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最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました  作者: 湊一桜
第一章

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38. あなたと結婚出来るなんて、嬉しいです

「レオン様、ローザ、よくぞご無事で帰って来られました」


 宮廷に戻るなり、泣き腫らしたような目のマリウス様が駆け寄ってくる。そして、しかとレオン様を抱きしめる。


「ちょっと待て。マリウス、キャラが違わないか?」


 レオン様は本気で困惑しているようだ。


「私は、男に抱きつかれても嬉しくない」


 レオン様はそんなキツいことを言うが、本当は嬉しいのだろう。マリウス様を笑顔で抱きしめ返しているから。


 それにしても、私だって意外だ。人に対して興味がなさそうなマリウス様が、こんなにも感情を剥き出しにしてレオン様を待っているなんて。


「マリウスは、私がいなくなると雇い主がいなくなるから困るのだろう?」


「そ、そんなことはないです!!」


 冗談とも本気とも言えないようなレオン様の言葉に、マリウス様は顔を真っ赤にして答えた。レオン様は冗談のように言うが、マリウス様は本気なのだろう。本気でレオン様のことを心配されていたのだ。


「ローザが連れ去られてから、レオン様は一人で行っちゃうんだもん!

 あたしだって一緒に行こうと思ったのに!」


 マリウス様と一緒にいたリリーが、不貞腐れたように言う。リリーのその気持ちもとても嬉しい。だが、レオン様はリリーまで危険に巻き込みたくなかったのだろう。


「どっちにしても、ローザが戻ってきてくれて良かったよ」


 そんなリリーと私は、きつく抱擁を交わした。こうやってみんなのもとに帰って来られて、とても嬉しい。私もまだまだ頑張らなきゃ。




「レオン様。ローザを捕らえたのは、第一魔導士団の者でした。我らはこの者を牢に入れ尋問しましたが、何も得られませんでした」


 そうなんだ。あの時一瞬黄緑色のローブが見えたのは、間違いではなかったのか。

 だけど、第一魔導士団は一体何のために私をグルニア帝国に差し出したのだろう。


 レオン様は黙ってマリウス様の話を聞いている。複雑な表情を浮かべて。


「この者は何も話しませんでしたが、首元に小さな機械が埋め込まれていました。それを引き抜いたら彼は正気に戻り、自分のしたことを覚えていないようでした」


 ……え? つまりそれは、操られていたということだろうか。

 だが、一体誰に……


「機械はもちろん、グルニア制のものでした。

 誰が、どのようにして、何の目的で機械を仕込んだのかは、未だ分かっていません。

 ですから、今後も注意をしなければならないでしょう」


 その話を聞いて、身が震えた。ロスノック帝国内にいれば安全だと思っていたが、この地にまでグルニア帝国の手が伸びていただなんて。

 そしてドミニクは、今回の一件で私を諦めてくれただろうか。


「それならば、私はローザとの結婚を急ぐとしよう」


 レオン様が私を見て告げる。そのまっすぐな瞳にどきんとしてしまったのは、言うまでもない。


「ローザが私の妻となれば、国を挙げて守らなくてはならなくなる」


「そうですね、王太子殿下」


 マリウス様がわざとらしく告げる。そして私は、


「……王太子殿下?」


思わず聞いてしまった。

 マリウス様からは、レオン様が王太子に内定予定とは聞いたが、決定ではないと思っていたのだ。それに、レオン様からも何も聞いていない。


「第一魔導士団から反逆者が出たため、ヘルベルト様は王太子の資格を失いました。

 そのため、次期国王はレオン様です」


「えェッ!??」


 私は素っ頓狂な声を上げていた。

 第二王子の恋人というだけで荷が重かったのに、お、王太子夫人になってしまうの!?


 私、陰キャなのに。目立つことは嫌いだし、敵を作りたくないのに!!


「レオン様と結婚すれば、国は総力でローザを守ります。

 だから早々に婚約内定を行い、年内には結婚式を執り行います」


 ちょ、ちょっと待って!展開が早すぎてついていけないのですが!!


 震え慄く私を見て、


「嫌なのか、ローザ」


甘ったるい声でレオン様が言う。


「嫌じゃない……嫌じゃないですけど……」


 でも、心の準備が出来ていない!!

 つい数日前、気持ちを伝え合ったばかりなのに!


「嫌でないのなら、いいだろう」


 そういう問題でもない気がする。


「おめでとう、ローザ!!」


 リリーが満面の笑みで祝福してくれ、ありがとうと言うしかなかった。






 こういうわけで、どうやら私はレオン様と結婚する流れらしい。


 レオン様とこれからも一緒にいられると思うと嬉しい。だが、どうなってしまうのだろうという不安もある。

 きっと、ヘルベルト様をはじめとする第一王子派には妬まれるのだろう。そして、幼稚な嫌がらせも続くかもしれない。昔みたいに、みんなから無視して笑われるかもしれない。



 晴れた空の下、レオン様と中庭を散歩する。レオン様は、私の歩幅に合わせてゆっくり歩き、階段に差し掛かると手を持ってくれる。とても紳士的で優しいレオン様。私は、そんなレオン様を見上げた。


 陽の光を浴びて照り輝くブロンドの髪に、深緑の切れ長の瞳。鼻はすっと高い。まるでCGのようなイケメンだ。このイケメンの妻になるのだ。


「ローザ」


 レオン様は静かに私の名前を呼ぶ。大嫌いだった、その名前を。

 そして見上げると、レオン様の綺麗な瞳と視線がぶつかった。


「本当は、もっと時間をかけて君を口説き落としたかった。

 君が心身共に私を欲してから、求婚しようと思っていた」


 低くて甘い心地よい声。その声で囁かれると、体が甘く音を立てる。


「だが、君をこれ以上危険に晒しておくわけにはいかない」


 レオン様は跪き、私の右手をそっと手に取る。そして、右手首の痣に唇を付けた。


「私はローザを一生守る。何があっても添い遂げる。

 私の妻になると、確かに大変なこともあるだろう。嫉妬や敵視されることもあるかもしれない。

 だが、私は必ず君を守る。君の味方だ。


 だから、私と結婚してくれ」


 こうやって直接言われると、大丈夫だと思ってしまう。レオン様が守ってくれると思うと、安堵の気持ちが押し寄せてくる。むしろ、嫌がらせには慣れているから大丈夫かもしれない。

 私は、こんなにもレオン様に大切にされて幸せだ。そしてこれからも、ずっとレオン様とともにいたい。


「もちろんです」


 そう告げた私を、レオン様はぎゅっと抱きしめる。二度と離さないとでも言うように。そして久しぶりに、甘い甘い口付けを交わした。




「そういえば私、第三夫人ではないですよね?」


 ふと不安に思ってレオン様に聞く。すると、レオン様は露骨に嫌そうな顔で私を見た。


「……第三夫人って何だ?」


「ドミニクが、私を第三夫人にするって……」


 レオン様は私の話を聞き、さらに青ざめた。この反応を見る限り、心配には及ばないようだ。


「私が愛するのは、ローザだけだ」


 レオン様は再び、私をぎゅっと抱きしめる。私はその腕の中で、ずっと幸せを噛み締めていた。

 





いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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