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最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました  作者: 湊一桜
最終章

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8. 心配は尽きない

 ハンスによってグルニア帝国のサイバー攻撃は阻止され、水族館のプログラムは無事稼働するようになった。そして、その後すぐにグルニア帝国軍が侵攻してくるという情報がもたらされた。ロスノック帝国は以前のように城門をぴたりと閉め、王都内に警報の鐘が響き渡る。そして、宮廷内も慌ただしくなっていた。



「ローザ。これから私は出陣しないといけない」


 レオンは少し不安そうな顔で私に会いに来る。


「今回はローザがいないため、私は不安だ。

 だが、いつまでも君に頼っていてはいけないと思う」


 彼はそう告げ、私の体を優しく抱きとめる。ふわっといい香りがして、大きな体に包まれて、束の間の幸せを感じた。


「何言ってるの。レオンは出会った時から強くて頼もしいリーダーだったよ」


 そう、ゲームの中とは全然違って、優しくて正義感に溢れていて、強くって。だけど、心配症な部分や繊細なところもある。私はこんなレオンに、いつの間にか心から惚れていた。


「無事に帰ってきてね」


 レオンをぎゅっと抱きしめ返す。


「約束だよ」


 見上げると、レオンの優しい深緑の瞳と視線がぶつかる。そして引かれるようにキスを交わす。


 本当は、レオンが戦場に行くのは不安だ。守られなければならない王子なのに、先陣を切って敵に飛び込むから。だけど私は、レオンは必ず戻ってきてくれると信じている。


「いってらっしゃい」


 私は精一杯の笑顔で彼を見送った。





◆◆◆◆◆




「ローザ様。また友人のところに行かれるんですか? 」


「はい。彼女も身籠っているうえ、夫が戦場に行ってしまって不安でしょうから」


 レオンが敵地に赴いてから三日、私は毎日リリーのもとへと通っている。

 ロスノック帝国が戦闘状態になってから、来客もない。そのため、来客をお迎えする私の仕事も無くなってしまった。


 そして、随分と体調が回復した今、急にリリーが心配になった。きっとリリーはつわりの真っ只中で、ハンスもいなく不安な日々を過ごしているのだろう。


 だが、宮廷の敷地内にハンスと住むリリーを訪れた時、予想以上に彼女は元気だった。どうやら、以前の私ほど体調も悪くないらしい。


「あたし、魔導士団に復帰したいんだけどさぁー」


 リリーはぼやく。


「ハンスが駄目って言って聞かないのよ」


 リリーもハンスに大切にされているのだろう。その表情は幸せに満ち溢れていた。


「それに、不安だなぁ。いくらハンスが魔力交換で強くなったとはいえ、あたしが近くにいられないんだから」


「そうだね……」


 それは私も同じだ。だが、魔力交換によってレオンが元気であることも分かる。レオンの魔力はそこまで消耗しておらず、体も弱っていなさそうだった。こうやってレオンの魔力を感じられることが、何よりも安心だった。


「とにかく、結婚おめでとう。幸せになってね」


 私はリリーに笑顔で告げる。


「ローザもね」


 この世界に来た時は、こんなにも心の許し合える友達が出来るだなんて思ってもいなかった。出会った時は明るくて可愛いリリーが苦手だったが、今はリリーに会えるのが嬉しい。





 そして、こんなリリーと私の不安を払拭してくれたのが、他でもない王妃陛下だったのだ。


 レオンが戦場に出かけてから、王妃陛下は頻繁に私を誘ってくださった。きっと、夫が戦場に行っている私を気遣ってくださったのだろう。随分体調もいい私は、王妃陛下と共に庭園を散歩したり、食事をしたりした。


 はじめは緊張してカチコチだった私だが、次第に緊張もほぐれてきた。王妃陛下は本当に優しくて穏やかな女性だったのだ。私のことを敵視している様子も全くない。


「ローザの話はずっと聞いていましたよ」


 王妃陛下はお茶の席で、私に笑いかける。


「ローザがこの世界に来た時から、とても優秀で正義感の強いお嬢様だと城内でも噂になっていました。

 それで、レオンがいちいち嬉しそうにローザのことを報告するたびに、彼女を手放してはいけないと言ったものです」


 私はただの陰キャのはずだが、王妃陛下にも認められて嬉しい限りだ。故郷では悪いことばかりに巻き込まれていた私だが、この地ではいいことばかりが起こっている。故郷での辛い経験は、この地で幸せになるための修行だったのかもしれない。


「この上ないお言葉をいただき、光栄でございます」


 私は頭を垂れる。


「ですが、農業改革に成功したのも、日照りが解消したのも、水族館の建設も、もとはとえばレオン様のお力添えの結果です。


 そして、レオン様のご活躍も、陛下のご指導の賜物だと存じます」


「ローザよ、頭を上げてください」


 王妃陛下は優しい声で告げる。おずおずと顔を上げると、王妃陛下は美しい顔に優しい笑みを浮かべて私を見ている。


「私には息子しかいないのですが、姫も欲しかったのです。

 どうか私のことを母と呼んでください。私はローザのことを、実の娘のように思っています」


「この上ないお言葉です」


 笑顔で私は付け足した。


「お義母様」


 こうやって、レオンの家族から受け入れられるのもすごく嬉しい。私はこのまま、王太子妃としてレオンと共にいてもいいのだと思って。

 異世界出身の、礼儀のれの字すら知らなかった私を、こうやって受け入れてくださったお義母様に感謝しかない。


 お義母様は美しい笑顔とともに教えてくださった。


「戦争のことは、気にしなくてもいいかと思います。

 戦地からの伝令によると、敵国はかなり戦意喪失しているようです。これも、敵国の暮らしぶりが悪いためでしょう。

 おそらく今回の戦いも、ロスノック帝国が勝利を治めるかと思います」


「安心しました」


 それでも、レオンには元気でいて欲しい。会えない期間が長くなれば長くなるほど、レオンに会いたいと思ってしまうのだった。





 レオンが勝利の知らせとともに帰ってきたのは、それから数日後だった。




いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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