表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「お前は用済み」と追放されたけど、俺のことが大好きな幼馴染も一緒に抜けたせいで元パーティの戦力が崩壊した件  作者: 荒火鬼 勝利


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

201/254

第198話 もう一つの賢者の塔


 ユークたちは決意を胸に、赤き《賢者の塔》へ向かう前に、まずエウレの邸宅を訪れることにした。


 しかし、街の様子はすでに異常をきたしているようだ。


 大通りには人々があふれかえり、我先にと荷を抱えて逃げ惑う者、恐怖に顔を歪めて叫ぶ者、道端にしゃがみ込み絶望する者……混乱は広がるばかりだった。


 ユークは仲間と共に人波をかき分け進んでいたが――ふと、視線の先に見覚えのある人影を捉える。


 燃えるように鮮烈な赤髪。高級な仕立ての衣。


「ジオ……っ!」

 思わず名を呼んだ瞬間、肩を誰かにぶつけられ、体がぐらりと揺れる。


 慌てて周囲を見回したときには、すでにその背中は群衆に呑まれ、影も形もなくなっていた。


(……いない。見失ったか。だけど、確かにあの姿は――)

 胸の奥にざらつく感覚だけが残る。


「ユーク、どうしたの?」

 ユークが立ち止まっていることに気付き、駆け寄ったセリスが彼の手を掴む。


「いや……なんでもない。見間違いだと思う」

 ユークは首を振り、仲間たちへ戻った。


(……どちらにせよ、今は探している時間なんてない……)

 それでも心の奥には、赤い影が焼きついたまま。


 彼は足を早め、エウレの邸宅を目指した。



 ◆◆◆



「……ん?」

 雑踏の中、赤髪の男がふいに立ち止まり、背後を振り返る。


「どうかしましたか、殿下?」

 傍らの女性が問いかける。


「……誰かに呼ばれた気がしたのだが」

 周囲を見回すがそれらしき人物は見当たらない。


「いや、気のせいだろう」

 男はそう言い切り、視線を前へ戻した。


「それで――妹はこの騒ぎに巻き込まれていないのだな?」

 男は女性に念を押して確認する。


「はい。今朝、彼らの自宅に向かいましたが、もうゴルド王国に移ったと張り紙がありました」


「そうか。それならよい」

 男は息を吐き、わずかに緊張を解いた。


「俺たちが動くのはギルドの出方を見てからでも遅くはない。まずは宿に戻り、情報収集をしているじいと合流せねばな」


「はいっ、殿下!」

 女性の元気な返答を合図に、二人の姿は人波へと消えていった。



 ◆◆◆



 ようやくエウレの屋敷へたどり着いたユークたちは、緊迫した面持ちのメイドに迎えられ、奥の部屋へと通される。


「……やあ、昨日ぶりだな。もうゴルド王国に発ったと思っていたよ」

 ソファに寝そべるエウレは、薄紫の透けるようなネグリジェ姿だった。


「な、なんて格好してるのよ……!」

 アウリンが呆れ混じりに眉をひそめる。


「私は朝が弱いんだ。勘弁してくれ」

 気怠げに伸びをするエウレ。


 その仕草を見て、ユークは顔を真っ赤にして視線を逸らした。


 ヴィヴィアンはそんな彼を横目で見つめ、唇を固く結ぶ。

 そしてセリスは無言のままユークの背に腕を回し、そっと抱きついてくる。


「それで、今日はなんの用だい?」

 エウレの声は淡々としていたが、視線は真剣さを帯びていた。


「街の状況を知っていますか?」

 ユークの問いかけに、彼女は軽く頷く。


「ああ、街の出入りができなくなっているとか」


「俺たちは――この街が“異界化”している可能性が高いと考えています」

 その言葉に、エウレはしばし黙し……やがて口を開く。


「……なるほど。この街そのものがダンジョン化している、というわけか。穏やかではないな」


 視線を鋭くした彼女は立ち上がり、工房へと姿を消す。


 戻ってきたとき、手には見慣れぬ魔道具が握られていた。


「これは空気中の魔力を測定する魔道具だ。……針を見てみろ」

 ユークが覗き込むと、メーターの針は異常な位置を指していた。


「ここが正常値。だが今は――この通りだ」


「これ……だいぶ、オーバーしてませんか?」


「その通りだ。完全に異界化が進行しているということだな」

 エウレの口元がわずかに歪む。


「異界化が進むと、何が起きるんですか?」

 ヴィヴィアンが落ち着いた声で尋ねる。


「まずモンスターの出現。次に、建物や地形の変質。そして――」

 エウレは棚から資料を取り出し、ユークへ投げ渡す。


「これは……?」

 渡された資料を見て、ユークが問いかける。


「ヘリオ博士の研究記録の一部だ。私はそれの解析をギルドから依頼されていた」


「研究記録……?」

 セリスが首をかしげる。


「簡単に言えば、《賢者の塔》を魔力で複製する方法の研究だよ」

 エウレは言葉を切り、皆の反応を順に確かめるように視線を動かした。


「そんなことが出来るんですか……!」

 アウリンが息をのむ。


「出来るわけが無いだろう? 街全体をダンジョン化でもしない限りはね」

 エウレは淡々と説明を続けた。


「つまり……」

 部屋の空気がすっと冷たくなる。


「十分な魔力を用意してやれば、《賢者の塔》の複製は可能だ。そう、なってしまった」

 その場にいる全員が、足元から世界が少し崩れたように思えた。


◆◆◆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ユーク(LV.44)

性別:男

ジョブ:強化術士

スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫

備考:セリスに抱きつかれているが、背中に胸鎧が食い込み少し痛いのをこらえている。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

セリス(LV.42)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪タクティカルサイト≫

EXスキル2:≪ブーステッドギア≫

備考:ユークがエウレに赤面しているのを見て、気づけば首に腕を回していた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アウリン(LV.43)

性別:女

ジョブ:炎術士

スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)

EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫

EXスキル2:≪コンセントレイション≫

備考:場の空気を読まずにユークに甘えられるセリスを、少しだけ羨ましいと感じている。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヴィヴィアン(LV.42)

性別:女

ジョブ:騎士

スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)

EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫

EXスキル2:≪インヴィンシブルシールド≫

備考:鎧を着ていなければ、セリスのようにユークに甘えられたのにと、わずかに残念に思っている。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

テルル(LV.34)

性別:男(女)

ジョブ:氷術士

スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)

EXスキル:氷威力上昇

備考:自分が元宮廷魔術師のヴォルフだとエウレに気づかれぬよう、ひたすら黙っていた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

エウレ(LV.??)

性別:女

ジョブ:??

スキル:??

備考:朝に弱く、ソファで一時間ほどだらだらするのが日課になっている。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