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最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました  作者: 湊一桜
最終章

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3. 帝国の新たな発展計画

「悔しいが、よく出来たゲームだ」


 レオンは彼の職務部屋で、ハンスが持ってきたタブレットを触っている。タブレットには、私がかつてハマりにハマっていたあのゲームが映し出されている。

 レオンの隣にはマリウス様がいて、興味津々にゲームに見入っている。そんな二人にとうとう告げた。


「あの……お仕事、しませんか? 」


 レオンはタブレットを持ったまま、ゆっくりと視線を私に移す。そして告げた。


「仕事ならしている」


 は? さっきからずっとゲームをしているのだけど。しかも、レオンは結構本気でやり込んでいて、もうすぐレオンとの戦闘の場面まで来るのだけど。それを見たマリウス様が激怒するかもしれない。


 タブレットから音が漏れる。


『諸悪の根源は、第二王子レオンだ。

 ロスノック帝国軍は第二王子を倒さない限り、幽霊のように出続ける。第二王子は死者すら操るのだ』


『必ず第二王子を必ず討ち取ろう』


 それに対してレオンは突っ込む。


「なんとイラつくゲームだ。私に死者を操る能力などない」


 イラつくのなら、やらなければいいだろう。私は大きなため息をついていた。

 

「レオン様、タブレットの電池というものが無くなるようです」


「分かった、マリウス。それでは充電しよう」


 レオンはぼやき、タブレットに繋いだ充電ケーブルの先を持って雷の魔法を使う。すると、タブレットの電池が満タンになるのだ。なんという急速充電だ。私の故郷にも、こんなに速い急速充電の機械はない。


 そしてレオンはまたゲームに没頭し始める。これではただの、ゲーマーだ。


「ローザ、私はこのゲームを国内に普及しようと思っている」


 レオンはタブレットを見つめたまま、私に驚きの言葉を吐いた。


「ま、待ってください。

 こんなゲームを普及すると、ハンスは国民から呪い殺されてしまいます」


 まさしくそれだ。ゲーム内ではロスノック帝国は悪の帝国。国民がそれを受け入れるとは思えない。


「しかし、ローザ。

 我が国は長年の飢饉により、人々の心は疲れきっている。今我が国に必要なのは、笑いだ」


 こうやって、国民のことを第一に考えるレオンが好きだ。そして、その言葉も理解できる。ただ、いくらなんでもこのゲームを普及させることはないだろう。


「それなら他に代替案はあるか? 」


 私は必死に考えた。この、ハンスの恨みの込められたゲームより、一般的なゲームを普及してはどうだろう。パズルゲームとか、アクションゲームとか、はたまたロスノック帝国に関係のないRPGだとか。


 

 そんななか、


「殿下、お待たせしました」


新たな声が聞こえた。そして開かれた扉の先には、見慣れた緑色のローブを着たハンスが立っている。

 レオンはタブレットを見ながら彼に言う。


「ハンス、来たか。

 君もこのゲームの普及に反対のようだが、なぜだ?

 このゲームは異世界で、ベストセラーというものにも選ばれていただろう」


 そして、攻撃ボタンを連打する。こんなレオンを見て、ハンスは苦笑いをしていた。ハンスが理由を述べなくても、このゲームの普及に反対している理由は明確だ。


 ハンスはレオン様に慌てて告げる。


「そ、そのゲームは確かに私の自信作です」


 その言葉を聞き、不意に私はすごい人と知り合いになってしまったことを悟った。ハンスは若くしてこのゲームのエグゼクティブディレクターだ。つまり、ゲームの責任者だ。通常ならば、なかなかお会い出来ない存在だろう。


 だが、ハンスは続ける。


「ですが、私は代替案を考えました。


 ……水族館なんてどうでしょう」


「水族館? ……それはなんだ? 」


 レオンは深緑の瞳でハンスを見る。するとハンスは、助けを求めるように私を見るのだった。


 水族館。その発想はなかった。そして、この世界にはもちろん水族館なんてものはない。この国を侮辱するゲームを拡めるよりも、水族館を作ったほうが国民のウケもいいのではないか。


「水族館、いいね!私、考えもしなかったよ」


 慌ててハンスに告げる。すると、ハンスはホッと胸を撫で下ろす表情をした。


「だろ。この国に水族館を作れば、絶好の観光スポットにもなる。

 インスタ映えするみたいな洒落た水族館がいいと思う」


「そうだね。ついでにこの世界にもインスタを普及しちゃえば? 」


 なんて答えながらも、インスタを使ったことなんてない陰キャの私。この世界では、ぜひともインスタデビューをしてみたい。


 レオンは仲良く話す私たちをじっと見る。きっとまた、嫉妬されているのだろう。だが、故郷の話を出来るハンスの存在も、なかなか貴重だった。故郷には帰りたくないが、根っから嫌いなわけではないのかもしれない。今さらそう思えたのも、私を受け入れてくれたこの世界の人々のおかげだ。


「レオン様、水族館というものは、ガラス張りの水槽に魚を入れて展示するものです。

 ただ飼育するのではなく、その魚の生態や生きている環境などを、人々に伝えるものです」


 私はレオンに告げる。


「私の故郷では、写真を撮るとお洒落に映るような水族館が流行っていました。

 また、イルカのショーなどの見せ物や、お土産売り場、飲食店も併設しております。


 もしロスノック帝国に水族館を作ることが出来たなら、きっと観光名所になるでしょう」


「この世界は、第三次産業があまり発達していません。

 第一次産業が潤ったのなら、今後は第三次産業を発展させるのがいいかと思います」


 私の言葉にハンスが付け足す。もちろん、日本で生きていた私には、ハンスの言っていることもよく分かる。


 だが、


「半分以上、言っている意味が分からないのだが……」


レオンは難しい顔をして告げる。

 そうか、この国と日本は文化が全然違うから、そこから説明をしないといけないのか。そして、これから忙しくなりそうだ。


 ずっと黙っていたマリウス様が、ようやく口を開く。


「私はこの世のことをよく知っていると思っていました。

 だけど、私たちが知らないことも、たくさんあるのですね」


 そして私を見て告げる。


「ローザ様の住まれていた世界を、私も一目見てみたかったです」


 その言葉を聞いてぞくっとした。私は王族になったから、王族に使えるマリウス様の態度も変わってしまったのだろう。


「ま、マリウス様!

 私は敬われるのには慣れていません。どうか今まで通りの扱いでお願いします」


 頭を下げる私に、マリウス様は告げる。


「……それならば、今まで通りにいたしましょう。


 ローザ、国のために今後も気合い入れて働くよう頼む」


 いや、そう言われたほうがやりやすいが、何も奴隷みたいな扱いを求めているわけではない。

 そして、こんなマリウス様の対応にレオンが口を挟む。


「マリウス。君がローザをぞんざいに扱うようなら、私は容赦なく君を解雇する」


 レオンの気持ちは嬉しいが、私は今まで通りの扱いのほうがやりやすいなんて思ってしまった。


「それでは、『第三次産業』に力を入れるため、帝国立水族館を作る計画を立てましょう」


 マリウス様が目を輝かせて告げるのだった。

 




いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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