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「お前は用済み」と追放されたけど、俺のことが大好きな幼馴染も一緒に抜けたせいで元パーティの戦力が崩壊した件  作者: 荒火鬼 勝利


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第203話 迫りくる群れ


 重い扉をくぐり、長い会議室の廊下へ出た瞬間、ユークは深く息を吐いた。


「……ふう」

 緊張から解放され、ユークが息を吐いたその時、目の前に立っていた人物に気づいた。


 くすんだ金髪をショートカットに切りそろえた女性、ギルドガードのアズリアだ。


 彼女は手帳を片手に持ち、会議室の外で待機していたようだった。


「お待たせしました。私はギルドガードのアズリアです。あなたの今回の調査に同行するよう命じられました!」


「アズリアさんっ!」

 ユークの顔が一気に明るくなる。


「ふふっ、久しぶりだな、ユーク。あの時とは力も立場も逆転してしまったようだ」

 言葉こそ淡々としていたが、その瞳には懐かしさと喜びが浮かんでいた。


「私はお前たちの戦闘には参加しない。あくまで監視役、そして報告書を作成するのが任務だ」


「はい、聞いてます」

 ユークがうなずくと、アズリアも満足げに小さく微笑んだ。


 その後、ギルドのロビーで暇そうにしていたテルルを拾い、ユークたちは賢者の塔へ向かった。


 塔の周囲は妙に静まり返っていた。


 探索者の姿がほとんどなく、石畳を渡る風の音だけが耳に残る。


 ポータルの設置場所に着くと、常駐の職員が慌てたように立ち塞がった。


「申し訳ありません。原因は不明ですが《賢者の塔》への転移ポータルは現在、停止しております」


「転移ポータルが停止、じゃと……?」

 テルルが目を細める。


「敵の妨害かしら?」

 隣でアウリンが顔をしかめた。


「たぶんそうだと思う」

 ユークは短く息を吐き、塔の入り口へと視線を向ける。


「仕方ない、一階から登るしかないか……」


 その言葉に、一行は足並みをそろえ、塔の根元へと歩き出した。


 塔の四方には、深く掘られたトンネルが正規の入口として設けられている。


「ここから入るなんて、久しぶりだな」


 ユークが軽く冗談めかすと、アウリンも頷いた。


「そうね。普段は転移ポータルばかりだから、こっちを使うことなんて滅多にないわ」


 真っ暗なトンネルを抜けると、巨大な扉が立ちふさがっていた。


 ユークがそっと手を伸ばすと、扉は音もなく勝手に開いていく。


 その先に広がっていたのは、本来ならば見慣れたはずの光景だった。


 だが。


「……っ!?」


 そこには、目を赤く光らせた多種多様なモンスターたちが、通路を埋め尽くすほどに密集していた。


 耳をつんざくような咆哮と、地面を揺らす無数の足音。腐臭と生臭さが混ざり合った、吐き気を催すような空気が押し寄せる。


(……なんだこれ!? ゴブリンにオーク、グレイウルフまで……階層の違うモンスターが混ざってる!?)


 入り口付近でさえこの有様だ。この先の通路の奥には、さらに強力なモンスターが待ち構えているに違いなかった。


(まずい……! 数が多すぎる。一斉に来られたら……)

 一瞬の沈黙を破り、モンスターたちの敵意が膨れあがる。


「ヴィヴィアン! EXスキルだ!」

「《インヴィンシブルシールド》!!」


 ユークの叫びと同時に、ヴィヴィアンが半透明の盾を展開した。長方形の壁がいくつも重なり合い、群れとの間を遮断する。


「まずい、スタンピードじゃ!」

 テルルが声を荒げる。


「スタンピード!?」

 ユークが驚くと、アウリンがすぐに答えた。


「ダンジョンから魔物が溢れ出す現象よ! これはその前兆に違いないわ……!」


 緊迫した空気の中、ユークは即座に判断を下した。


「アズリアさん! 急いでギルドに報告を!」


「任せろ!」


 アズリアは短く返事をしてから走り去った。その背中を見送り、ユークは魔法の詠唱を始める。


 それから十数秒が経過した時だった。


 遠くから彼女の悲痛な叫びが響いてくる。


「ダメだ! 来た道が塞がっている!」


 その叫びを聞いたユークは息を呑んだ。


(くっ……! アズリアさんの方も気になるけど、まずはこっちだ!)


