18. 陽キャに認められています
散々脱線したが、ようやく第二魔導士団の訓練が始まるらしい。ドキドキしながらも、私はすでにこの明るくてフレンドリーな雰囲気にやられていた。私の最も苦手としている雰囲気だ。
私は目立たないように隅でポツンとしたいのに、リリーが許してくれない。私のローブを掴んだまま、皆の前に立って指示を出す。
「まずは基礎練から!
ローザもやってるよね?魔力を的に当てるやつ!」
もちろんやっている。初日は魔力を大暴走させて、見ていた人たちを呆然とさせたものだ。もちろん、今の私は魔力をコントロール出来るし、あんなに目立つことはしないようにしたい。
魔導士たちは順番に並び、次々に魔力を的に当てていく。さすが魔導士団だけあって、外す人なんて一人もいない。
私の前にいる女性が、冗談っぽく私に言う。
「ローザって『伝説の魔導士』なんでしょ?こんな練習、余裕だよね?」
「そ、そんなことないです!!」
謙遜して答えたが、
「ローザ!第二魔導士団のコンセプトは、友達とわちゃわちゃ魔導士団よ。
年齢経験関係なく、敬語禁止だから!」
少し離れたところにいるリリーに言われる。
大丈夫なのか、この魔導士団は。命に関わる仕事なのではないのか。それなのに、友達とわちゃわちゃ魔導士団だなんて……
その、あまりに陽キャの発想にぶっ倒れてしまいそうになった。どうやら私は想像以上に、場違いな場所に来てしまったらしい。
こうやって魔導士団に入ったことを後悔しながらも、容赦なく私の順番はやってくる。みんなの視線をひしひしと感じ、ここは無難に済ませようと思う。派手なことはもちろんやらないし、極力目立たないでおきたい……
的を狙って構えた。そして、私は氷の魔法を使う。的の中央がピシッと音を立てて凍った。なんとも地味で普通の魔法だ。ホッと胸を撫で下ろした時……
まだ構えたままの指先から、不意に閃光が迸る。それはまっすぐな眩いレーザービームのように、スパッと的の中央を抉った。
周りがざわざわし始める。私は言うことを聞かない指先を握りしめて呆然としていた。
「私じゃない……」
うわごとのように呟く。
「私……あんなこと、してない……」
あんなに派手な魔法、使うはずがない。だって私は、誰よりも地味に過ごしたいから。あれは絶対にレオン様のせいだ。私がちっぽけな魔力しか使わないから、レオン様が遠隔操作でやらかしたのだ!!
レオン様を思うと、顔が真っ赤になってしまった。それを必死で隠そうとするのに、
「ローザの相手って、やっぱり殿下なの!?」
「殿下って光属性だよね!? 」
また騒ぎが起こり始める。……本当に、やめて欲しい!!
結局、地味に地味にと思っていたが、地味にはなれなかった。私の魔力は、魔力交換により想像以上に強くなっていた。この莫大な魔力により、レオン様の遠隔操作がなくてもそのうちボロが出ただろう。少しでも本気を出すと、火事やら大爆発が起きてしまいそうだった。
おまけに、私みたいに全ての属性の魔法を使える人は、本当にいないらしい。それだけで注目の的になってしまったのだ。
それでも、現時点では私を僻んだり陥れる人はいないらしく、
「ローザ、もう帰っちゃうの?」
帰り際に、みんなから引き止められた。
午後からはレオン様と農地改革だ、なんて言うはずもなかったのだが……
「ローザは、この後レオン様と農作業するんでしょ?」
笑顔のリリーにバラされた。
みんなの前でレオン様の話を出すのはやめて欲しい。目立ちたくないのだから。私はまたレオン様の話題でからかわれるのかと思ったが……
「そういえば、ローザ!野菜の栽培に成功したんだよね!!」
「昨日昼食に野菜が出て、感動したよ」
口々に言われる。
「野菜、美味しかったよ!」
「ローザ、ありがとう!!」
ちょっと待って。私、なんでこんなに感謝されているのだろう。私はこの国への恩返しのつもりで野菜を育てただけであって、感謝の言葉なんて望んでもいなかった。……ただの私の自己満足だったのに!
ぽかーんとする私に、笑顔のリリーが告げる。
「みんな、ローザのことが大好きなんだよ」
それが本当であって欲しい。私だって……いつかはみんなみたいに、魔導士団の中で笑い合える存在になりたい、なんて思ってしまうのだった。
魔導士団の訓練施設を出て宮廷に入る。足早に歩きながらも、魔導士団での出来事を思い返した。
陽キャのお祭り騒ぎの場である魔導士団は、私の一番苦手とする場所だった。レオン様との関係もからかわれたし、始終私はビクついていた。
だが、私の魔力は本物だったし、みんなからも認めてもらえた。私はどうやら、このまま魔導士団にいてもいいらしい。
苦手な陽キャの集まりなのに、歓迎されて嬉しかった。でも……でも、レオン様には言っておかなきゃ。遠隔操作で魔法を繰り出すのは、絶対にやめていただきたいと!!
レオン様のことを考えると、胸がきゅんきゅん音を立てる。レオン様に会いたいと思ってしまう。レオン様は私のこのローブ姿を見て、なんて言ってくださるかな。いけないと分かっているのに、私はどんどんのめり込んでいる。
レオン様の魔力を強く感じる扉の前で、私は深呼吸した。そして、浮かれている気持ちを鎮める。冷静に、冷静にと自分に言い聞かせていると、不意に扉ががちゃりと開いた。扉の向こうにはいつもの笑顔のレオン様がいて、
「ローザ、お帰り」
私に両腕を伸ばす。
「君が来るのを、ずっと待っていた」
伸ばされたその腕に、引き寄せられるように飛び込んでいた。そしてレオン様は、私を離さないとでもいうようにぎゅっと抱きしめる。
「やっと私のもとに帰ってきた」
甘く切なげに告げられて、遠隔操作された怒りなんて吹っ飛んでしまう。私はレオン様の温かい体温と頑強な体に包まれて、レオン様といられる喜びを噛み締めた。
こうやって私は、どんどんレオン様にのめり込んでいくのだった。
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