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第158話 思わぬ闖入者


「どうか、ワシに力を貸してはくれぬか? わし一人では彼の元までたどり着くのは難しい。だが、お前たちとなら……」

 彼女は真剣な表情でユークたちに頭を下げた。


 場が静まり返り、全員の視線がユークに集まる。

 その中で、ユークはテルルの目をまっすぐに見据え、真剣な声を返す。


「……テルル。すぐに返事をするのは無理だ。少し、みんなで相談させてくれないか?」


「うむ。当然の要求じゃな」

 テルルは納得したように頷く。


 テルルから少し離れた場所に四人が集まる。

 最初に口を開いたのはユークだった。


「……それで、どうしようか?」


「私はユークが決めたことなら、それでいいよ!」

 セリスが元気よく手を挙げる。そのまっすぐな信頼に、ユークはふっと笑った。


「私は……反対よ」

 アウリンは悩み抜いた末に、吐き出すように言う。


「師匠のことは心配だけど、これはギルドからの依頼じゃない。博士を倒しても、十分な報酬が得られる保証はないわ。師匠の話じゃ、博士の死体すら残らないかもしれない。そうなれば報奨金すらも出ない。完全なタダ働きよ。私たちの目的は果たしたんだから、あとは他の人に任せるべきだと思うわ……」


 冷静な言葉の裏で、彼女の複雑な感情が渦巻いていることを、ユークは感じ取っていた。


「ごめんなさい……私はおじいちゃんを助けてほしい」

 ヴィヴィアンは苦しげに顔を歪めながらも答える。


「きっと、私たちが断っても、おじいちゃんは一人で行こうとすると思うの。でも、私たちに協力を求めてきたってことは、一人ではダメなんだと思うわ……無謀な人じゃない。何か考えがあるはずよ……」

 その声は震えており、信頼と不安が入り混じっているかのようだった。


 ユークは三人の意見を聞き、自分の考えをまとめる。


「……わかった。彼女に協力しよう。ただし、博士がすでに実験を終えていた場合の対策があるのか、それをテルルに確認してからだ」

 三人は静かに頷いた。


 ユークたちはテルルのもとへ戻り、結論を伝える。


「話はまとまったかの?」

 平静を装うテルルだったが、地下で共に戦ってきたユークには、彼女がわずかに緊張しているのがわかった。


「うん、結論は出たよ」

 ユークがそう告げると、テルルの目がわずかに揺れる。


「一つ、聞きたいことがあるんだ」

 ユークは人差し指を立て、真剣な表情で問いかけた。


「……なんじゃ?」


「もし博士がすでに実験を終えていて、最悪のモンスターになっていた場合の、対策はあるの?」


「うむ、手は考えておる。ワシを彼の所まで送り届けてくれれば、なんとかなるはずじゃ」

 テルルは力強く答えた。


「……わかった。俺たちはテルルに協力するよ」

 ユークの言葉に、テルルは驚き、深く頭を下げる。


「すまぬ……ありがとう」


 再び博士のアジトへ向かおうとした、その時――。


「待ってください! 今は通れません!」

 外で警戒していたラピスの声が響き、勢いよくテントの入り口が開かれた。


「話は聞かせてもらった! その件、私にも協力させてくれないか?」

 そこに立っていたのは、ギルドガードの隊長、ダイアスだった。


「ダイアスさん!?」

 ユークは思わず声を上げた。


 ダイアスは、こそこそと集まっていたユークたちの様子を怪しみ、テントの裏に潜んで会話を盗み聞きしていたらしい。


 そして博士の恐ろしい計画と、この街に及ぶ甚大な被害の可能性を知り、黙っていられなくなったのだ。


「オライト様はヘリオ博士と交渉するつもりだったようだが……まさかヤツがそんな狂人だったとはな」

 険しい表情でダイアスが言う。


「……オライト様? あなた、帝国の人なの?」

 アウリンの声に警戒がにじむ。


「俺はギルドの帝国派に属している。博士を捕らえたいという帝国の意向を無視するのは、立場上まずい」

 ダイアスは一度言葉を切り、真剣な眼差しを向けた。


「だが俺は、この街を守るギルドガードの隊長だ。君たちの話が事実なら、真っ先に被害を受けるのはこの街だ。――守るために、どうか俺にも協力させてくれ」

 そう言って深々と頭を下げる。長い黒髪が垂れ幕のように揺れた。


「……いいんじゃない? 一緒に連れて行ってあげても」

 真っ先に口を開いたのはテルルだった。


「ちょっと……!」

 アウリンが反論しかけるが、ユークは頷いた。


「わかりました。力を貸してください、ダイアスさん」

 そう言って手を差し出す。


「……いいのか? 感謝する、ユーク君!」

 ダイアスは力強く握手を返した。


「わ、私たちも力になります!」

 負けじとラピスが手を挙げる。彼女の仲間たちも同じ意志を見せたが、一人だけ渋い顔をする者がいた。


「え〜! これで仕事は終わりじゃなかったんッスか!?」

 ミモルは予想外の展開に声を上げる。


「ふっ、仕方ないだろう。なんなら君だけ残るか?」

 元同僚であるダイアスの軽口に、ミモルは肩をすくめた。


「わかったッスよ! 協力すればいいんでしょ?」


(カルミア……)

 その様子を見ながら、ユークは心の中で呟く。


 どんな結末になろうと、カルミアとの因縁はここで決着がつくのだろう――。


 彼の胸には静かな決意が宿っていた。


◆◆◆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ユーク(LV.33)

性別:男

ジョブ:強化術士

スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫

備考:敵にカルミアがいることも、協力を決めた理由の一つ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

セリス(LV.33)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪タクティカルサイト≫

備考:ダイアスの存在には気づいていたが、敵意を感じなかったためあえて無視していた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アウリン(LV.34)

性別:女

ジョブ:炎術士

スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)

EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫

備考:不満はあるものの、リーダーであるユークの最終判断に従った。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヴィヴィアン(LV.33)

性別:女

ジョブ:騎士

スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)

EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫

備考:自分のわがままで仲間を危険に巻き込んでしまったことを、心から申し訳なく思っている。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

テルル(LV.??)

性別:男(女)

ジョブ:??

スキル:??

備考:魔法連盟に複数の魔法の特許を持っていて、非常にお金持ち“だった”。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ラピス(LV.30)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪テラーバースト≫

備考:盗み聞きしていたわけではなく、ダイアスとの会話内容から状況を察して名乗り出た。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ミモル(LV.30)

性別:女

ジョブ:双剣士

スキル:双剣の才(双剣の基本技術を習得し、双剣の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪クロスエッジ≫

備考:王国にはアズリアが、帝国にはダイアスがヘリオ博士の情報を流す中、彼女は商国への連絡前にギルドガードを止めてしまったため、商国は情報から外れてしまった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ダイアス(LV.33)

性別:男

ジョブ:斧士

スキル:斧の才(斧の基本技術を習得し、斧の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪ブレイクスラッシュ≫

備考:帝国は犯罪者を実験体として提供すれば博士を制御できると考えている。

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