第152話 悪魔との激闘
『お覚悟はよろしいですか? 私は“あの男”が現れるまで、博士の配下の中で最強の存在でした。あの男相手に何もできなかった貴方に、私を倒せるとは思えませんが……』
眼鏡を失った顔で鼻先を押し上げるような仕草をしながら、ルーダは裂けたような笑みを浮かべた。
『《ブラックアームズ》』
裂けるような笑みを浮かべたまま、ルーダがスキル名を口にする。
黒いモヤが彼の手元に集まり、やがて漆黒の剣へと姿を変えた。
『はぁぁっ!!!』
黒剣を手にしたルーダが、猛然とユークたちへ斬りかかる。
「させんと言っておろうがっ!」
テルルもまた、大鎌を構えて迎撃した。
黒剣と大鎌が交錯する。
金属がぶつかる音が響き、火花が散った。
『なるほど……』
「ちいっ!」
ルーダの鋭い剣さばきに、テルルは何度も斬撃を受ける。
一方で、彼の大鎌の攻撃はことごとくいなされていた。
純白だったワンピースは裂けて血で赤く染まり、腕や足からも血が滴っている。
肩口は大きく破れ、服の隙間から素肌がのぞいてしまっていた。
勝敗は明らか――だが、それでも。
『さすがのタフさ、といったところですか』
ルーダが感心したように言った。
「皮肉か? 性格の悪いやつじゃ!」
テルルは、まるで最初から傷などなかったかのように体を再生させ、裂けた衣の奥から幼い肌を覗かせながら、ルーダを睨みつける。
『いえいえ、本心ですよ』
ルーダは楽しげに笑った。
「《フレイムボルト》!」
ユークの魔法が直撃したのは、その直後だった。
炎の矢がルーダの胸を撃ち抜き、爆ぜる。
『即席の連携にしては、なかなかのものだと思いまして……』
だが、煙の中から現れたルーダは、まったくの無傷だった。
「効いてない!?」
ユークが目を見開く。
『何を驚くのですか? 言ったでしょう、私は“最強”だったと。初級魔法どころか、中級魔法すら私の鋼鉄の表皮には通じませんよ』
悪魔のように歪んだ笑み。
そこには、あからさまな侮蔑が込められていた。
「じゃが、ワシの大鎌なら効くじゃろう!」
テルルが叫び、大鎌を振り抜く。
ルーダはそれをひらりとかわし、わずかに目を細める。
『タイズの死神の鎌、ですか。確かに、それは危険だ――ですが、使い手がそれではねっ……!』
「くっ!」
テルルの攻撃は空を切り、彼女の悔しげな声が響いた。
(なら、これはどうだ!)
ユークが詠唱を終えると、空中に描かれた魔法陣が光る。
「《フレイムランス》!」
炎の槍が勢いよく放たれ、一直線にルーダへ向かう。
『人の話を聞いていなかったのですか? その魔法も、私には通じません!!』
その言葉通り、ルーダは真正面から炎の槍を受け止めた。
激しい爆発と黒煙が広がり、視界が覆われる。
「てやぁぁぁっ!」
テルルが煙に紛れ、大鎌を振りかざして跳躍した。
だが――
『なるほど、煙幕に紛れての奇襲。ですが、悪魔の目は闇を見通します。そんな煙では、気を逸らすことすらできませんよ!』
ルーダが剣を振り上げ、大鎌の攻撃を受け止める。
激しい衝突音。
テルルの口から苦しげなうめきが漏れ、後退した。
「ぐっ!!」
ユークの魔法を防ぎ、テルルを迎撃する――その直後。
(……今だ!)
詠唱を終えていないはずのユークが、静かに手をかざす。
その動きは、無詠唱魔法――テルルから学んだ技術だった。
フレイムランスと同時に描かれていた、第二の魔法陣が発動する。
音もなく放たれる閃光の矢。《フラッシュボルト》が、ルーダに向けて一直線に放たれた。
『なっ……!?』
魔法が直撃し、爆発的な光が辺りを包む。
『――ッ!?』
視界が真っ白な光に焼かれ、一時的にルーダの動きが止まった。
その瞬間を逃さず、テルルが大鎌を振り上げる。
「喰らえぇぇぇっ!!」
閃光に翻弄され、動きの鈍ったルーダだったが辛うじて反応する。
『っ……ああああっ!!』
咄嗟に体をひねり、テルルの攻撃を回避するが。完全に避けきることは出来ない。
大鎌の刃が鋼鉄の腕を断ち、肩口からばっさりと斬り落とした。
『ぐぉぉぉぉああああああッッ!!!』
黒い血が断面からおびただしい勢いで噴き出す。
それでもルーダは即座に腕の筋肉を締め止血。
背中の翼を羽ばたかせ、強烈な風圧と共に天井へと飛翔する。
「今度こそ――!」
止めを刺そうとしていたテルルの追撃は届かず、空を切った。
ルーダは天井付近で羽ばたきながら宙に浮き、肩を押さえながらユークたちを見下ろす。
その目には、初めて「怒り」と「恐怖」が混ざっていた。
黒い血が滴り落ちるなか、三人の視線が交錯する。
だが、決着の時は――まだ訪れていない。
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ユーク(LV.33)
性別:男
ジョブ:強化術士
スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)
EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫
備考:切り裂かれたワンピースの隙間から、幼い肌があらわになり、あまりに無防備なその姿に、思わず視線を逸らしたくなってしまう。
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テルル(LV.??)
性別:??
ジョブ:??
スキル:??
備考:服の再構成は、魔力の節約のためにあえて行っていない。
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ルーダ(LV.??)
性別:男
ジョブ:荳顔エ壼殴螢ォ
スキル:蜑」縺ョ謇(蜑」縺ョ蝓コ譛ャ謚?陦薙r鄙貞セ励@縲∝殴縺ョ謇崎?繧貞髄荳翫&縺帙k)
モンスター固有スキル:《ブラックアームズ》
備考:デーモンの固有スキル『ブラックアームズ』は、黒い靄を操り、さまざまな武器を生み出す能力だ。
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