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最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました  作者: 湊一桜
最終章

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7. 何度でも立ち上がるグルニア帝国

 水族館の建設は、すごいスピードで進んでいた。もう建物はほぼ完成し、あとは細かい装飾と魚を入れるのみだ。この速さには、驚きを隠せなかった。


 私の体調は、随分回復した。食事の量も少しずつ増え、レオンに付き添われて仕事をすることだってある。そして、お腹に宿る魔力はさらに大きいものとなっていた。





 午前中に水族館へ行っていたレオンは、タブレットで水族館の写真を私に見せてくれる。そこには故郷の水族館と変わらぬような、お洒落で綺麗な建物が映っていた。


「今朝、小水槽に試しに水と魚を入れてきた。

 ハンスが作った自動水浄化システムが働くかのテストも兼ねている」


「そうなんだ。いよいよだね」


 私は笑顔でレオンに身を寄せる。


「結局、ハンスに頼りっきりで申し訳ないことをしたなぁ。

 私だって、故郷の水族館を参考に、アイデアを出すことだって出来たのに」


「まだまだ決めないといけないことはたくさんある。だから、ローザが元気になったら、たくさん故郷のことを教えてもらおう」


 レオンは優しすぎる。こうやって、私が自己嫌悪に陥らないように、また劣等感を持たないように、私に役割を与えてくれるのだから。私はこういったレオンの計らいにより、この世界で楽しく過ごしていたのだろう。


「ありがとう、レオン」


 そう告げると、嬉しそうに私の頬にキスをくれる。レオンに大切にされて、またにやけてしまうのだった。


「ローザ、気分が良いのなら、久しぶりに散歩でもどうだ?

 もちろん無理強いはしない」

 

「うん、レオンと外に出たい」


 そっと手を伸ばして、立ち上がった私を支えてくれるレオン。このまま皆の前に出るのだろうか。


「れ、レオン!私一人で歩けるよ!」


 慌ててそう言うが、


「私がローザを支えたいのだ」


レオンはぴしゃりと言い放つ。この様子だと、レオンは私がどう足掻いても離してくれないだろう。皆の目が気になるが、この過保護を受け入れるしかないのだろう。


「分かった。ありがとう」


 そう告げると、レオンは嬉しそうに私を抱き寄せた。




 レオンに抱き寄せられたまま、久しぶりに庭園を散歩する。人々は私たちを見て見ぬふりするが、この様子は今に始まったわけではない。


 だが、


「ローザ様、ご懐妊おめでとうございます」


「ご気分が芳しいようで、何よりです」


なんて言葉をかけてくださるかたもいる。

 私はありがとうございますと答えながらも、嬉しい気持ちでいっぱいになる。私がレオンの子を妊娠していることは、好意的に受け取られているのだ。イケメンの子供を、陰キャが妊娠しても何も言われないのだと思って。


 農園に着くと、敷地内は色とりどりに実った野菜で埋め尽くされていた。奥には新たに土地が整備され、美味しそうな果物の成った木が植わっている。それを人々がせっせと収穫していた。


「この国も、ローザのおかげで随分良い国になったな」


 レオンは感慨深そうに告げる。


「我が子にもいい国を残せそうで、本当に良かった」


 その言葉に私が頷いた時、


「レオン様」


不意に聞き覚えのある声がした。振り返ると、久しぶりに会うハンスが、困ったような表情で私たちを見ていた。


「どうしたんだ、ハンス。私たちのデートの邪魔をしないでくれ」


 レオンは嫌そうに告げる。


 レオンは二人の世界に入り浸っていたが、私は久しぶりにハンスに会えて嬉しい。まだ結婚のお祝いも述べていないし、水族館の話もしたい。だが、ハンスに会えて嬉しいだなんて言うと、レオンの怒りを買うだろう。

 ひとまず黙って様子を見ることにするが、ハンスは困った顔で予想外の事実を告げたのだ。


「水族館の自動浄化システムが働きません。

 今朝放した魚は、半分以上死んでしまいました」


「……そうか」


 レオンの顔が途端に曇る。


「何か思い当たる節はあるか? 」


「私の作成したプログラムが上手く動いていないようです。

 ……殿下にもご覧いただきたいので、少しお時間をいただけませんか? 」


 こうして、私はレオンとハンスとともに、いつもの仕事部屋に行く。そこにはすでにパソコンが出されており、パソコンには英語の文字列が一面に映し出されている。私たちが見ている間にも、その文字列は増え続けている。


 レオンは頭を抱えて、困ったように告げた。


「私に分かればいいが……」


 私にも、もちろん分からない。




 ハンスはまた文字列を打ち込むと、パソコンの画面が切り替わった。それは、水族館の自動浄化システムのイラストだった。


「自動浄化システムは水中の不純物を感知して濾過し、酸素濃度や水温を自動で調整しています。

 そのセンサーは働いているのですが、頭脳の部分が働いていないのです」


 パソコンに映し出されたイラストの、コンピュータが積み込まれている部分が赤く点滅をしている。


「昨日の予行運転では上手く動いたのですが、今朝急に駄目になりました。

 現地で確認もしましたが、荒らされた形跡はありません」


「そうか……困ったな」


 レオンは腕を組んで唸った。そして助けを求めるように私を見るが、ハンスが分からないものが私に分かるはずがない。


 ハンスはまたしばらく文字列の並んだプログラムの画面を見ていたが……


「まさか……」


突然閃いたように、キーボードを打ちはじめた。それはもう、目に留まらないほどの速さで。

 静かな室内に、ハンスがキーボードを打つカタカタという音が鳴り響く。そしてハンスがエンターキーを押すと、大量の文字が現れては消えていった。


 ハンスは真剣な表情のまま告げる。


「グルニア帝国から、サイバー攻撃を仕掛けられていました」


 ……え!?


「グルニア帝国の攻撃により、自動浄化システムのプログラムが実行されないようになっていました」


 ハンスの能力は、この世界では桁外れに高いと思っていた。私が魔力のチートなら、ハンスは技術力のチートといったところだ。だが、ハンスによって作られたプログラムを攻撃出来るスキルが、グルニア帝国に存在するのだ。それがなんだか恐ろしく感じた。


「プログラムは修復出来ましたが……

 ……え? 」


 ハンスはパソコンを見て目を大きくする。それで私も思わずパソコンを見て、息を呑んだ。


 今までハンスが文字列を入力していたパソコンには、大きく警告表示が出ていた。そこには、赤い文字でこう書かれていたのだ。



『我が国の領土に、変な建物を作るな。

 グルニア帝国は、ロスノック帝国に取られた領土を取り返すため、何度も立ち上がる』



「もとからあの土地は、我が国の領土であった。それに、変な建物ではなく、水族館だ。

 奴らはどうやら、戦争したくてたまらないらしい」


 前回の敗北により、グルニア帝国は侵攻を諦めたのだと思っていた。だが、それは間違いだったらしい。この地は、いつになったら『平和』になるのだろうか。そして、レオンがこの先も無事でいてくれることを祈るばかりだった。




いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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