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最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました  作者: 湊一桜
第一章

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24. 魔法の種が出来ました

 それからしばらく時間が経った。



 私は相変わらず、魔導士団に農業改革にと忙しくしている。朝早く農園にて魔力を与え、午前中は魔導士団で訓練をする。魔導士団の仲間と昼食を食べ、昼からはレオン様たちと種の開発をした。そして夕方に再び農園に行き、農作物に魔力を与えた。

 広い農園に魔力を与えるのはまだまだ消耗するが、魔力交換のおかげなのか、意外にも元気に過ごしている。


 宮廷の農園では、安定して野菜が採れるようになってきた。これも、多くの人々が農園の管理に携わっているからだろう。私が勝手に始めたことなのに、こうも皆が協力してくれて、嬉しい気持ちでいっぱいだった。


 そして、魔力を持つ種も、ようやく完成した。レオン様と私が二人で種に魔力を注入し、それが国中へと運ばれていった。一粒の種に注入する魔力は微々たるものだが、国中に配る種の量は想像を超えていた。まさしく塵も積もれば山となる、だ。私は魔力を消耗しながらも、充実した日々を過ごしていた。


 それはレオン様だって然りである。

 レオン様の魔力容量は、どうやら私よりもはるかに少ないらしい。というより、私はやはり並外れた魔力の持ち主らしい。レオン様の魔力が減ると直に私に分かるため、最近は少しずつレオン様に魔力を分け与えていた。


「いつもすまない、ローザ」


 レオン様の痣に触れ、魔力を分け与える私に、彼は申し訳なさそうに言う。


「私も、もう少し強かったら良かったのだが……」


 むしろ、魔法の使い方はレオン様のほうがずっと格上だ。何しろ経験値が違うから。だが、レオン様はあの少ない魔力容量で、よくもあんなに強力な魔法を使えるのだと驚くばかりだ。


「謝らないでください、レオン様」


 私は笑顔で告げる。


「私はレオン様と魔力交換をして良かったと、心から思います。

 レオン様のお役に立てて、嬉しいです」


 私は、レオン様が迫ってくる時や弄んでくる時は素直になれない。何しろ、恋愛の経験値が低くてあたふたしてしまうから。だが、こうやってレオン様が落ち込んでいる時は、素直に寄り添うことが出来る。レオン様と一緒にいると、私はここにいていいのだと思う。ようやく、存在価値を見つけることが出来たのだ。


 レオン様は切なげに笑い、ぎゅっと私を抱き寄せる。不意にその体に触れ、ドキドキが止まらない。


「れ、レオン様!駄目です!!」


 あたふたして告げるが、レオン様はぎゅっと私を抱きしめたまま答える。


「駄目じゃない」


 そんな声で言わないで。そうやって私を、甘やかさないで。ますます離れられなくなってしまうから。

 日に日にレオン様が甘くなっていくのと同じく、日に日にレオン様がいないと駄目になっていく。私はどこまで堕ちていくのだろうか。




◆◆◆◆◆




「宮廷の農園も全て魔法の種に置き換わりましたし、今後は余計な世話は一切いらないでしょう」


 マリウス様の言葉に、ほっと胸を撫で下ろす。私は最後の農作業を終え、滲んだ汗を拭った。


 今日は農園の植え替えのため、朝から大忙しだった。広大な農作物を魔法で一気に引き抜き、魔法で土を耕して、そして種は一つずつ手で植えた。


 ここのところ種への魔力注入で疲れていたが、今日は一段と消耗した。隣にいるレオン様だって、いつものポーカーフェイスすら出来ずにぐったりだ。緊急招集されたリリーなんかは、作業の途中からベンチで死んだように眠っていた。


 だが、皆のおかげで無事植え替えは完了した。魔法の種から育つ農作業は、日照不足でも立派に育つ力を宿していた。そのため、日々の水やりと草抜きさえすれば、余計な魔力を使うことはなくなったのだ。


 これできっと、ロスノック帝国の食糧難も解消されるだろう。だが、まだまだ種は行き渡っていないし、『魔法の土』の出荷だってある。私たちはもう少し忙しい日々が続くことになるのだ。



 土で汚れたタオルで汗を拭きながら、レオン様は嬉しそうに農地を見る。その顔は魔力消耗によりげっそりしていたが、やり切ったような表情をしている。

 

「ローザのおかげで、国が明るくなりそうだ。

 ありがとう、ローザ」


 礼を言われるようなことはしていない。農園の世話は、暇だった私が勝手にやり始めたことだった。私一人の手ではここまで大きな改革は出来なかっただろうし、何よりレオン様が手伝ってくれたことが大きい。


「私こそ、ありがとうございます」


 レオン様には感謝をしてもしきれない。

 戦場に投げ捨てられた私を拾ってくれた。宮廷で、人間らしい扱いをしてくれた。魔導士団にも入れてくれたし、農園の世話だって手伝ってくれた。

 ロスノック帝国で私が手に入れた幸せは、どれもこれもレオン様のおかげなのだと改めて思う。

 私はこのまま、この地でずっとレオン様と暮らしたい。


 レオン様はふっと笑って私の頭を撫でる。私はそんなレオン様を見上げて、満面の笑みを浮かべていた。

 こうして私とレオン様は、いつの間にか固い信頼関係で結ばれていた。それは、魔力交換をしたという事実以上の信頼関係だった。



「うーん、よく寝た!……って、農作業は!?」


 ようやく回復したリリーが、がばっと身を起こす。そして、綺麗に畝が作られ種が植えられた農園を見て、驚いた顔をする。


「ご、ごめんね、ローザ!あたし、寝ちゃってた!!」


「ううん、リリーも手伝ってくれてありがとう」


 そう言いながらも、私はレオン様にまだ撫で回されている。リリーが頬を染めるものだから、レオン様からばっと離れようとした。だが、私の行動パターンを覚えてしまったレオン様は、それを許してくれない。私が離れる前に、がばっと抱きしめられる。


「ちょ、ちょっと!やめてください!暑いです!!」


 苦し紛れにそう吐くが、レオン様は離してくれない。むしろ、私が慌てれば慌てるほど、その溺愛はエスカレートするのだった。

 リリーは真っ赤な顔を両手で押さえながら、慌てたように言う。


「ローザ!レオン様はいつからそんな風になってしまったの!?」


 私も甚だ疑問だ。レオン様に会ってからしばらくは、至って紳士的な対応をされていたからだ。きっと、魔力交換をしたくらいから、レオン様の頭のネジは外れ始めた。

 だが、レオン様の頭のネジが外れ始めたのと同じくらいから、私はレオン様に心を許すようになっていた。

 

 レオン様は私を抱きしめたまま、リリーに言う。


「私は至って普通だが」


 いや、どう考えても普通ではない。だけどレオン様の執着があまりにも酷いから、もう諦めることにしている。ただ、いつまで経ってもドキドキはするものだが。


「魔導士団の人たちがローザに変な気を持たぬよう、私は継続的に見せつけているだけだ」


「……誰も持ちませんよ」


 リリーはため息混じりに告げていた。




 レオン様と優しい仲間に囲まれて、私は人生で一番幸せだった。そして、このまま穏やかな日が続くのだと思っていた。


 騒ぐ私たちを、建物の陰から見ている人がいるなんて、気付きもしなかった。

 ロスノック帝国にいる人は皆味方なのだと、勝手に思ってしまっていた。



 



いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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