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最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました  作者: 湊一桜
第二章

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27. 長年の恋が実った瞬間 (リリーside)

いつもありがとうございます!

 レオン様が訓練施設を去ってから、魔導士団は案の定騒然となった。レオン様とローザの話題でもちきりだ。分かっているが、魔導士団のみんなは、人の恋愛話が大好きだ。とりわけ、デリケートな問題が絡んでくるとなおさらだ。


「ローザはあんなに殿下から逃げていたのに、ちゃっかりしてるね」


「殿下、もはや魔力交換の痣を見せびらかさなかったね」


「レオン様の命令により、あたしたちはローザを労ること。……いいね?」


 あたしはみんなに告げていた。




 こうして、通常通り午前中の訓練を終え、みんなでわいわい食事を食べる。今日は食堂に第二騎士団もおり、あたしたちは大興奮だ。


「見て見て!第二騎士団のアイドル騎士、アイク様がいるよー!」


「うわーッ!!相変わらずかっこいい」


 みんな口々にアイク様を褒め称える。


「リリーはアイク様とレオン様、どっちが好み? 」


 仲間にそう聞かれ、


「んー……アイク様だね。

 レオン様はないなぁ、絶対無理」


 笑って答える。


「レオン様、イケメンだけど変態だから。ローザもあの顔に騙されてるんじゃない?」


 そう。レオン様は魔導士団に来てはローザを追い回すし、キスマークを見せびらかすし。おまけに今日は妊娠の可能性の報告までし始めた。……ないな。

 

 みんなはレオン様の話題で大盛り上がりだ。そしてあたしも大笑いしている。こんなあたしを、斜め前に座ったハンスが怪訝な顔で見ていた。


「リリー、アイク様はどの人だ? 」


 ハンスが興味深そうに聞き、あたしはアイドル騎士を指差していた。その指差す先を、ハンスはすごい勢いで見る。どれだけイケメンなのか気になっているのだろうか。確かにアイク様はイケメンだが、あたしはハンスに恋している。……なんてこと、言えるはずもないが。


 ……そう、あたしは言わないのだが、周りが騒ぎ続ける。みんな、本当に恋愛話が好きなんだから!


「ハンス、いい加減、リリーの気持ちに気付いてあげようよ!」


「リリーはハンスをずっと待ってたんだよ!?」


 みんなはデリカシーもなくそんなことを言い始めるから、


「ちょっと、みんな!! 変なこと言わないでよ!」


あたしは必死に止める。ハンスにバレないようにしているし、今後も告白するつもりはない。ハンスがあたしに興味がないことくらい分かっているから。


 ハンスは


「……え? 」


みんなの言葉に驚いた顔をする。だからあたしは平静を装い、必死で話題を探す。


「何でもない!それよりもハンス、午後から宮廷での仕事、頑張ってね」


「そうだな。だけどその前にリリー、約束したよな。

 話したいことがある」


 もちろんハンスの言葉を忘れてはいない。だが、なんだか不吉な予感がする。ハンスはあたしを呼び出して、あたしの不満な点などをつらつら述べるのかもしれない。今のあたしじゃ、心のキャパを超えてしまうだろう。

 だけどハンスに断ることも出来ず、あたしは頷いていた。





 昼食後、ハンスと城門近くの広場を散歩する。ハンスがグルニア帝国に去る前も、二人でよくここを散歩した。それが昨日のことのように脳裏を過ぎる。


 あたしはここでハンスと散歩をするのが日課だったのだが、いつの間にか魔導士団長になることが決まり、引き継ぎやら会議やらで時間がなくなっていった。それからしばらくして、ハンスはロスノック帝国を去ったのだ。



