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最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました  作者: 湊一桜
第一章

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25. いつの間にか、陽キャ集団に馴染んでいた

「今日は戦闘実践をしましょー!」


 朝早く、リリーの元気な声が響いた。

 私はいつものように第二魔導士団の訓練施設にいる。そして、すっかり馴染んでしまった仲間と、今日も訓練をする。


 リリーはみんなの前に立ち、相変わらず軽いノリで話し続ける。だが、意外にも真剣な内容を話すのだ。


「前の戦いの時、みんな思ったよね?魔法を使うには、魔力を込めてから発動するまでのタイムラグがある。

 魔法を使うまでの間に攻撃されたら終わりってこと」


 そうなのか。私は一度も実戦経験がなく、魔法を使って戦うイメージが湧かない。ただ覚えているのは、上空で激しくぶつかり合う魔法だけだった。


「だから、実戦の時は交互に魔法を使ってたよね?

 でも、焦ると十分に魔力が込められず、弱い攻撃になっちゃうよ。

 あと、大切なことは?」


「防御すること」


「そう!」


 答えた魔導士に、リリーは満足そうに笑いかける。


「防御役の魔導士は、攻撃役の魔導士まで含めて、大きなバリアを張るの」


 そう言ってリリーは、わざとらしく手を大きく動かした。リリーの前には赤くて透明な魔法の壁が出現する。


 私ははじめ、このリリーのやり方が不安だった。リリー曰く、友達とわちゃわちゃする魔導士団だからだ。いかにも弱そうで、真面目にやっていないようにさえ思えた。

 だが、陽キャだらけの第二魔導士団には、このやり方が合っているのだと最近思った。魔導士たちの仲は極めて良く、信頼関係が成り立っている。戦場に行っても、みんなはきっと仲間を投げ捨てないだろう。


「二対二に分かれて、やってみましょー!」


 私は魔力は高いが、魔法を使いこなしたりするのはまだまだだ。実戦経験だってない。だから、魔力の高さに満足せず、上を目指していこうと頑張っている。そして、レオン様に頼られるような魔導士になりたいと思った。


 レオン様を思うと顔が真っ赤になる。そして今日も会えるのを楽しみにしている。


 他ごとを考えていた私は、見事に相手の呪文に吹っ飛ばされた。


「ローザ、大丈夫!?」


 慌てて駆け寄る仲間に、


「大丈夫!ぼーっとしてて!」


笑顔で答える。


「もう、ローザってば、また殿下のこと考えてたんでしょ!? 」


「そんなんじゃないって!」


 なんて言いながらも、私の頭の中はレオン様のことでいっぱいなのだと思い知る。レオン様は狂ったように私に執着するが、関係は何も前進していない。きっと、ずっとこのままなのだろう。だけど、レオン様が隣にいてくれればそれでいい、なんて思ってしまうのだった。




 訓練を終え、昼食もいつものように魔導士団の仲間と食べる。このわいわいキャピキャピが苦手だったが、すっかり馴染んでしまった私がいた。


「あーッ!イケメン騎士のアイク様が来たよ!」


「今日もかっこいいねー!!」


 ざわつく仲間たちを見て、私も笑っていた。確かにアイクはかっこいいが、私はもっぱらレオン様だ。


「ねえねえ、ローザは?殿下ってどうなの!?」


「一緒に住んでるの?」


 興味津々のみんなに、


「……本当に、そんなこと全然ないから!!」


私は真っ赤な顔で告げていた。


 どうやら魔導士団のみんなは、私とレオン様が恋人同士だと本気で思っているらしい。確かにレオン様の頭のネジは外れ気味だが、超えてはいけない線は超えていない。それどころか、私がからかわれている可能性すらある。私がそうみんなに言っても、みんなは断固として信じてくれないのだ。


 私はこうやってレオン様に狂わされているのだが……


「第二王子に特別扱いされているとか、うざいんだけど」


 思わぬ言葉が降りかかり、私は顔を上げた。

 私の前には黄緑色のローブを着た、第一魔導士団の集団がいる。彼女たちは嘲笑いの表情を浮かべて、私を見ている。


「あんた『伝説の魔導士』なんだって?

 何様のつもり?」


「ただの陰キャじゃん」


 私は調子に乗っていたのかもしれない。私は、彼女たちの言う通り、ただの陰キャだから。あまりに周りが優しいから、そのことをすっかり忘れていた。

 私はやっぱり、この集団にいてはいけないんだ……


 だが、私の暗い気持ちは、


「何言ってんの?」


私を庇うように前に立ち塞がる、深緑のローブ集団によってかき消された。

 私の前にはリリーをはじめとする第二魔導士団のみんながいて、一斉に私を守ってくれている。


「あなたたち、笑っていられるのも今のうちよ!」


「ローザを悪く言う人なんて、許さないんだから!!」



 私はずっと孤独だった。みんなから嘲笑われ、馬鹿にされてきた。だけど今は違うのだと改めて思う。

 今は、こうも私を大切に思ってくれている人に囲まれている。


 第一魔導士団の女性は、吐き捨てるように私たちに告げる。


「次期国王はヘルベルト様よ。第二王子に付いていても、意味なんてないわ」


「あたしたちは、レオン様が国王になるから付いているわけではないの」


 リリーは馬鹿にするように吐き捨てる。


「あなたたちのそういうしたたかなところ、大嫌い」


 それが決定的だった。黄緑色のローブの魔導士たちは、私たちを睨んで去っていった。この陽キャ集団には、口では勝てないと思ったのだろう。そして、争いに巻き込まれたくない私は内心ドキドキしていたが……


「もう!本ッ当に嫌な人たちね!」


ぷんぷん怒るリリーや、


「ローザは全属性の魔法を使えるんだから、特別に決まってるじゃん!」


なんて、私のチート能力さえ認めてくれる仲間に救われたのは言うまでもない。


「みんな、ありがとう!!」


 私は笑顔で頭を下げる。仲間がいて、こんなにも嬉しいと思ったことはなかった。


「何言ってんの。ローザが言われ放題で、私たちもムカついてんだから!」


 みんなは、レオン様がするように私の頭をわしゃわしゃ撫でる。やられ放題の私は、仲間に囲まれて幸せを噛み締めていた。




 食堂を出ても、みんなの怒りは収まらないらしい。


「私たちからすると、ヘルベルト様に付いているほうが不思議だわ。

 ヘルベルト様ってすごく性格悪そうだもん」


「万が一レオン様が王太子になったら、彼女たちどうするんだろう」


 口々に第一魔導士団や第一王子のことを罵るが、正直もうそろそろクールダウンして欲しいと思ってしまう。散々悪口を言われてきた私は、悪口を聞くと萎縮してしまうのだ。たとえ私の味方だとしても。


 そんななか、


「……あれ?」


リリーが遥か彼方の空を眺めて目を細めた。


「どうしたの?」


 思わず聞くと、リリーは目の上に手をかざし、目を細める。


「見間違いかなぁ。

 ……雲の中に、きらっと光る何かがあった気がするんだけど……」


 私もリリーの視線の先を辿るが、やはり何も見えない。相変わらず厚い雲に覆われて、空はおろか雲しか見えないのだ。


「本当に嫌になっちゃう。

 毎日雨か曇りばっかりで」



 皆がこの雨や曇りは、ただの天候のせいだとばかり思っていたのだ。

 私だって当然、疑うことすらしなかったのだ。






いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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