表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました  作者: 湊一桜
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/78

14. 無礼すぎる私の父母

 こうして私たちは無事に東京に戻り、予定外に私の両親にも会うこととなった。しばらく家族とも疎遠となっていた私だ。私が急にレオンを連れていったら、どんな反応をされるのだろうか。考えるだけでも怖かった。





 私の実家は、東京の外れにある住宅街にあった。東京駅から電車に乗って一時間、辺りはすっかり自然に覆われ、都心とは雰囲気が違っていた。緑に包まれた駅で、私はレオンとともに電車を降りる。そして、久しぶりに帰る実家へと向かった。


 この街にはいい記憶はない。

 名前が変だからと、笑われ馬鹿にされた。それで私は、この地で陰キャ街道まっしぐらになったのだ。道を歩いているうちにも、同級生に会って馬鹿にされないかビクビクしている。


 レオンはこんな私の不安が分かるのか、そっと手を握ってくれる。

 あの頃の私は孤独だったが、今は一人ではないと改めて思う。





 やがて、見慣れた家に辿り着いた。小さな一軒家で、『浜田』という表札が付いている。私は震える手で玄関のチャイムを押した。

 そして、チャイムを押しながら、ふと思った。レオンはきっと、自分をロスノック帝国の王子だと自己紹介するのだろう。そして、国にいる時のような王子様的態度を取るのだろう。ハンスさんに対してだってそうだった。そもそも、レオンがかしこまった態度を取るところなんて見たこともない。

 横柄なレオンを見ると、私の両親だっていい気がしないだろう。そして、怒り始めるかもしれない。もうこの国に帰ってくるとはいえ、レオンが嫌われるのは辛かった。


 だが……私の心配は、全て無用となってしまったのだ。




 しばらくして扉を開けた母親は、


「……薔薇(ローザ)? 」


私を見て驚いた顔をした。そして、隣にいる美男レオンを見て頬を染める。そのままぱたぱたと門まで走り出てきた。


薔薇(ローザ)、急にどうしたの!?

 ずっと連絡だって返してくれなかったのに!」


 そんな母親に、


「ごめん……ちょっとだけ、報告があって……」


私は遠慮がちに伝えていた。そして、語弊に気付いた。私がしようとしていたのは、ちょっとだけの報告ではなく、人生最大の報告だろう。それなのに、色々気にする余り、ちょっとだけだなんて謙遜した言い方になってしまった。


 母親は頬を染めたまま、美男レオンを見る。


「そちらのかたは……?」


恐る恐る聞く母親に、レオンは爽やかな笑顔で答えた。


「ローザさんと交際させていただいている、レオンと申します」


「まぁ!獅子(レオン)さんだなんて……」


 いや、レオンは獅子ではない。勝手に変な字を当てるの、本当にやめて!!

 私は心の中で叫んでいた。そして、レオンがかしこまった態度を取れるのだと驚くばかりだった。





 見慣れた小さなリビングに通されると、父親がソファーの上で寝転んでいた。よれたジャージを着ている。おまけに、リビングはいつものように散らかっている。脱ぎっぱなしの服に、山積みの新聞紙。こんな殺風景をレオンに見られるのが、ひどく恥ずかしい。


 寝転んでいる父親に、真っ赤な顔の母親が言う。


「お父さん!こんなところで寝っ転がってないで!!

 ほら!薔薇(ローザ)の彼氏が来てるんだから!!」


 母親の言葉に飛び上がった父親が、驚きのあまりソファーから落ちる。もう、本当にみっともないからやめて!!


 恐る恐るレオンを見上げるが、案の定目が点だ。予想以上の酷い家族を見て、育ちのいいレオンはついていけないと思っているだろう。その前に、私のことが嫌いになったらどうしよう。悪いことばかり考えてしまう私がいた。



 結局、慌てに慌てた二人は、散らかった部屋の中の小汚いダイニングテーブルに私たちを座らせる。そしてようやく落ち着いた父親が、前の椅子に腰掛けた。母親は慌ててお茶とお菓子を出すが……


「何これ」


 思わず言ってしまう。だって、王子様にこんなものをお出ししたら、失礼すぎるのだ!


 目の前には緑茶と、その辺りのスーパーで買ってきたであろう、草餅が置かれている。草餅のパックには、『お買い得』と書かれたシールまで貼ってあり、それを目の前で開けて皿に盛るのだ。


薔薇(ローザ)、草餅好きだったでしょ」


 母親が言うが、私はさらに固まってしまう。しかも父親は、美味そうだなんて言って、手掴みで食べ始める。

 もう、レオンを見るのさえ怖かった。こんな粗末なものを出すなと怒り始めるのではないか!

 慌てた私は、母親に告げる。


「お母さん!私、駅前の商店街で、高級マカロンやお洒落なケーキでも買ってくるから!!」


 そんな私を、母親はぽかーんと見つめる。いったい、薔薇(ローザ)はどうしてしまったのだろうと思っているのだろう。


 だが……


「それは草餅というのですか?」


レオンが笑顔で聞く。


「私の国には草餅なんてものはないので、ぜひいただきたい」


 ……は!? 食べるの!?

 この、お買い得食品の草餅を食べちゃうの!?


 ぽかーんとする私の前で、レオンは手で草餅を持ち上げた。そしてそっと口に含む。草餅を食べる仕草さえ上品なんですが!!


 草餅を食べたレオンは、目を細めて頬を緩めて告げた。


「とても美味しいです」


 えっ!? マジで!?

 今度は私の目が点になる番だった。


「私の故郷にも、土産として持って帰りたいほどです」


 私はもう、レオンが分からなくなってきた。もしかして、書類にサインをもらうため演技をしているのだろうか。……絶対そうだ!


 このレオンの演技に母親はまんまと引っかかり、


「じゃあ持って行ってよ!」


大量の餅をスーパーのビニール袋に入れ始める。その気持ちは嬉しいけど……実際、レオンはいらないだろう。おまけに、王子様に『お買い得品』を渡すなんてあり得ないだろう。


 続いて緑茶を飲んだレオンは、


「変わった飲み物ですね。これも美味しいです」


だなんて言い始める。そんなわけで、緑茶の葉も大量にもらってしまったのだ。


 父親もなんだか機嫌が良さそうだし、母親なんてレオンを見て頬を染めている。レオンが凄まじいイケメンなのは分かるが、その見え透いた行動はどうにかならないのだろうか。


 しまいには、


薔薇(ローザ)がこんなかっこいい彼氏を捕まえるだなんて、何かの間違いじゃないかしら」


だなんて言い始める始末。それは他でもない私が一番思っている。夢なのだろうか。夢なら醒めないでいて欲しい。


 



いつも読んでくださって、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