「懐かしいな、この場所」


 ハンスはしゃがみ込んで、生えているクローバーを摘む。そしてそれを昔のように器用に編み込む。


「忙しい毎日の中で、ここをハンスと散歩するのが心の安らぎだったなあ」


 あの頃を思い出し、ぽつりと告げる。


「今は忙しくないのか? 」


「それなりに忙しいよ、魔導士団長だもん。

 だけど、この仕事にも慣れたから、プライベート優先で楽しくやってるのよ」


「そうか。リリーは相変わらずすごいな」


 ハンスはあの頃のような、優しい声であたしに話す。この声を聞くだけで、顔がにやけてしまう。あたしはこうして、ハンスと隣にいるだけで幸せだ。


「リリーは昔からすごいのに、俺は魔法さえ使えなくなってしまった」


「でも、ハンスにはハンスにしか出来ない特技があるでしょ」


 くすくす笑うあたしに、ハンスはクローバーで編んだ草冠をそっと乗せる。思わず目を開くあたしの前で、ハンスは幸せそうに目を細めて微笑んだ。あの頃と同じハンスの大好きな笑顔だ。


「俺は色々と誤解をしていたようだ。

 あの頃リリーが頻繁に殿下のところに通っていたから……この場所に来なくなったから……

 リリーと殿下がデキていると思っていた」


 その予想外の言葉に、


「えっ!? 」


驚きを隠せない。幸せな気分が、その言葉で一気に吹っ飛んでしまう。


「ちょっと待って……?

 殿下って……レオン様だよね? 」


 恐る恐る聞くと、ハンスは複雑な表情で頷く。


「ごめん、マジでないわ。

 あたしは魔導士団長になるから、魔導士団長の諸用でレオン様のところに行ってただけで……」


 いや、あり得ない。本当にあり得ない。


「変な気を起こしたことは全くないし、レオン様もむしろあたしを女と認識してないし……」


 あたしは必死で否定をしている。疑いが晴れたと分かっても、必死になっている。


「そもそも、あんな変態好きになるはずないよ」


 あたしの言葉に、ハンスはホッとしたように笑った。そんなハンスを見て、あたしは真っ赤になっている。


 まさか……まさか、本当にそんな誤解をしていたのだろうか!?

 ハンス、正気なの!?


「だから俺は、自分の恋が実るはずはないと思って、ロスノック帝国を去った。

 リリーが殿下といちゃつくところなんて、見たくもないから」


 ちょ、ちょっと待って!話についていけないんだけど!!

 と、とりあえず疑いが晴れたことは嬉しいんだけど、それって……ーー


「リリー、愚かな俺を笑ってくれ。

 そして、もう二度とリリーを離さないと誓う」


 この前まで塩対応をされていたのに、急にこんなごく甘対応、聞いてないんだけどっ!!

 そもそも、ハンスだってあたしのことを好きだったの!? あたしとレオン様がデキていると誤解して、ロスノック帝国を去ったの!!?


 もはやパニック状態のあたしは、何も言えず顔を真っ赤にして震えている。こんなあたしを、ハンスは目を細めて愛しそうに見つめる。


「ち、ちゃんとあたしに聞いてくれれば良かったのに!」


 それであたしは、この数年間を無駄にしたのだ。

 ハンスはまっすぐにあたしを見て、微かに頬を染めて告げる。


「それでもリリーは、俺を待っていてくれたんだろう? 」


 もう!みんながハンスに余計なことを吹き込むから!あたしはこの恋をひっそりしまっておこうと思っていたのに。


 パニックを起こしながらも、ハンスの気持ちを知れてとても嬉しい。夢ではないかと思う。


「待ち続けて良かったぁ……」


 あたしは真っ赤な顔で、地面にへなへなと座り込む。そんなあたしの髪を、ハンスはそっと撫でてくれる。


「もう、俺はどこにも行かない。

 だから俺と……魔力交換をして欲しい」


「……え!? 」


 見上げると、ハンスの真剣で優しい顔。あたしの記憶の中よりも成長し、立派に大人になったハンスが見える。


「俺みたいなザコキャラと魔力交換をしても、リリーの足枷になるのは分かっているけど……」


 そんなハンスに、満面の笑みで答えていた。


「もちろん!」


 魔力交換をするなら、ハンスしかいないと思っている。ハンスがどんなにザコキャラでも、ハンスをあたしに縛り付けておく力が欲しい。

 あたしたちは笑い合い、初めてキスを交わしていた。



 

いつも読んでくださって、ありがとうございます。

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