第204話 快進撃
スタンピードを切り抜けたユークたちは、次の階層へと足を進めていた。
だが、不思議なことにそこには一体のモンスターも姿を見せなかった。
「モンスターが全然いないな……」
ユークが思わずつぶやく。
「そうね。ここまで見かけないと、逆に落ち着かないわ」
隣のアウリンも小さく息をつき、同意する。
「まあ、下の階でさんざん倒したからの。しばらくは出てこんじゃろう」
リヤカーを引きながら走るテルルが答える。
「どういうこと?」
ユークは首をかしげた。
「スタンピードで集められるモンスターは、各階層のモンスターをそのまま移動させとるんじゃ。倒されれば当然、元の場所からもしばらくおらんようになるというわけじゃな」
テルルは得意げに胸を張る。
「だから今のうちに進んでおきたいところじゃ」
テルルの言葉に、ユークも頷く。
「そうだね。テルルが召喚してくれた虫のおかげで、最短ルートを進めるから助かってるよ」
ユークは先頭を走るセリスに目を向けた。
「こっちね? 分かった!」
セリスが銀色の虫を追い、迷わず入り組んだ迷宮を進んで行く。
これは、後ろで同行しているアズリアに気づかれないよう、テルルに斥候用のモンスターを生み出してもらった結果だった。
そのおかげで、彼らは常識では考えられない速さで《賢者の塔》を駆け上がっていたのだ。
「もう十階か……早いな」
ユークが感心するように呟く。
「え……? もう着いたのか? ずいぶん早いな。まるであらかじめ道がわかってたみたいだ」
記録係として同行していたアズリアが、困惑した声を漏らした。
「まあ、俺たちは慣れてるからね」
「そうそう、これくらい普通よ」
ユークとアウリンが何食わぬ顔で誤魔化す
「そ、そうなのか……?」
アズリアは半信半疑のまま記録を取っていた。
「それより、早く進もうよ!」
セリスが待ちきれないように振り返ると、ユークは笑って頷いた。
「ごめんごめん。いいよ、開けてくれ」
ユークに促され、セリスが扉に触れると、自動的に扉が開いていく。
その奥に待ち構えていたのは、赤い目をぎらつかせた十階のボス――ミノタウロスだった。
「邪魔っ!」
セリスはすれ違いざまに魔槍を振るい、一瞬で切り裂く。
「どうやらボスは部屋の外には出られないみたいね」
アウリンが冷静に状況を見て言う。
「それは助かる。万一の時に街へ溢れるモンスターは少ない方がいいから」
ユークは胸を撫で下ろす。十階以上のモンスターの脅威を考えれば焼け石に水だが、それでも少しでも被害が減る方が望ましかった。
再び走り出した一行は、十一階に踏み入る。
そこからは再びモンスターが姿を現すが、セリスの魔槍が瞬く間にそれらを薙ぎ払っていった。
「……結局、いてもいなくても変わらなかったわね」
アウリンが呆れ気味に笑った。
「違うよ。テルルのおかげで迷わず攻撃できてるの。そうじゃなかったら、もっと時間がかかってたと思う」
セリスが真面目に答える。
「テルル? 彼女が何か?」
声が大きすぎたのか、背後からアズリアが不思議そうに問いかけてきた。
「あ、いや……なんでもないよ」
「そ、そうよ!? 何も言ってないわ!」
ユークとアウリンが慌てて取り繕う。
「ふふっ。アズリアさん、これはテルルちゃんから借りた魔道具のおかげなのよ。とっても貴重なものだから、あまり知られたくなかったの。ごめんなさいね?」
ヴィヴィアンが柔らかな声で助け舟を出す。
「なるほど……だが、私も仕事だから記録しないわけにはいかなくてな……」
アズリアは困ったように答える。
「だったら、詳しい性能までは書かないでくれると助かるわ~」
ヴィヴィアンが控えめにお願いした。
「まあ……そうだな。そこまで詳しく書かなくても大丈夫だろう」
少し考えた後、アズリアは頷いた。
(危ない危ない……テルルの能力が公式記録に残るのは避けたいからな。もっと気をつけないと)
ユークは胸を撫で下ろし、心の中で安堵する。
「ねえ、そろそろじゃない?」
ユークは辺りを見て、誤魔化すようにセリスに問いかけた。
「うん! あの階段を上がれば……」
セリスが前を指さす。
「二十階のボス部屋だよ!」
セリスが駆け足で扉に近づく。
ここのボスを抜ければ、いよいよ霊樹の森のエリアに入れるのだ。
「開けるね!」
仲間たちが頷く中、セリスは扉に手をかける。
ユークは前回の不意を突かれて苦戦した記憶がよぎる。だが、今度は違った。
「『フォースジャベリン』!」
扉が開ききるより早く、光をまとった槍が空気を裂いて放たれる。
「ギュオオオッ!?」
天井に潜んでいたマンティコアが悲鳴を上げ、瀕死のまま地面へと落下した。
「やあっっ!!」
セリスは間髪入れずに槍を突き立て、鮮やかに仕留める。
「終わったよ!」
振り返って無邪気に笑うセリスに、ユークも笑顔を返した。
「ありがとう、セリス」
褒められた彼女は頬を赤らめ、嬉しそうに笑う。
「二十階のボスを瞬殺か……凄まじいな……」
その光景に呆然としながらも、アズリアは職務を忘れず、淡々と筆を走らせるのだった。
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ユーク(LV.44)
性別:男
ジョブ:強化術士
スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)
EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫
備考:思ったよりも早く進めてる。これなら案外なんとかなるかもしれない。
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セリス(LV.42)
性別:女
ジョブ:槍術士
スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)
EXスキル:≪タクティカルサイト≫
EXスキル2:≪ブーステッドギア≫
備考:二十階のボス……多分だけど前戦った時よりも結構強くなってた、なんか嫌なかんじがする……
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アウリン(LV.43)
性別:女
ジョブ:炎術士
スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)
EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫
EXスキル2:≪コンセントレイション≫
備考:ダンジョン全体がこの有様……霊樹の精霊は本当に無事なのかしら?
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ヴィヴィアン(LV.42)
性別:女
ジョブ:騎士
スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)
EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫
EXスキル2:≪インヴィンシブルシールド≫
備考:どうかこのまま何事も起きませんように。
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テルル(LV.24)
性別:男(女)
ジョブ:氷術士
スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)
EXスキル:氷威力上昇
備考:魔族のモンスター生成の能力は便利じゃが、レベルを使用する分、使い勝手が致命的に悪いのう。
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アズリア(LV.30)
性別:女
ジョブ:剣士
スキル:剣の才(剣の才能をわずかに向上させる)
EXスキル:≪ストライクエッジ≫
備考:二十階のボスであるマンティコアは、私が一人で戦えば敗北してしまうだろう、それほどの相手をたった一人で瞬殺とは。
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