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第13話 強くなる実感


 ユークは顔を赤くしながら、申し訳なさそうに視線を落とした。

「……ごめん、恥ずかしいところを見せた」


 弱々しくそう呟くユークを見て、アウリンはふっと優しく微笑む。

「いいのよ。ユークって、そういうところもあるのね」


 その表情は、普段の快活かいかつな彼女とは違い、どこか穏やかだった。


「それに、かっこよかったよ!」

 セリスが満面の笑みを浮かべてそう言うと、ユークの顔がさらに真っ赤になった。


「と、とにかく! 次のオークを探そう!」


 慌てて話を逸らすユーク。しかし、その様子が可笑しかったのか、アウリンとセリスは顔を見合わせ、くすくすと笑った。


 午後の狩りは驚くほど順調だった。


「《フレイムアロー》!」


 ユークの詠唱とともに、炎の矢が一直線に飛び、オークの膝を貫く。燃え盛る火炎が爆発し、巨体がよろめいた。


「はああああああっ!!」

 その隙を逃さず、セリスが一気に踏み込む。槍の切っ先がオークの胸元を抉り、さらに勢いをつけた回し蹴りで巨体を地面に沈めた。


「《フレイムアロー》!」

「《フレイムピラー》!」


 さらに、ユークとアウリンの魔法が立て続けに炸裂。巨大な炎の柱がオークを包み込み、その身を業火に焼かれて消滅していく。


 ユークは手際よく落ちた魔石を拾い上げ、セリスとアウリンも次の獲物を探す。


「昨日よりも、倒すスピードが明らかに上がってるわね」

 アウリンが満足げに呟くと、セリスも嬉しそうに頷いた。


「確実に稼げてるよね! これは期待できるかも!」


 確かに、オーク一体を倒すのにかかる時間も大幅に短縮されている。魔石の量を考えても、昨日よりも多くの収穫があったのは間違いなかった。


 夕方まで狩りを続け、探索を終えた三人は、ギルドへ向かうために大通りを歩いていた。


「すっごい稼げたね~!」

 セリスが嬉しそうに言う。


「うん、昨日より多いのは間違いないと思う」

 ユークは背負ったカバンを軽く持ち上げる。中には、今日手に入れた魔石がたっぷり詰まっていた。


「私としては本当にありがたいわ。今、お金が必要だったから……」

 アウリンがどこか安堵したように呟く。


「そういえば、パーティーを組む時もお金が必要って言ってたよね?」

 ユークがアウリンと出会った時のことを思い出しながら尋ねると、彼女は少し表情を曇らせた。


「そうなのよ。相方がちょっと病気にかかっちゃってね」


「病気?」

 セリスが首をかしげる。


「お金って、どのくらいかかるの?」

 悪意のない純粋な問いかけだったが、それを聞いたユークは慌ててセリスを制止しようとした。


「ちょっと、セリス! そういうのは……」


「いいのよ、ユーク」

 アウリンは軽く笑って首を振る。


「だいたい……薬代が1日で30ルーンくらいかしらね」


「「30ルーン!?」」

 ユークとセリスの声が重なった。


「そんなに必要だったのか……」

 ユークは思わず絶句する。昨日の稼ぎでもギリギリか、もしかすると足りないかもしれない。


「私、少しくらいならお金貸せるけど……?」


 セリスが心配そうに言うと、ユークもすぐに頷いた。


「あっ、それなら俺も。何かあれば言ってくれ」


 二人の申し出に、アウリンはふっと微笑んだ。

「心配してくれてありがとう。でも、ギリギリ足りてるから大丈夫よ」


 そう言いながら、彼女はどこかホッとしたような表情を浮かべる。


 そんな会話を交わしながら、三人はギルドへと向かった。



 ギルドの中は、ダンジョン帰りの探索者たちで賑わっていた。ユークが魔石の清算をしている間、アウリンとセリスはのんびりと会話を楽しんでいた。


「ねえ、アウリン。今日はありがとう。ユークに魔法を教えてくれて」


 セリスがおずおずとお礼を言うと、アウリンは軽く肩をすくめる。


「別にいいのよ。でも、あんなにすぐ覚えるとは思ってなかったわ」


「えっ、そうなの!? ユークって才能あったりする?」


「あると思うわよ? 覚えた魔法をすぐ実戦で使いこなすのは、なかなかできることじゃないわ」


「そっかー、えへへ」

 セリスがまるで自分のことのように嬉しそうに微笑む。


 そのとき——


「ただいま! 清算してきたよ。……ん? 何話してたの?」

 ユークが金袋を手に戻ってきた。


「なーいしょ!」

 セリスが可愛らしく口を閉ざす。


「じゃあ私も黙ってるわね」

 アウリンも微笑む。


「ええー、気になるなぁ。でもまあいいか。ほら、三人分に分けてもらったから」

 ユークはそう言って、二人に金の入った袋を手渡した。


「いくら入ってるの!?」

 セリスが興味津々に袋を覗き込む。


「なんと、一人126ルーン! 全部で378ルーンだったよ!」


「おお!!」


「すごいじゃない! 私、相方が病気になってから100ルーン超えたの初めてよ!」


「私も!」

 二人は興奮気味に声を上げ、顔を見合わせて笑う。その姿を見て、ユークも自然と嬉しくなった。


「これもアウリンが魔法を教えてくれたおかげだよ。本当にありがとう」


「そんなことないわ、あなたの努力のたまものよ」


「……あっ、そうだ! これを返さなきゃ」

 ユークは思い出したように、アウリンから借りていた杖を取り出す。


「ふふっ、それはユークにプレゼントするわ」


「えっ、悪いよ……」


 ユークが遠慮すると、アウリンは軽く首を振った。


「いいのよ。今日は本当に助かったわ。これで薬も買えるし……あなた達と出会ってなかったら、どうなってたかわからないもの」


 その言葉に、ユークはしばし考え、やがて頷く。


「わかった。じゃあ、ありがたく貰っておくよ。このお礼は必ずするから」


「そんなのいいのに。でも、期待しておくわ」

 アウリンが楽しそうに微笑む。


「よし、それじゃ帰ろうか、セリス」

「うん」


 セリスは穏やかに微笑むと、ユークの隣に並び、三人はギルドを後にした。


 ◆◆◆


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ユーク(LV.11)

 性別:男

 ジョブ:強化術士

 スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

 備考:強くなった分がそのまま報酬に反映されているようで凄く嬉しい。

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 セリス(LV.12)

 性別:女

 ジョブ:槍術士

 スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

 備考:ユークが嬉しそうで自分も嬉しい。

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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 アウリン(LV.15)

 性別:女

 ジョブ:炎術士

 スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)

 備考:実は前回の探索はすこしだけ赤字だった。

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