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最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました  作者: 湊一桜
第二章

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15. 愛を知らない王子様

いつもありがとうございます!

 こうして、レオンは私の両親の心をすぐに掴んでしまった。両親は、この上品で丁寧なイケメンが、まさか異世界の王太子だなんて知るはずもない。そして、知られなくてもいい。


獅子(レオン)君は、何かスポーツでもしているのか?」


 興味津々の父親に、


「け、剣道が強いんだよね」


苦し紛れに伝える。それではっとした。レオンは日本人ではない設定なのだから、


「フェンシング!!」


慌ててそう言う。そんな私をレオンはぽかーんと見ていて、私だけが一人で焦っているのだろう。

 そして、両親はレオンがどこか外国の人だと信じて止まないのだ。


 私だけが空回りつつも、始終場は和やかだった。レオンは常に笑顔だし、


獅子(レオン)君は、薔薇(ローザ)にはもったいないわ」


なんて言われる始末。悔しいけど、私だってそう思う。大きくため息をついた時だった。



「とんでもない。私からすれば、ローザほど魅力的な女性は他にいないのです。

 私は、ローザと一緒にいられてとても幸せです」


 レオンが静かに告げる。こんな時なのに、胸がきゅんと甘く鳴る。私はドキドキしながらレオンを見上げる。すると彼は、嬉しげに口角を上げ、優しい瞳で両親を見ている。


 そのまま、レオンは両親に頭を下げて、さらっと告げた。


「私は、ローザのことを心から愛しています。一生ローザを守ると誓います。

 ですから……ローザと結婚させてください」


 まさか、レオンが私の両親なんかに頭を下げるだなんて、思ってもいなかった。レオンは一国の王太子だ。結婚する原田家が頭を下げなければいけないだろう。


「ちょ……ちょっと、レオン……」


 戸惑う私の前で、頭を下げるレオン。そして、驚いてレオンを見る両親。 

 やがて、父親が遠慮がちに聞く。


「が……外国で暮らすのか? 」


 外国というより、異世界だ。


薔薇(ローザ)は、それで納得しているのか?」


 もちろん納得している。というより、日本に戻ってきた今でさえ、私の居場所はロスノック帝国だと感じている。私は、レオンと一緒にロスノック帝国で暮らしたい。


 父親の言葉に頷いていた。

 レオンだけに頭を下げさせてはいけないと思った。私たちは夫婦になるのだから、両親を説得するのも二人でするべきだ。だから私は、しっかりと父親を見て告げた。


「私は、今まで恋人はおろか、友達だっていなかった。ゲームだけが恋人だった。

 レオンは、こんな私を認めてくれて、私の全てを好きになってくれた。

 こんな人、レオン以外に一生現れないと思うの」


 レオンの視線を痛いほど感じる。だが、素直な気持ちを述べる私は、恥ずかしくてレオンを見ることが出来ない。


「私はレオンとともにいたい。一緒添い遂げたいと思ってる」


 沈黙が舞い降りる。父親は深く考えるように俯き、母親はおろおろしている。反対されたとしても、私はロスノック帝国に戻るつもりだ。だけど欲を言えば、レオンとの結婚を認めてもらいたい。レオンもそれを望んで、プライドを捨ててまで頭を下げているのだから。


「そうだな。……獅子(レオン)君は、薔薇(ローザ)には出来すぎた彼氏だ。

 ここで獅子(レオン)君を逃すと、薔薇(ローザ)は一生結婚出来ないかもしれない」


 分かっているが、地味に心が痛い。


獅子(レオン)君、これからも薔薇(ローザ)をよろしくお願いしますね」


 その言葉に、


「ありがとうございます!」


レオンは深々と頭を下げていた。



 

 こんなわけで、私の両親からも結婚の承諾をいただいた。もちろん、反対されても結婚するつもりではいたが。

 頭が軽い私の両親は、何の疑いもなくロスノック帝国の婚姻届にサインをした。これでヘルベルト様だって反対することが出来ないだろう。


 帰りの電車の中で、草餅やら緑茶やらが入ったビニール袋を抱えているレオンを見る。この世界に来てから、普通の人に成り下がっているレオンだが、今日は私の両親に頭まで下げてくれた。


「レオン、ごめんね……」


 謝ることはたくさんある。実家が狭くて汚いこと。余計な土産を持たされたこと。お買い得品を食べさせられたこと。父親が失礼なことを言ったこと。そして、レオンに頭を下げさせたこと。考えれば考えるほど、レオンにとって酷な仕打ちだと分かる。


 それなのに、レオンは甘く優しい目で私を見る。


「ローザの両親に、認めてもらえてホッとしている」


「認めるに決まってるよ」


 だって、レオンは全てにおいて極上なんだもん。なんて言葉が出かかった。代わりに、


「カルチャーショックだったでしょ。辛い思いをさせちゃったね」


遠慮がちに告げる。ここでレオンに両親を全否定されたら……仕方がないけど、心がちくりと痛むな、なんて思った。


 だが、レオンは幸せそうに口元を緩めて告げる。


「ローザは、愛情をたくさんかけられて育ったのか」


「……え? 」


 思わず聞き返すと、その深緑色の瞳で優しげに私を見る。


「私は生まれた時から敬われていたし、父母からも王子として厳しく育てられた。

 だから、一身に愛を受けて育てられたローザを、羨ましく思った」


 正直意外だった。レオンがそんなことを思っているなんて……


「両親が愛情を持って育てたから、ローザみたいな優しくて芯の強い人間になったのだろう」


「そんなことないよ、全然」


 否定しながらも、初めて両親を誇らしく思った。

 思い返せば、私に変な名前を付けたが、それ以外はまともな両親だったかもしれない。私がいじめられた時は学校に相談に行ってくれたし、落ち込んでいる時は話を聞いてくれた。ゲームと仕事しかしないという生活を知っても、そっとしておいてくれた。そんな両親の子に生まれて、私は実は幸せだったのかもしれない。


「国に戻ったら、緑茶と草餅を育てようと思う。

 それを食べて、リリーもたまには故郷を思い出して欲しい」


「草餅は木になるものじゃないんだよ」


 くすくす笑う私に身を寄せ、レオンも幸せそうに笑った。


「ローザ、私たちに子供が出来たら、愛情を持って育てよう。

 草餅も食べさせてやりたいし、たまにはこの世界にも連れてきてあげたい」


「そうだね……」


 電車に揺られながら身を寄せ合い、幸せを噛みしめた。紆余曲折があったが、レオンとならずっと幸せでいられる気がした。





いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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