアンは霊樹の根が生み出す防衛機構の一つだ。
人型の身体には四肢と指が再現され、それぞれ木製の槍や剣で武装している。
だが、人間のように目で見るわけではなく、全方位を同時に認識しているため、甘く見れば痛い目を見ることになるだろう。
「聞いてたより数が多いわね……少し面倒かもしれない」
アウリンの声には緊張がにじんでいた。
「ねえ。ここからだと敵が丸見えじゃん。遠距離攻撃で全部倒しちゃうのはダメなの?」
ユークが首を傾げる。
「……ダメじゃないわね」
少し考えたアウリンが答えると、ユークは勢いよく声を上げた。
「よし! アウリン、セリス。手当たり次第に倒していこう!」
「ええ!」
「分かった!」
三十分ほどかけてウッドガーディアンを全滅させたユークたちは、疲れ切った表情で地面に腰を下ろした。
「はぁ……結構時間がかかっちゃったな」
ユークが水筒の水をゴクゴクと飲みながら言う。
「そうね。まさか攻撃を当てたら全部のウッドガーディアンがリンクするなんて思っても見なかったわ……」
アウリンが頭を押さえてため息をつく。
「最後は私のスキルで抑え込まなきゃいけなかったものね……」
ヴィヴィアンが苦笑しながら口を開いた。
実際、ラピスたちが通った時とは行動パターンが変わっており、一体を攻撃すればすべてのウッドガーディアンが一斉に襲いかかってきたのだ。
「じゃが、ここで迎え撃てたのは不幸中の幸いじゃな」
結局前衛として戦う羽目になったテルルが、大鎌を消しながらつぶやく。
もし定石通りに敵を避けながら進み、避けられない敵だけを倒す方法で進んでいたら、四方八方から襲撃されて大苦戦していただろう。
だが結果的に、霊樹の根を巡回するウッドガーディアンは全滅し、安全に進めるようになった。
「進もう。また再召喚されたらたまったもんじゃない」
ユークがうんざりした顔で言うと、仲間たちも同意して何度も頷く。
一行は足早に霊樹の根の上を進み、絡み合った根が作り出した小部屋へたどり着いた。ユークは念のため入り口をストーンウォールで塞ぎ、困ったように首をひねる。
「ええと……ここからどう進むんだっけ?」
辺りを見回すが、道らしきものは見えない。
「確か……そっちよ」
アウリンが指さしたのは、坂のように傾いた巨大な根だった。
「あー、そうだった。ここ、わかりにくいんだよな……」
ユークが愚痴をこぼしながら根の坂へ向かう。
「こんな場所を……?」
アズリアは驚きながらも後を追う。
「デコボコしてて歩きにくいから気をつけてくださいね」
ユークの声にうなずき、全員で幹に近い根を登っていく。
そこに、見覚えのあるモンスターが立ちはだかった。
「キラーマンティスだ!」
巨大なカマキリのモンスターが鎌を掲げ、威嚇するように音を響かせる。
「《フォースジャベリン》!」
しかしセリスの疑似EXスキルが、一撃でキラーマンティスを粉砕した。
「威嚇してる暇があるなら攻撃すればいいのに」
セリスが呆れたように言う。
「あはは……」
ユークは、鎌を振るうこともできず倒されたモンスターに思わず同情する。
その後も何度かキラーマンティスが現れたが、多くても二体程度。セリスにとっては脅威にならず、一行はあっさり昇降機の前にたどり着いた。
「ここを登れば大洞ね」
アウリンが笑みを浮かべる。
「全員乗ったね?」
ユークが確認してスイッチを押すと、昇降機はギシギシと音を立てながら上昇していった。
やがて一行は霊樹に穿たれた巨大な洞へと到着する。
「……たしかこの奥で精霊と出会ったんだよな」
ユークが懐かしそうに呟く。
「そうね。それと、琥珀でできたゴーレムがいて……」
アウリンの言葉どおり、洞を進むと木の根と琥珀で作られたゴーレムが静かに立っていた。
「……前のときは味方だったけど」
ユークたちはゆっくりと近づいていく。
「止まって!」
セリスの鋭い声と同時に、琥珀のゴーレムが咆哮を上げ、敵意をむき出しにした。
「ヴォオオオオオ!」
「……やっぱり駄目か」
ユークは苦い表情で構えを取る。
だが、レベル二十六相当のゴーレムはもはや彼らの敵ではなかった。
一瞬で撃破され、無数の琥珀の破片となって砕け散る。
ユークは呆然と、その破片を見つめた。かつて肩に精霊の宿った空色の鳥を乗せ、無骨ながらも優しさを感じさせたゴーレムの姿は、もうどこにもない。
「ユーク、大丈夫?」
セリスの問いに、ユークは我に返った。
「……大丈夫だ。行こう」
気丈に笑い、余計な心配をさせないよう前を向く。ゴーレムが守っていた穴の奥は、洞窟のように続いていた。
「ここから先は初めての場所か……」
ユークが小さくつぶやき、一行はさらに奥へと進んでいった。
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ユーク(LV.44)
性別:男
ジョブ:強化術士
スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)
EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫
備考:前は味方だったやつに敵意を向けられて、ちょっとショックを受けている。
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セリス(LV.42)
性別:女
ジョブ:槍術士
スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)
EXスキル:≪タクティカルサイト≫
EXスキル2:≪ブーステッドギア≫
備考:元々モンスターで敵だし、特に気にしていない。ユークが何でショックを受けているのか理解できない。
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アウリン(LV.43)
性別:女
ジョブ:炎術士
スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)
EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫
EXスキル2:≪コンセントレイション≫
備考:ユークほどでは無いが、あまりいい気持ではない。短い間だったが、情を抱いてしまっていたようだ。
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ヴィヴィアン(LV.42)
性別:女
ジョブ:騎士
スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)
EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫
EXスキル2:≪インヴィンシブルシールド≫
備考:騎士として、感情を切り分ける術を心得ているので特にショックは受けていない。
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テルル(LV.34)→(LV.35)
性別:男(女)
ジョブ:氷術士
スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)
EXスキル:氷威力上昇
備考:さすがに前衛として戦う時は、生み出したモンスターを吸収してレベルを戻している。
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アズリア(LV.30)
性別:女
ジョブ:剣士
スキル:剣の才(剣の才能をわずかに向上させる)
EXスキル:≪ストライクエッジ≫
備考:戦闘には参加せず、記録に徹していた。それが役割とはいえ、なんともいえない気持ちになっている。
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