 ユークが詠唱を終わらせて、魔法を完成させる。


「《ストーンニードル》!」


 地面から石槍が突き出し、前列のモンスターをまとめて貫く。


「今だっ!」


「はいっ!」

 半透明の盾が消え、セリスとテルルが飛び出す。


「はあああああああ!!」

「おおおおおおおお!!!」


 槍と大鎌がうなりをあげ、群れの前線を一気に削り取る。


 だがモンスターの群れは迷宮の奥から、次から次へと際限なく押し寄せてくる。


「《インヴィンシブルシールド》!!」


 ヴィヴィアンが再び盾の壁を展開し、群れの流れを分断する。


「《フレイムボルト》!」

 ユークの魔法が分断されたモンスターを一掃していく。


 やがてアウリンの詠唱が終わり、ユークが大声で合図した。


「二人とも、戻れっ!」


 セリスとテルルが退き、すかさずヴィヴィアンがEXスキルを発動する。


「《インヴィンシブルシールド》!」


 二人がいた場所をすぐにモンスターの群れが埋めるが、ヴィヴィアンが作り出した盾の壁に阻まれそれ以上進めなくなる。


「今だっ! アウリン!!」

 ユークが叫ぶ。


「《フレイムピラー》!」

 轟音と共に炎柱が立ち並び、モンスターの群れを焼き尽くしていく。


 やがて炎が消えると、そこにはモンスターの残骸と焦げ臭さだけが辺りに残った。


「セリス! テルル! 残りを頼む!」


 ユークの声にセリスとテルルが飛び出していき、わずかに残ったモンスターを仕留めていく。


(来た道が塞がっているって一体どういう……)


 息を荒げながら、ユークはアズリアのもとへ向かった。


 トンネルの入り口には、たしかに通路を塞ぐ厚い石壁がそびえていた。


「どう……したら……」

 アズリアは膝をつき、肩を震わせる。


「くっ……これじゃ戻って報告できない……!」

 ユークは歯を食いしばった。



《賢者の塔》は入ったパーティーごとに個別のダンジョンを形成する。


 つまり、今ユーク達が殲滅したのと同じ状態のダンジョンがまだ無数に残っているのだ。


 もしそれが全部街に解放されたらどうなるかなど分かり切ったことだった。


「予定どおり進みましょう!」

 アウリンが強い声で言い放つ。


「アウリン……」

 そんな彼女をユークはすがるようにみる。


「戻れないなら進むしかない、霊樹の精霊に聞けばきっと何か分かるはずよ」


 ユークはしばし見つめ、そしてうなずいた。


「……そうだね。今は進むしかないか……」


 彼はアズリアに手を差し伸べる。

「立ってください。あなたの子供たちのためにも、原因を突き止めましょう!」


「わ……かった……すまない……」

 震える手でユークの手を取り、アズリアは立ち上がる。


「行こう! 《賢者の塔》の異常を突き止めれば、スタンピードだって止められるはずだ!」


 ユークの声に仲間たちがうなずき、一行はさらに奥へと踏み込んでいった。


◆◆◆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ユーク(LV.44)

性別:男

ジョブ:強化術士

スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫

備考:不思議なことに、ユークが知らないモンスターは一体も出なかった。もし三十階以上のモンスターが現れていたなら、もっと苦戦していただろう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

セリス(LV.42)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪タクティカルサイト≫

EXスキル2:≪ブーステッドギア≫

備考:モンスターの死骸が消える前に追撃したため、足に血肉がこびりついて気分が悪くなった。しかし放っておけば光の粒子となり消えるため安心だ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アウリン(LV.43)

性別:女

ジョブ:炎術士

スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)

EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫

EXスキル2:≪コンセントレイション≫

備考:フレイムピラーは範囲内の敵を感知し、火柱を発生させる魔法。詠唱に時間はかかるが、今回のように敵が密集している状況では非常に効率が良い。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヴィヴィアン(LV.42)

性別:女

ジョブ:騎士

スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)

EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫

EXスキル2:≪インヴィンシブルシールド≫

備考:浮遊リヤカーがあるとはいえ、それぞれ普段通りに自分の荷物を身に着けている。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

テルル(LV.34)

性別:男(女)

ジョブ:氷術士

スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)

EXスキル:氷威力上昇

備考:浮遊リヤカーはテルルが引いている。戦闘時には引くのを止めて戦闘に加わる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アズリア(LV.30)

性別:女

ジョブ:剣士

スキル:剣の才(剣の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪ストライクエッジ≫

備考:子どもたちのことが気掛かりだが、外に出られない以上は、自分の役目を果たすしかない。

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