表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/78

18. 陽キャに認められています

 散々脱線したが、ようやく第二魔導士団の訓練が始まるらしい。ドキドキしながらも、私はすでにこの明るくてフレンドリーな雰囲気にやられていた。私の最も苦手としている雰囲気だ。

 私は目立たないように隅でポツンとしたいのに、リリーが許してくれない。私のローブを掴んだまま、皆の前に立って指示を出す。


「まずは基礎練から!

 ローザもやってるよね?魔力を的に当てるやつ!」


 もちろんやっている。初日は魔力を大暴走させて、見ていた人たちを呆然とさせたものだ。もちろん、今の私は魔力をコントロール出来るし、あんなに目立つことはしないようにしたい。


 魔導士たちは順番に並び、次々に魔力を的に当てていく。さすが魔導士団だけあって、外す人なんて一人もいない。


 私の前にいる女性が、冗談っぽく私に言う。


「ローザって『伝説の魔導士』なんでしょ?こんな練習、余裕だよね?」


「そ、そんなことないです!!」


 謙遜して答えたが、


「ローザ!第二魔導士団のコンセプトは、友達とわちゃわちゃ魔導士団よ。

 年齢経験関係なく、敬語禁止だから!」


少し離れたところにいるリリーに言われる。


 大丈夫なのか、この魔導士団は。命に関わる仕事なのではないのか。それなのに、友達とわちゃわちゃ魔導士団だなんて……

 その、あまりに陽キャの発想にぶっ倒れてしまいそうになった。どうやら私は想像以上に、場違いな場所に来てしまったらしい。



 こうやって魔導士団に入ったことを後悔しながらも、容赦なく私の順番はやってくる。みんなの視線をひしひしと感じ、ここは無難に済ませようと思う。派手なことはもちろんやらないし、極力目立たないでおきたい……


 的を狙って構えた。そして、私は氷の魔法を使う。的の中央がピシッと音を立てて凍った。なんとも地味で普通の魔法だ。ホッと胸を撫で下ろした時……

 まだ構えたままの指先から、不意に閃光が迸る。それはまっすぐな眩いレーザービームのように、スパッと的の中央を抉った。


 周りがざわざわし始める。私は言うことを聞かない指先を握りしめて呆然としていた。


「私じゃない……」


 うわごとのように呟く。


「私……あんなこと、してない……」


 あんなに派手な魔法、使うはずがない。だって私は、誰よりも地味に過ごしたいから。あれは絶対にレオン様のせいだ。私がちっぽけな魔力しか使わないから、レオン様が遠隔操作でやらかしたのだ!!


 レオン様を思うと、顔が真っ赤になってしまった。それを必死で隠そうとするのに、


「ローザの相手って、やっぱり殿下なの!?」


「殿下って光属性だよね!? 」


また騒ぎが起こり始める。……本当に、やめて欲しい!!




 結局、地味に地味にと思っていたが、地味にはなれなかった。私の魔力は、魔力交換により想像以上に強くなっていた。この莫大な魔力により、レオン様の遠隔操作がなくてもそのうちボロが出ただろう。少しでも本気を出すと、火事やら大爆発が起きてしまいそうだった。

 おまけに、私みたいに全ての属性の魔法を使える人は、本当にいないらしい。それだけで注目の的になってしまったのだ。


 それでも、現時点では私を僻んだり陥れる人はいないらしく、


「ローザ、もう帰っちゃうの?」


帰り際に、みんなから引き止められた。

 午後からはレオン様と農地改革だ、なんて言うはずもなかったのだが……


「ローザは、この後レオン様と農作業するんでしょ?」


 笑顔のリリーにバラされた。

 みんなの前でレオン様の話を出すのはやめて欲しい。目立ちたくないのだから。私はまたレオン様の話題でからかわれるのかと思ったが……


「そういえば、ローザ!野菜の栽培に成功したんだよね!!」


「昨日昼食に野菜が出て、感動したよ」


口々に言われる。


「野菜、美味しかったよ!」


「ローザ、ありがとう!!」


 ちょっと待って。私、なんでこんなに感謝されているのだろう。私はこの国への恩返しのつもりで野菜を育てただけであって、感謝の言葉なんて望んでもいなかった。……ただの私の自己満足だったのに!

 

 ぽかーんとする私に、笑顔のリリーが告げる。


「みんな、ローザのことが大好きなんだよ」


 それが本当であって欲しい。私だって……いつかはみんなみたいに、魔導士団の中で笑い合える存在になりたい、なんて思ってしまうのだった。





 魔導士団の訓練施設を出て宮廷に入る。足早に歩きながらも、魔導士団での出来事を思い返した。


 陽キャのお祭り騒ぎの場である魔導士団は、私の一番苦手とする場所だった。レオン様との関係もからかわれたし、始終私はビクついていた。

 だが、私の魔力は本物だったし、みんなからも認めてもらえた。私はどうやら、このまま魔導士団にいてもいいらしい。

 苦手な陽キャの集まりなのに、歓迎されて嬉しかった。でも……でも、レオン様には言っておかなきゃ。遠隔操作で魔法を繰り出すのは、絶対にやめていただきたいと!!


 レオン様のことを考えると、胸がきゅんきゅん音を立てる。レオン様に会いたいと思ってしまう。レオン様は私のこのローブ姿を見て、なんて言ってくださるかな。いけないと分かっているのに、私はどんどんのめり込んでいる。



 レオン様の魔力を強く感じる扉の前で、私は深呼吸した。そして、浮かれている気持ちを鎮める。冷静に、冷静にと自分に言い聞かせていると、不意に扉ががちゃりと開いた。扉の向こうにはいつもの笑顔のレオン様がいて、


「ローザ、お帰り」


私に両腕を伸ばす。


「君が来るのを、ずっと待っていた」


 伸ばされたその腕に、引き寄せられるように飛び込んでいた。そしてレオン様は、私を離さないとでもいうようにぎゅっと抱きしめる。


「やっと私のもとに帰ってきた」


 甘く切なげに告げられて、遠隔操作された怒りなんて吹っ飛んでしまう。私はレオン様の温かい体温と頑強な体に包まれて、レオン様といられる喜びを噛み締めた。

 こうやって私は、どんどんレオン様にのめり込んでいくのだった。

 




いつも読んでくださって、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