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最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました  作者: 湊一桜
第一章

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36. はじめての色仕掛け

◆◆◆◆◆


 

 うぅ……頭が痛い。何が起こったの?



 私は目を開いた。そして、目の前の光景に倒れそうになった。


 私は、見たことのある王座の前にいた。立派なその椅子には、二度と会いたくない男が座っている。

 小太り、モサモサの髪、だらしなく開いた口元。思い出すだけで吐き気がする。この人は、グルニア帝国の第一王子、ドミニクだ。


 私はなぜここにいるのだろう。戦場でみんなと戦っていて……誰かに殴られたのだ。考えたくもないが、まさか第一魔導士団!?


 そんな私の思考は、


「苦しゅうない」


ドミニクの上擦った声で掻き消された。



 ドミニクはその半月形のエロ目を歪ませて私を見る。その目だけで、こいつは私の裸を想像していると思ってしまうほど、気味が悪い。


「ようやく戻ってきたな、伝説の魔導士よ」


 ドミニクは気持ち悪い笑みを浮かべて私に言う。


「お前がロスノック帝国に捕まって、ようやく私はお前を取り戻すことが出来た。

 お前と結婚してやると約束するから、グルニア軍に戻ってこい」


 私は、気持ち悪いこの王子を見ながら考えた。絶対にグルニア帝国には戻りたくない。そして、レオン様も私を必死で探しているだろう。

 魔力交換をすると、互いの居場所も知ることが出来る。だが今、私はレオン様の気を全然感じないのだ。


 ……というのも、手錠をかけられているから。以前捕まった時は『手錠みたいなブレスレット』だったが、今回は本当に手錠だ。黒い金属が、頑丈な鎖で繋がれているのだ。

 そして、この手錠も間違いなく、魔力を外に出さない作りになっているのだろう。



「殿下は、なぜ私が欲しいのですか?」


 私は、ドミニクをしっかり見て聞く。

 以前会った時は怯えて話も出来なかった。だが、ロスノック帝国に行って、私は変わった。レオン様が、リリーが、魔導士団のみんなが私を必要としてくれるから、私は負けるわけにはいかない。そして、みんなの存在が私の自信になっている。


 ドミニクは、相変わらず気持ち悪い笑いを浮かべて告げた。


「お前は『伝説の魔導士』だからだ。

 我が国には言い伝えがある。この地に伝説の魔導士が現れた時、国は幸せを手に入れることが出来る、と」


 国が幸せになるのか。確かに、この国は今以上に不幸にはならないだろう。だが、そんな訳のわからない言い伝えなんて、私には関係ない。私はとにかく、ロスノック帝国に帰らなきゃ。私の帰る場所は、ここではない。


 両手を繋ぐ手錠を見つめる。

 この手錠さえ外すことが出来たら……レオン様がいなくても、魔法を使うことだって出来る!



 ドミニクは気持ち悪い。近付きたくもない。もっというと、話すのさえ嫌だ。

 だけど私は、賭けに出たのだ。




「殿下。殿下と結婚出来るだなんて、私はとても幸せです」


 その場に跪いて、頭を垂れる。ドミニクはエロ目で私を見て、気分良さげに笑う。


「お前は、第三夫人ではなく、第二夫人にしてやろう」


 絶対嫌だ。だけど私は精一杯の演技をする。


「嬉しゅうございます」


 そのまま、さらに頭を下げる。


「殿下の第二夫人になれるだなんて、私は世界一の幸せ者でございます」


 少し言い過ぎだろうか。だが、この馬鹿をその気にさせるには、少々やりすぎくらいがいいだろう。


「私は、ロスノック帝国にて酷い扱いを受けました。牢屋に閉じ込められて、ろくな食事もいただくことが出来ませんでした」


 それは紛れもなく、グルニア帝国での扱いだ。ロスノック帝国を批判するのは心苦しいが、これも全部手錠を外してもらうためだ。


 だが、ドミニクはそこまで愚かでもないようだ。エロ目で私を見たまま、気持ち悪い声で聞く。


「僕の聞いた情報と違うようだな。

 僕は、君が第二王子から寵愛を受けていると聞いている」


 レオン様を思うと胸が苦しい。早く会いたい。そして、その情報はどこから流れたのだろうか。


 レオン様が大好きだが、私は心を鬼にして続ける。


「表向きは、でございます。

 第二王子は王太子になりたい。それに、私を利用して、魔力の高い子供を作りたがっているのです」


「そうか。私と一緒だな」


 ドミニクは笑う。心の中で、こいつサイテーだとぼやいた。


「グルニア帝国には、魔法が使える者が少ないからな。君が僕との子供を産めば、王族だって強力な魔力を持つことが出来る。そのために、君は来たのだろう?」


「左様でございます。

 ですから私は、殿下のお側にいたいのです」


 私は上目遣いでドミニクを見る。たいして可愛くもない陰キャの私だが、精一杯の演技だ。

 そして、なんとドミニクは頬を染めて私を見ているではないか!予想以上にいい感じだ!


 私は悲痛な顔をして、手錠で繋がった両手を持ち上げた。


「私は殿下を愛したいです。殿下に触れたい。

 ……でも、この鎖のせいで愛せないのです」


「駄目だ」


 ピシャリと言い放つドミニクに、私は負けなかった。


「魔力を持つものを抱けば、この世のものとは思えない世界が待ち構えているようです。

 この鎖で繋がれたままの私を抱いても、殿下はその世界を味わえません」


 我ながら、なんてことを言っているのだろう。万が一このままされてしまったら、私は立ち直れないだろう。

 

 ドミニクは気持ち悪いねっとりとした目で私を見る。そしてしばらく考えたのち、げへへへと笑いそうな声で告げたのだ。


「分かった。お前を解放しよう。そして、僕に尽くせ。

 だが、お前は危険だ。城の者が見ている前で、私に尽くせ」


 サイテーだ、この男。そして、欲に負けた自分を後悔するといい。


 私はドミニクの家来に剣を向けられたまま、手錠を外される。その瞬間、身体中に魔力がみなぎるのが分かった。だけどそれを解放せず、最善の時を待つ。ただ、レオン様の魔力だけは必死に探した。そしてその魔力は意外にも近いところ……そう、すぐ上に感じるのだ。

 レオン様はやっぱり、私を助けに来てくれているんだ!!


 レオン様、私はここです!私はロスノック帝国に帰りたいです!!






いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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