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「お前は用済み」と追放されたけど、俺のことが大好きな幼馴染も一緒に抜けたせいで元パーティの戦力が崩壊した件  作者: 荒火鬼 勝利


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第199話 恐怖を越えて


「十分な魔力を用意してやれば、《賢者の塔》の複製は可能だ。そう、なってしまった」

 エウレの言葉は重く、部屋の空気を一気に張りつめさせた。


(《賢者の塔》を複製する……? そんなことを企む相手に、俺たちで出来ることなんてあるのか……?)


 ユークは喉が張りつくのを感じながら、不気味に赤く染まった《賢者の塔》を見つめた。胸の奥で、自分の自信が音を立てて崩れ落ちていく。


(俺はカルミアのパーティーにいた頃よりも、ずっと強くなった)

 ユークは無意識に拳を握りしめる。


(それに……これまでだって何度も強敵を倒してきた。だから今回も大丈夫だと、そう思ってたんだ……)

 数々の死線をくぐり抜けた記憶がよみがえる。


(――けど、それは思い上がりだったのかもしれない……)

 エウレの話を前にすれば、これまでの経験があまりに小さく思えた。


 恐怖が心を支配しかけたとき、背中に回されたセリスの腕がぎゅっと強くなる。


「ユーク……どうしたの?」

 彼女の体温が肌を通じて伝わり、ユークの震えはわずかに鎮まった。


「……いや、大丈夫。ありがとう、セリス」

 ユークは小さく微笑み、彼女の腕にそっと触れる。


「……もし、このまま放っておいたらどうなると思いますか?」

 ユークが問いかけると、エウレは肩をすくめ、手元の書類を揺らして見せた。


「正直言って分からん。《賢者の塔》を複製して何をするつもりなのか……」

 軽口を叩いてみせたが、その目には焦りがにじんでいた。


「……大賢者様の遺産を増やそうとしているのかもな。世界に二つとないお宝を二個に増やせるなら、お得だろう?」

 エウレが冗談めかして笑いながら言う。


「まあ、そもそも未だに誰も見たことのない大賢者様の遺産を見つけることができなければ、話にならないんだがね」

やれやれと首をふるエウレ。


(大賢者の遺産……? いや、霊樹の精霊は《賢者の塔》に封印されているのは、大賢者様が倒しきれなかった魔獣だと言っていたはず……)

 エウレの言葉に違和感を感じ、ユークは眉をひそめる。


「《賢者の塔》にあるのは遺産じゃない……彼が封印した、強大なモンスターだ……」

 考え込むように口にしたユークの言葉に、エウレは呆然と立ち尽くした。


「は……?」

 ギルドとも関わりの深い彼女でさえ知らされていなかった事実に、ひどく動揺しているのが伝わってくる。


「奴らは最初、霊樹を乗っ取ろうとした……」

 ユークの脳裏に、霊樹に寄生してそのシステムを掌握しようとしたラルヴァの女王の姿が浮かぶ。


「だけど失敗した……」


(霊樹の精霊が、同じ失敗を繰り返すだろうか……? 俺なら二度と奴らを《賢者の塔》に近づけない。最低でも二十階には入れなくする)


「……だから、自分たちに都合のいい複製の《賢者の塔》を作って、封印された魔獣を復活させるつもりなのか……?」

 ユークが考えをまとめながら口にすると、その場の誰もが絶句した。


「待ってくれ。その封印された魔獣ってのは、一体何の根拠があって……?」

 エウレがうろたえながら問いかける。


「霊樹の異変を解決した時に、霊樹の精霊から直接聞いたの。私たち全員が」

 アウリンがきっぱりと言い、セリスとヴィヴィアンも静かに頷く。


「……くっ」

 三人の真剣な表情を前に、エウレは後ずさった。


「わしもずっと違和感を覚えておった」

 沈黙を守っていたテルルが口を開く。


「異界化しているのに、モンスターも出ず、構造の変化もない。目的を悟られぬようにしたかったからじゃろう。だが、この街の封鎖は誰が見ても異常事態じゃ」


 部屋に緊張が走る。


「つまり……もう隠す必要がなくなった。あるいは、そうしなければ目的を果たせない段階に入ったということにも考えられる……」

 テルルがユークたちを見回す。


「それって……つまり……」

 アウリンが恐る恐る問い返す。


「もう時間がないのかもしれん。ユークの考えが正しければ、間もなく魔獣の封印が解かれる。かの大賢者ですら倒せなかったバケモノがな……」


 テルルの言葉に、部屋の空気は凍りついた。


「そんな……どうすれば……」

 ヴィヴィアンが絶望したように呟く。


 ユークは奥歯をかみしめ、恐怖を押し殺す。仲間たちの視線が自分に集まる。

 逃げることも、立ち止まることも許されない。


「――だったら、封印が解かれる前に止めるしかない」


 その声は重苦しい空気を切り裂き、全員の心を奮い立たせるのだった。


◆◆◆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ユーク(LV.44)

性別:男

ジョブ:強化術士

スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫

備考:パーティーのリーダーとして恐怖を押し殺し、勇気を振り絞って発言した。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

セリス(LV.42)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪タクティカルサイト≫

EXスキル2:≪ブーステッドギア≫

備考:ユークとなら、何とだって戦って見せる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アウリン(LV.43)

性別:女

ジョブ:炎術士

スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)

EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫

EXスキル2:≪コンセントレイション≫

備考:こんな事態になるのが嫌で街を離れたかったのに、結局巻き込まれてしまった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヴィヴィアン(LV.42)

性別:女

ジョブ:騎士

スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)

EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫

EXスキル2:≪インヴィンシブルシールド≫

備考:敵の強大さに恐れを抱いていたが、ユークの言葉で震えが止まった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

テルル(LV.34)

性別:男(女)

ジョブ:氷術士

スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)

EXスキル:氷威力上昇

備考:魔獣の封印について何も聞いていないのだが?

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エウレ(LV.??)

性別:女

ジョブ:??

スキル:??

備考:今回知った情報に恐怖よりも知的好奇心をかき立てられている。

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