1. 婚約者として正式にデビュー
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
第二章では、ローザとレオンの仲がぐっと縮まります。
引き続きよろしくお願いいたします。
「ようやく、私は君を皆に紹介出来る」
レオン様は私の手を取り、ちゅっと軽いキスをする。こんなに甘くて紳士な対応をされると、身が持たない。その前に、レオン様が美しすぎるのですが!
レオン様と私の縁談は、すごい勢いで進んでいった。ついこの前プロポーズされたと思ったのに、すぐに国王陛下に紹介され、そして今日は婚約式だ。
今日、私は皆の前で紹介され、晴れてレオン様の婚約者となる。結婚するだなんて実感はないのだが、レオン様は結婚を急ぎたいらしい。それは、グルニア帝国から狙われている私のためでもあったのだ。
王族と結婚する際には、様々な儀式やしきたりがあることは予想出来た。そして当然それに従うつもりではあるが……今日の私は、見せ物感が半端ない。正装したレオン様は眩しいくらいにかっこいいのに、私は仮装大賞ではないかと思ってしまう。まさに馬子にも衣装とはこのことだ。
それなのに、
「ローザ、綺麗だ」
レオン様はうっとりと私を眺めて告げる。
「こんなにも綺麗なローザを、誰にも見せたくない」
それは私のせりふだ。
白い衣装のレオン様はいつも以上に照り輝いていて、うっとり眺めたくなってしまうほどだ。だが、こんな美男が隣にいるなんて、申し訳ない気持ちにさえなる。
それでも、
「ローザ様、お綺麗ですよ」
侍女たちは言う。もちろん、お世辞だと分かっている。心の中では私を見て、残念に思っているのかもしれない。
だけど、こんなイケメンと結婚するのも、私が選んだ道だ。この罰ゲームみたいな婚約式だって、甘んじて受けよう。
広間の扉が開かれる。大勢の人々に拍手で迎えられながら、私はレオン様と手を組んで歩く。そして、国王陛下に報告をするのだ。
盛大な拍手が鳴り止み、今度は静まり返る広間で、陛下は私たちをしっかりと見た。レオン様によく似た、優しげな表情の陛下を見ると、少しだけ安心する。
そしてレオン様は、静かに、だけどしっかりと告げる。
「私、レオン・ヴォルム・キュラリー・フォン・ロスノックは、浜田薔薇と婚約することを報告いたします」
これもなかなかの見せ物だと感じる。高貴で長すぎるレオン様の名のあとに、浜田薔薇だ。場違い感が甚だしい。だけど、誰も突っ込まないのだ。
陛下は立ち上がり、拍手をする。そして、広間の中は割れんばかりの喝采に満ち溢れる。
受け入れてもらえたのは嬉しいし、レオン様と結婚出来るのも嬉しい。だけど、不安だってもちろんある。ごく普通の家庭で育ち、みんなに虐げられて育ってきた私が、いきなり王族に嫁ぐなんて……
喝采が湧き起こるなか、音楽が流れ始める。婚約宣言が終わり、ダンスパーティーの始まりだ。レオン様と手を取り、練習に練習を重ねたダンスを踊る。
最近の私は、相変わらず忙しくしていた。午前中は魔導士団に行き、午後は王太子妃教育を受ける。農業改革が落ち着いたと思ったら、次は王太子妃教育だ。
異国の平民の私は、マリウス様に散々馬鹿にされながら教育を受けた。レオン様に恥をかかせるわけにはいかないと思い、必死で食らいついた。もちろん、王太子妃教育には、魔力によるチートなんて存在しない。だから私は、血の滲むような努力をした。……多分、受験よりも頑張った。
レオン様も私に愛想を尽かすことなく付き合ってくれた。一晩中踊り続けたこともあったし、徹夜でこの国の歴史を覚えたりもした。足も靴擦れだらけだ。その甲斐があって、私は何とかダンスを踊れている。
レオン様と手を取り合ってダンスを踊ると、わあっと歓声が上がる。そして、ため息が漏れる。
「ローザ様はお綺麗なだけでなく、所作もとても美しいわ」
「何という素敵なダンスなのでしょう!」
「美しいお二人は、絵になるわ」
その言葉が本心であると信じたい。誰も私を嘲笑っていないと信じたい。
レオン様が私の手を握ったまま、笑顔で告げる。
「ローザ、とても上手だよ」
せめてレオン様は本心であると信じたい。……そうだよね。だって初めて踊った時なんて、あまりの酷さに顔が引き攣っていたから。そして、ローザらしくていいよ、だなんて慰めにもならない言葉をかけられたから。
そういうレオン様の足も痣だらけだ。私が踏み付けたり蹴ったりしたからだ。
「私のために頑張ってくれて、ありがとう」
レオン様が私を抱きかかえ、ふわりと宙を舞う。純白のドレスがさらりと靡き、会場はため息に包まれる。そして、一組また一組と、ダンスに加わっていくのだ。
三曲ほど踊り、ようやく場を離れることが出来た私は、痛む足に密かに聖属性の魔法をかける。それで靴擦れも回復する。そんな私を見て、
「ローザ!」
リリーが駆け寄った。
リリーは可愛らしいピンク色のドレスを着ている。第二魔導士団長として、この婚約式にも呼ばれたのだろう。
リリーは笑顔で私に言う。
「おめでとう!」
「ありがとう」
「ローザ、すごく綺麗よ。おまけに、どんな酷いダンスを踊るのかと思ったけど、普通に上手じゃん」
その言葉にホッとした。私、見た目もダンスも、想像よりもずっとマシなのかもしれない。ダンスに関しては、頑張って本当に良かった。
ダンスを終えてようやく緊張の糸が切れた私は、テーブルの上を見る。テーブルには、色とりどりのサラダやハム、ローストビーフなんかが置かれている。フルーツだってあるようだ。
いつの間にかロスノック帝国の食糧難はすっかり解決し、豊作によって国も潤っている。それがとても嬉しかった。
私の視線に気付いたレオン様が
「ローザ、取ってやろう。どれが食べたい?」
甘い声で聞く。だから私は焦って答えた。
「そんな!王太子様に取らせる訳にはいきません。
自分で取れます」
「私は君の婚約者だろう?
婚約者が喜んで世話を焼くのは、当然のことだ」
その気持ちは嬉しいが、やっぱりいけないと思う。
そんな間にも、レオン様は私が見ていたサラダやらハムやらを次々皿に取り、フォークで私の口に運んでくれる。
「じっ、自分で食べられます!」
抵抗するのに、無理矢理口の中に放り込まれた。
こんな様子を人々は驚いて見ており、私は恥ずかしくなって真っ赤になって俯くのだった。
レオン様の過保護には程がある。だが、こんなにも愛されて大切にされて、私は嬉しい。
いつも読んでくださって、ありがとうございます!




