閑話 まだまだ勉強が必要ね
ギルドで借りた部屋
ユークは椅子の上で軽く伸びをしながら、向かいの椅子に座るアウリンに声をかけた。
「そういえば、お医者さんに魔力欠乏症だって言われたんだけど」
アウリンは、プレゼントされた髪飾りを指でなぞるように触っていたが、その言葉を聞いて手を止めた。
「え? ああっ! そういえば説明してなかったわね! 必要ないと思ってたから……」
慌てて背筋を伸ばし、真剣な表情を作るアウリン。
「えっ!? 大丈夫なの??」
セリスが目を丸くし、心配そうにユークの顔を覗き込む。
「心配ないわよ。ただ一時的に魔力が底をつきかけただけだから」
アウリンは軽く肩をすくめながら言った。
「ランプを灯すのに油が必要なように、魔法にも魔力が必要なの。本来ならね」
「本来ならって?」
ユークが眉をひそめると、アウリンは小さく頷いた。
「ダンジョンの内部には魔力が満ちてるから、魔法を使ってもすぐに回復するのよ。でも、ダンジョンの外だとそうはいかないの」
「つまり……ダンジョンの外では、魔法を使える回数に限りがあるってこと?」
ユークの問いに、アウリンは指を立てて答えた。
「その通り。ただし、どれだけの魔力を持っているかは人それぞれだから、正確な回数はわからないけどね。でも、気を失うほど魔力を消費するなんて……一体何をしたのよ?」
呆れたような視線をユークに向けるアウリン。
ユークは少し気まずそうにしながらも、カルミアとの戦いの顛末を二人に語った。
「アイツっ……!」
話を聞いたセリスは拳を握りしめ、怒りをにじませる。
「ははは……バカみたいなことしてるわね、ほんと」
アウリンは乾いた笑いを漏らした。
「ちょっと!」
セリスが非難の視線を向ける。
「まあ、教えてなかった私も悪かったけど……そんな効率の悪い使い方してたら、そりゃあ魔力欠乏症にもなるわよ」
アウリンは額を押さえながら、呆れたようにため息をついた。
「ごめん……あの時は、それしか手がないと思って……」
ユークは申し訳なさそうにうつむいた。
「いいのよ。でも、本当に魔力が足りてよかったわね。もし魔法の発動に必要な魔力が残ってなかったら、そのまま不発に終わってたわよ」
アウリンは肩をすくめながら言う。
「っ……!」
その言葉を聞き、ユークはぎゅっと拳を握りしめた。あの戦いは本当に紙一重の勝利だった。もし魔力が尽きていたら……その先を考えると背筋が寒くなる。
「はぁ……まだまだ勉強が必要ね……」
アウリンが大げさに肩を落とす。
「うん……これからもよろしく」
ユークは決意を新たにし、二人に向かってそう告げた。
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ユーク(LV.11)
性別:男
ジョブ:強化術士
スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)
備考:よくカルミア相手に勝てたな、と改めて思う。
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セリス(LV.12)
性別:女
ジョブ:槍術士
スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)
備考:次会ったら殴る。
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アウリン(LV.15)
性別:女
ジョブ:炎術士
スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)
備考:ギルドのルールがあるしダンジョンの外で戦闘になるとは思って無かった。
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