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最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました  作者: 湊一桜
第二章

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9. ゲームの存在がバレてしまった

 懐かしい、一時期よく聞いていた音がする。その音を聞きながら、私は『ロスノック帝国第二王子レオン』と戦っていた……




 目を開けると、私は見慣れた部屋にいた。見慣れた私のワンルームアパートだ。

 小さなベッドに、小さなローテーブル。そして、テレビには、緑色の鎧を着た金髪の男が映っている。彼はテレビの中からこっちを見て、不敵に言い放った。


『貴様みたいなザコ共が、この私に勝てると思っているのか!』





「ローザ。これは何だ?」


 隣にはレオンがいて、目を輝かせてテレビを指差している。はっと我に返った私は、思わず両手を伸ばしてテレビの前に踊り出る。


「みっ、見ちゃだめ!!」


「なぜだ?」


 不服そうなレオン。なんとか身を捩って、私の横からテレビを見ようとしている。その間にもテレビからは打撃音が響き渡り、


『はやく!はやく第二王子レオンに攻撃しなきゃ!!』


 なんて声が溢れてくる。




 これをレオンに見せるのは酷だろう。このゲームの中のレオンは悪役で、彼はきっとショックを受けるだろう。そして、この世界を嫌いになるに違いない。


 私は慌ててテレビの電源を切ろうとするが、目を輝かせたレオンが告げた。


「ローザ!これがゲームというものか!すごく良く出来ている」


 ……え!?


「よし、私が倒してやろう」


 ちょっと待って。なんでそうなるの!?

 

 あたふたしている私の隣で、レオンはすでにゲームにかじり付いている。そして、画面の中の『第二王子レオン』を倒そうと奮闘している。


「物理攻撃をすると、必殺技を喰らうと言っていたな。

 それならば、魔法攻撃だ」


「あーッ!!光属性の魔法を使っちゃいけないよ!『第二王子レオン』に吸収されるよ!」


「なぜだ。私は光属性の魔法を吸収しないが」


「とにかく駄目なの!!……レオンの弱点ってなんだろう」


 私はパニックを起こしながらも、コントローラーを握るレオンの隣に座る。


「私の弱点は、ローザだ」


「……意味分かんないし!!」


 

 レオンはゲームに釘付けになってしまったが、ここでもたもたしている場合ではないことは分かっている。いきなりこの世界に放り込まれてしまったが、ハンスを見つけなければいけない。そして、ハンスに関して何のヒントも持っていない。


「分かった。魔力交換を使えばいいのか」


「だ、だから!ゲームには魔力交換なんてないよ!!」


 意味不明なレオンを必死に止めたが……なんと、魔力ゲージが貯まった主人公の右手首に、紐で結ばれたような痣が出現する。そして、必殺技コマンドが出た。その名も『最強交換魔法』だ。


 な……何これ!私はこんな隠し技、知らなかったんだけど!!


 必殺技を選ぶと、画面が派手に爆発する。そして、あれだけ倒せなかった『第二王子レオン』が、膝をついて倒れる。



『……くっ……』


 画面の中の『第二王子レオン』が、苦しそうに言葉を吐き出した。


『この私を打ち負かすなど、なかなかやるな……。

 ……だが、我がロスノック帝国は負けない。ロスノック帝国が全世界を支配するのだ!!』


 そう言って、『第二王子レオン』は息耐えた。なんと、『第二王子レオン』は、自らの手によって倒されてしまったのだ。




 レオンは画面を見ながら、悩ましげに告げる。


「悪意を感じる」


 やっぱりそう思うよね。いくらゲームだとはこんなものを見せてしまった自分を酷く憎む。


「だから、見ないほうがいいって言ったのに……」


 私は意気消沈して答え、パソコンを開いた。そして、ハンスの手がかりを調べようと思うのだが……


 隣から、ずーんと沈んだ重い空気を感じる。さっきまで夢中でゲームをしていたレオンが、今さらショックを感じているようだ。


「私はもしかして、すごく悪い男だったのか……

 あれは私を映し出す鏡だったのか……」


「そんなことないよ。

 ただのゲームでしょ?」


 私は軽い調子で答えるが、心の中で必死にごめんなさいと謝った。あんなものを見てしまったら、当然ショックを受けるに決まっている。異世界で、自分が極悪人として描かれていたら……



