24. 明らかになる真実
ヘルベルト様は、国王陛下の前で酷く項垂れていた。そのしょんぼりした姿は、今までふんぞり返っていたヘルベルト様からは想像も出来ない姿だった。背の高いヘルベルト様だが、今日のヘルベルト様は酷く小さく見える。
そしてヘルベルト様の手には、グルニア帝国で私が付けられたような太い腕輪が巻かれている。恐らく、魔力を使わせない腕輪だろう。私は容疑者に使うような腕輪を、グルニア帝国では付けられていたのだ。
しょんぼりしたヘルベルト様を、近衛騎士団たちが取り囲んでいる。剣こそ向けないが、逃げられないように細心の注意を払っているのが分かる。そしてレオンと私は、その近衛騎士団の後ろに立った。
「揃ったようだな。
……それではヘルベルトよ、これからお前の尋問を開始する。我が息子に対して、私もこんな仕打ちをするのは辛いのだが」
国王陛下は厳しい顔で告げる。
部屋はしーんと静まり返っており、居心地の悪さを感じる。その静寂の中、陛下が再び口を開いた。
「ヘルベルト。昨夜、お前の部屋からグルニア帝国製の機械がいくつか発見された。
主にレオンとローザを攻撃した第一魔導士団と騎士団の者に付けられていた『受信機』と、それを操る『親機』だ。間違いないな」
部屋が静まり返り、ヘルベルト様の返事を待つ。だが、ヘルベルト様は何も話さない。ただ小さくなって、俯くのみだ。
「ローザは、戦場でこの受信機を付けた第一魔導士団の者に捕まり、グルニア帝国へ送られた。間違いないな」
再び沈黙が訪れる。
「その後も幾度となくローザを捕獲しようとし、レオンを攻撃した。間違いないな」
沈黙だ。ヘルベルト様は黙秘を続けるつもりなのだろうか。
陛下はヘルベルト様を厳しくも、辛そうな表情で見る。昨日レオンが見せた表情とよく似ている。
私はレオンを見上げたが、レオンはヘルベルト様を見つめたままだ。だがその表情には、吹っ切れたような冷静さがあった。そしてそのまま、レオン様はそっと私の手を握る。
「私は責めているのではなく、お前の目的が知りたい。どうして味方を……グルニア帝国が探し求めている、強大な魔力のある人間を、敵国に売るようなことをしたのか? 」
陛下は優しくて人間味のある人だと思う。その器の大きさは、一国の王として相応しいものだろう。レオンは両親から愛情をもらったことはないと言っていた。だが恐らく、王子として厳しくしなければならないだけであって、愛情はあったに違いない。それが、私の両親みたいな軽々しい愛情表情でなかっただけだ。
ヘルベルト様はそんな陛下の優しさに甘えているのか、決して口を割ろうとはしなかった。黙っていれば許されると思っているのだろうか。だが、そこは一国の主として、陛下も許すことはないだろう。
しばらく沈黙が続いたあと、陛下は静かに告げた。
「仕方がない。我が子にこんなものを使いたくないが、話さぬなら話させるしかない。
……例のものをヘルベルトに」
陛下は側近に告げ、側近が豪華なグラスに入った液体を差し出した。透明な液体は、魔力交換の時に飲んだ聖酒を思い出させた。あれからそんなに時間は経っていないが、私の周囲は目まぐるしい変化を遂げた。レオンと私の関係も、あの頃とは違うものになっている。
側近はヘルベルト様にグラスを差し出すが、ヘルベルト様は当然飲もうとはしない。そんなヘルベルト様に、陛下は静かに告げた。
「それは『自白薬』だ。それを飲んだ者は、どれだけ自白を拒否しようが、強制的に真実を吐かされる。
私の問いかけに答えられぬようならば、その薬を飲んでもらおう」
騎士たちがヘルベルト様を取り押さえ、自白薬が口に注がれる。ヘルベルト様は必死で拒否しようとするが、とうとうそれを飲んでしまった。
ヘルベルト様と騎士たちの攻防を見て、酷く怖く感じる。陛下は国を守るためにも我が子に手を下さねばならないのは、百も承知だが。
私はぎゅっとレオンを握る手に力を入れ、レオンは私を守るように身を寄せた。隣にいてくれるレオンの存在が、とても心強かった。
自白薬を飲まされたヘルベルト様は、再びがくっと項垂れた。そんなヘルベルト様に、陛下は再び聞く。
「ヘルベルトよ、なぜお前はグルニア帝国の機械を、お前の侍者に埋め込んだのか。
なぜレオンを攻撃させたのか。
そして、なぜローザを捕らえ、グルニア帝国に引き渡そうとしたのか」
しばらくの間を挟んで、ヘルベルト様は抑揚のない低い声で話し始めた。その話を聞き、私は胸が張り裂けそうな気持ちでいっぱいになるのだった。
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