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最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました  作者: 湊一桜
第一章

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30. 王子様の魔力で目を覚ます

 右手が温かい。右手から、少しずつ力が湧いてくる。その力は凍っていた左手を溶かし、足へ向かって進んでいく。

 活動を停止していた頭にも、力が巡っていく。優しくて温かくて心地よい、大好きなこの力が……ーー




 眩しい光が顔に当たり、ふと目を開いた。目に飛び込んできたのは、いつもの私の部屋。クリーム色の家具に、大きなソファー。私、眠っていたんだ。

  

 慌てて身を起こすと、ベッドサイドでレオン様が眠っていた。そのあまりにも綺麗な顔に釘付けになってしまう。そしてレオン様の横に置かれたテーブルには、空のグラスが山々と積まれている。レオン様は眠っているのに、私の右手をしっかりと掴んでおり、そこからは少しずつ魔力が私の体に入っているのが分かる。

 そんなレオン様はいつになく消耗しており、もう僅かな魔力しか残っていない。私は慌ててレオン様の手を振り解いた。


 レオン様は少し目を開け、私を見る。そして嬉しそうに微笑んでまた眠ってしまう。レオン様はどうしてしまったのだろうか。明らかに具合が悪そうだ。


 そんななか、


「レオン様、野菜ジュースをお持ちしました。

 今回のジュースは、農園で採れた野菜をうんと圧縮しております。おかげですごくまずいかもですが」


 グラスを手に、マリウス様が部屋に駆け込んでくる。そしてマリウス様は、私を見て驚いた顔をする。


「ローザ!起きたのか!」


「はい!」


 それでマリウス様は、私が眠っている間に何があったのかを教えてくれた。私は魔力を切らして眠っている間、三日間もレオン様が魔力を送り続けてくれたのだ。そのため、私の魔力は結構回復している。だが、次はレオン様が危ないのだ。


「一度魔力が底を尽きると、相当回復するまでは目が覚めないようだな。

 特にローザは、魔力容量が大きすぎるから」


 マリウス様がぼやく。


「回復させても目が覚めない人がほとんどだから、ローザは運が良かったのだろう」


 これも全部、レオン様のおかげだ。レオン様が私に魔力を送り続けてくれたから、私はこうして目を覚ますことが出来た。第二王子の身でありながら、三日間も私に魔力を送り続けたレオン様を思うと、身が引き裂かれそうな思いがする。そして、レオン様にはやく元気になっていただきたい。

 魔力交換によって相手から魔力を奪うことだって出来るのに、レオン様は絶対にしない。だから、次は私自ら魔力を送るしか出来ないのだ。


 マリウス様が忙しそうに部屋から出ていった後、私はマリウス様の持ってきた野菜ジュースを飲んだ。野菜の旨みというより、苦味がぎゅっと濃縮された、お世辞にも美味しいとはいえないジュースだった。レオン様は、こんなものを大量に飲んだなんて……


 だが、飲んだ瞬間体に力が湧いてくる。私はレオン様の右手首の痣に触れ、みなぎるその力をそっとレオン様に注いだ。

 青白かったレオン様の顔色が、少しずつピンク色になってくる。


 レオン様、ありがとうございます。

 私はこのご恩を、一生忘れません……


 ……大好きです。




「ローザ」


 眠そうに顔を上げるレオン様に、私はぎゅっとしがみついていた。いつもはレオン様が私に抱きつくのに、今日は立場が逆だ。


 レオン様は少し目を開き、私の髪を撫でる。


「良かった……」


 喘ぎ喘ぎレオン様が言葉を紡ぐ。


「……大好きだ、ローザ」


「……えっ!? 」


 がばっと身を起こす私と、自分が言った言葉すら理解していないようなレオン様。レオン様の魔力が回復したとはいえ、体力だって限界のようだ。


「れっ、レオン様!!私は元気ですから、このベッドで眠ってください!」


 慌ててベッドから退こうとするが、レオン様は目を閉じたまま告げた。


「それなら……一緒に眠ろう。

 私はローザから離れたくない」


 ええッ!!? そのセリフ、破壊力抜群なんですけど!!


 私はどぎまぎしながらも、ぐったりしているレオン様をベッドに引き上げる。レオン様は目を閉じたまま、ぎゅっと私に身を寄せてきた。私は緊張で固まりつつも、レオン様に手を回す。レオン様の体は見た目以上に引き締まってていて硬くて、それでいて温かい。男の人ってこんななんだ……


 レオン様は子供のように私の胸元に顔を埋め、すやすやと眠っている。私はドキドキしながらも、ずっとレオン様を抱きしめていた。



 レオン様は、私のことを大好きだと言った。陰キャで、恋愛経験ゼロで、もちろん誰からも好かれたことのない私のことを。

 その言葉、信じてもいいのかな。






いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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