 私は考えないふりをして、レオンの隣でパソコンで検索をする。ゆっくりしている暇もない。残された時間は三日間。とりあえず、『ハンス』という名前を検索するのだ。

 だが、意外にも『ハンス』という名前の人はたくさんいるらしい。日本中にも外国人の『ハンス』はいるのに、これが全世界となったらどうなってしまうのだろう。私は頭を抱えていた。



 悩む私の隣で、まだゲームをしているレオン。どうやら、ゲームにハマってしまったらしい。『第二王子レオン』を倒したら、物語はいよいよ終盤になってくる。

 テレビを見つめながら、彼は困ったように言った。


「この世界に来てから、私は魔力がなくなってしまったようだが……」


「そういえば、私も……」


 色々と考えることが多すぎて、魔力についてはすっかり忘れていた。だが、私の体にはいつものみなぎるような魔力が全く感じられない。右手首にある魔力交換の痣は残っているのだが。この痣のみが、私が魔力を有していた証明のようで、なんだか切ない。


「この世界には、魔力というものが存在しないのか」


 きっと、そうだ。だから私はこの世界で平凡な人間として暮らしていたわけだし、今も平凡な人間に戻ってしまったのだろう。


「お互いの魔力を感じることも出来ない。

 ……私たちは、この世界で離れないようにしておこう」


「そうだね。二人揃ってロスノック帝国に帰らなきゃいけないから」


 このままだと、ハンスは見つからないかもしれない。リリーの期待には応えられないかもしれない。だが、ロスノック帝国には必ず帰らなきゃいけないと思う。レオンはロスノック帝国の王太子だし……私も、ロスノック帝国が初めての安心出来る居場所だから。




 ロスノック帝国のことをずっと考えていた私は、検索欄に無意識のうちに『ロスノック帝国』と打ち込んでいた。

 『ハンス ロスノック帝国』というキーワードで検索がかかる。すると、見慣れたゲームのパッケージの横に、とある文字が並んでいるのを発見した。


『エグゼクティブディレクター 反須』




「ハンスだ……」


 私は思わずこぼしていた。不思議そうに私を見るレオンに、笑顔で告げていた。


「このゲームのエグゼクティブディレクターが、ハンスなんだ……」


「何を言っているんだ」


 レオンはまだ、この大発見に気付いていないようで、怪訝な顔で私を見る。


「てっきり私はゲームの世界に迷い込んだと思ってた。でも違う。このゲームは、あの世界を知っているハンスが作ったんだよ!


 出てくる街も、キャラクターも、レオンたちの世界そのもの。ハンスは、レオンたちの世界をゲームにしたんだ!!」


「それでは、私を最悪の敵役にしたのも、ハンスのせいか」


 レオンはまだ恨みがあるらしい。ムッとしたまま告げる。そんな様子に笑ってしまう。


「ハンスが勝手にやっただけで、私はレオンがいい人だって知ってるよ」


 不貞腐れたレオンのその黒い髪に、そっと触れる。レオンは少し頬を染めて私を見る。

 いつものブロンドヘアのレオンは、いかにも王子様といった感じでかっこいい。だが、この黒髪のレオンも大好きだ。なんだか幼くて少年みたいで……


「ローザ、好きだ」


 こんな時なのに、レオンは私に擦り寄ってくる。私を狂わせる、その甘い低い声で優しく囁く。


「私は夢ではないかと思っている。

 ローザの故郷に来ていること、そして、ローザが私に気を許し、普通の男性として接してくれることを」


「私だって同じだよ」


 私はレオンに身を委ねる。そして、甘いキスを交わす。出会った時よりも、気持ちを確かめた日よりも、昨日よりも、さらに好きになっている。こうやって毎日好きになっていくのだろう。


 陰キャだと思って、人にも心を開かなかった。人のことを信じなかった。そんな私を救ってくれたのは、レオンだった。



 



いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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