28. それぞれの恋の行方
ここまでで第二章となります。
お付き合いいただき、ありがとうございました!
残り十一話で完結です。
魔導士団のみんなの様子が、昨日からおかしい。レオンが絶対に変なことを言ったんだ!
「ローザ、動かなくていいから座っておいて!」
椅子が出され、
「ローザ!お腹を冷やさないようにね」
訓練中だというのに、野菜スープが出される。おかしすぎるこの対応に、私はとうとう聞いていた。
「ちょっと待って。みんな、どうしたの!? 」
気遣ってくれるのは嬉しい。そして、みんなが私を大切にしてくれるのも嬉しい。それだけど、だ。
私の言葉を聞き、近くにいた仲間がごく真顔で教えてくれた。
「妊娠してるかもしれないんでしょ? 」
その瞬間、口に含んだ野菜スープをぶーっと吹き出しそうになった。
……は!? 妊娠!? 何言ってるの!?
真っ赤な顔の私を前に、みんなは口々に告げる。
「殿下から命令が下ったんだよ。ローザを大切にしろって」
「さすがに妊婦に魔法当てるのはね……」
「おまけに殿下、キスマークを見せびらかしていったよ」
ちょっと待って……なんでそうなるの?
もともと、すごく生理不順な私は、そうそう簡単に妊娠する体質ではないと思っている。それに、私の故郷では、妊娠確定は生理が遅れてからだったはず。
「と、とりあえず、レオン様の話はガン無視していいから!」
私は焦りに焦って告げていた。だが、みんなはレオンの命令に逆らえるはずなんてないのだろう。
これは帰ってから、レオンを責めないといけないパターンだ。
真っ赤な顔の私は、ふと訓練施設の隅っこにいる二人を見つけた。いつもは話題の中心にいて、わいわいがやがや騒いでいる二人だ。
「……あれ? 」
私の視線の先にいる二人を見て、みんなは教えてくれた。
「今朝からあの二人、いい雰囲気なのよ」
「リリー、ようやく両思いが叶ったんだね」
その言葉を聞いて、自分のことのように嬉しくなる。何年もハンスを待ち続けたリリーも、ようやく恋を実らせることが出来たのだ。
人の恋愛になんて、興味がなかった。そもそも、友達なんていなかった。それなのに、今の私には大切な友達がいて、友達が嬉しいと私だって嬉しい。私に、こんな感情があるなんて知らなかった。
しばらくすると訓練開始の時間になり、リリーとハンスは仲間のもとへと戻ってくる。
「おめでとう、リリー」
私は満面の笑みでリリーに歩み寄る。リリーは恥ずかしそうに頬を染めて笑う。いつもは元気なリリーの乙女な様子を見て、リリーが可愛いと思った。まさしくギャップ萌えというものだろう。こんな可愛いリリーと両思いになれて、ハンスも幸せだろう。
私は笑顔でリリーを迎えながら何気なく見た右手首に、その跡を見つけてしまった。私のその痣とは違い、細い紐で縛られたようなその痣はまさしく……
「えっ!? しちゃったの!? 」
思わず言ってしまった。するとリリーはさらに赤くなって身を竦める。
恥ずかしいのはよく分かる。私もすごく恥ずかしかったから。だけど、私を散々からかった罰だ。
「えー!!良かったね、リリー!」
私は大きな声を上げ、笑顔で告げていた。
「もう、ハンスと離れられないじゃん!!」
魔導士団のみんなも、その痣に気付き囃し立てる。リリーとハンスの幸せな姿を見て、今日の魔導士団も朝から騒然となっていた。
友達として、リリーが幸せになってくれて本当に嬉しい。これからも私は、ずっとリリーの幸せを祈っている。
この陽キャ集団が苦手だった。だが、今はみんなに混ざってわいわいがやがやする私がいる。
今やリリーに冗談も言うし、他人の恋愛の噂にも積極的に首を突っ込む。私はみんなに囲まれて、色々変わっているのだろう。そして今、最高に幸せだ。
魔導士団の訓練を終え、昼からの王太子妃教育の部屋へと向かう。
ハンスはリリーといちゃいちゃしていたから、そっと置いておいた。ハンスとリリーを見ていたら、なんだかレオンに会いたくなった。不思議だ、私の中にもこんな感情があるなんて。
いつものように扉を開き、笑顔で高貴な挨拶をする。
「ごきげんよう」
部屋には大好きなレオンが待っていて、愛しそうに私に手を伸ばす。
「嫌です。みんなの前で抱きつくなんて、はしたない」
わざとらしく横を向く私。こんな私を見て、ふっと笑うレオン。私が冗談で言っていることも、レオンは分かっている。
「仕方ない。それでは、今夜までとっておくか」
「えっ!? 」
「今夜も寝かさないぞ」
「ちょっと待って!わっ、私はそういう意味で言ったんじゃないですけど!!」
私は顔を真っ赤にする。レオンを思うと胸がきゅんきゅん甘い音を立てる。宮廷内はすっかり平常運転に戻ったが、私はまだまだレオンに狂わされるのだろう。
「魔導士団のみんなに言ったことも、忘れていないですからね!」
「ほう……? 私は真実を告げただけだ」
「も、もう!! レオンの馬鹿ぁ!」
私は顔を真っ赤にして叫んでいた。
重苦しいほどのその愛を受けて、私はとても幸せだ。
第二章終わりです。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
完結まであと少しです!




