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最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました  作者: 湊一桜
第一章

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34. 豊作のち進軍

 それから、ヘルベルト様の幼稚な攻撃は相変わらず続いた。それでも私は毎日野菜を食べ、元気に過ごしている。この、束の間の平穏を惜しむように。


 ロスノック帝国では日照不足が解消し、魔力を持つ作物は驚異的スピードで育ち始めた。農家は嬉しい悲鳴を上げ、同盟国にも信じられない量を輸出した。そのおかげでロスノック帝国の財政は、一気に潤った。

 また、余った野菜で家畜も育て始め、食卓に肉が並ぶ日も近いようだ。


 ロスノック帝国の日照不足を解消したレオン様は、国王から賞賛され、国民からも感謝された。こうやって、レオン様は国王と国民の心を掴んでしまったのだ。

 マリウス様からこっそり聞いた話だと、レオン様が王太子に内定しているらしい。とても嬉しい話だが……私は、レオン様と一緒にいても大丈夫なのだろうか。





 今日も私はヘルベルト様の嫌がらせを華麗に跳ね返し、リリーに大笑いされた。


「第一王子、クソだわ」


 リリーは笑いながら言う。確かにヘルベルト様はクソだ。そして、私に嫌がらせは効き目がないと分かったはずなのに、いつまで続けるのだろう。


 正直、味方がいるからいつでも強くいられた。昔のように孤独だったら、私はこの幼稚な攻撃にさえ屈していたかもしれない。


「本当に、レオン様と血の繋がった兄弟だなんて思えない」


 そうだよね……ヘルベルト様とレオン様は、正反対だと思う。そしてあの日戦場で、レオン様に拾われて良かったと心から思う。あの時は、こんなに甘い毎日が待っているだなんて、思ってもいなかった。


「それで結局、ローザはレオン様と結婚するんだよね?」

 

「結婚!?それ、本当に何も言われていないんだけど!!」


 私が咄嗟にそう言った時だった。





 城の鐘という鐘が、大きな音を立てて鳴り響く。その鐘の音は、城壁に跳ね返り何重にもなって響き渡る。鳥が飛び立ち、人々がざわめき始める。その中で、何が起こっているか分からない私は、驚いて空を見上げた。


 晴れた青空の下、鳴り続く鐘と、城内を急ぎ足で走り回る人々。なんだか嫌な予感がする。これって……


「グルニア帝国が攻めてきたんだわ!

 急いで出撃の準備をしなきゃ!!」


 リリーの声に大きく頷いていた。




 私は、訓練施設へ走るリリーの後を追う。その間にも、走っている人と何度もすれ違った。黄緑色のローブの魔導士も、緑色の鎧の騎士だって。皆、急に訪れた戦いを受け入れ、準備を始めている。


 私は緑色の帽子を被り、盾を持つ。そして、ポシェットには野菜で作った回復薬を入れた。


 いつの間にか鐘は鳴り止み、静寂の中に人々の行き交う音が聞こえる。いつもワイワイやっている第二魔導士団のみんなも、冗談を言う人なんていない。背筋をピンと伸ばして、魔導士団長であるリリーの指示を待つ。


 私も仲間と整列しながら、恐怖で震えていた。

 私は二度戦場に行った。その戦場で、激しい魔法がぶつかり合うのを見た。倒れる人だって見た。きっと、命を落とした人だっているだろう。私だって、死ぬかもしれない。

 だけど、レオン様と生きようと約束をした。私はその約束を胸に、生き抜いてみせる。


「みんな!第二魔導士団は、ここで指導者であるロスノック帝国第二王子レオン様を待ちます」


 リリーが敬語で話す。リリーが敬語を使うなんて、ただ事ではないことが明白だ。そんなリリーの言葉を、普段は無駄話ばかりする団員が黙って聞く。


「あたしたちは、みんな揃って第二魔導士団です。誰一人欠けてはいけません。

 だから、みんな!友を犠牲にしない!あたしたちは、みんなで生き抜きます!!」


 第二魔導士団が、胸に手を当てて敬礼する。私もそれに倣う。怖いけど、みんながいれば大丈夫!!




 そんななか、訓練施設の扉が開かれ、眩しい光が差し込む。その光を背にして、ブロンドの髪を輝かせたレオン様が現れた。初めて会った時のように緑色の鎧を着て、腰には剣を差している。そして、レオン様の後ろには、第二騎士団の騎士たちが列を成していた。


「皆、よろしく頼む。

 私たちは必ず、勝利を掴む」


 その勇ましい姿を見て、こんな時なのにドキドキする。それと同時に不安になる。


「私は、第二騎士団とともに前方にいる。

 第二魔導士団は、後方から支援を頼む」


 本当は、レオン様と共にいたい。レオン様がいれば、何だって出来る気がする。でも、私は第二魔導士団の者だ。第二魔導士団に下された命令に従うのみだ。


 レオン様が訓練施設から出る直前、視線がぶつかった。こんな時でさえ、レオン様は私を気にしてくれている。私は、レオン様に愛されて幸せだ。




 このまま、私たちはレオン様を先頭に、戦場へ向けて行進する。城を出て城下町に出ると、道の脇には市民がずらっと並んでいる。そして、殿下万歳の声が湧き起こる。


「今回もまた最前線だよ」


 歩きながらリリーがぼやいた。


「ヘルベルト様は第一魔導士団がローザにやられてから、怖くて最前線には行かないんだ」


 なんという情けない王子だろう。それでいて、王太子の座を狙っているのだろうか。レオン様を見習って欲しい。


「この戦いに勝ったら、絶対第二騎士団と飲み会やろうね」


「アイドル騎士、アイク様のためにも頑張る!」


 みんなはすごいと思う。こんな時でさえ、アイク様の話をしているのだから。私は、正直怖くてビクビクしている。だけど、こうやって逃げ出さないのも、魔導士団のみんなのおかげだろう。私はこの国に来て、心身ともに強くなった。


 さあ、決戦の時だ。怖いけど、ロスノック帝国を散々痛めつけたグルニア帝国を、許さないんだから!







いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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