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転生阻止の魔法少女  作者: 反七夕のプリンス
電脳怪談の遊戯少女
8/20

2-PROLOGUE

 それは満月の綺麗な、深夜の事だった。


 一人の男が、オンラインゲームに興じていた。

 彼は30代にもなって恋人が出来ていない。夜の店に行く金も無かった為、未だに童貞。度重なる失敗で会社を転々とし、果てはフリーターに堕ちてしまった身だ。

 彼の人生は不幸続きだった。小学時代から多大な被虐(いじめ)を経験しており、それが高校まで続いた。周りに味方などいなかった。親もまた彼を認めず、罵声を浴びせ続けた。社会人になってようやく親から解放され、一度は死を望んだものの、結局死を恐れて生き続けている。

 彼にはオンラインゲームしか無かった。そこだけが、唯一の安らぎの場所。他の者の言う温泉のようなものと言えた。


 その夜はオンラインゲームのサービス終了日だった。彼が最もプレイしていたオンラインゲームの中で、彼ともう一人、同じギルドの唯一残ったメンバーが同じ場所で『その時』を待っていた。

 そして、『その時』は訪れた。


「ん?」

 不意に、男は違和感を感じた。全身に、いや周りの全てに。


 視界に彼のPCは無かった。有るのは青い、青い空。

 男は震えた。自分は確かに室内にいたはずだ、と。PCが前にあるはずだ、と。しかし目の前に広がるのは、青8、雲2と言った所の晴れ空だった。

 男が起き上がろうとすると、何やら下で音がする。

 それは草の音だった。

「おいっ……何だ、こりゃ?」

 彼はさらに、暖かい空気に包まれているのを感じた。そして起き上がった彼の目の前には。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「おい……こりゃ何なんだ?」

 男が漏らす。しかしここで、また違和感が男に生じた。

 いつもならこんな美麗な声ではない。覇気が微塵も感じられない、ダサい声の持ち主。そう自負している彼の声は、しかしアニメのようなイケメンの声になっていた。それも、とても聞き覚えのある声。


 そこで彼は気付いた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 彼の記憶が正しければ、ここは推奨レベル200の『猛竜の草原』。草原でありながら、強いモンスターの代名詞たるドラゴンが埋め尽くす、いわば『最後の草原』。

 強い武器を揃えた彼でも、ここには苦戦していた。今の自分の装いを見るに、生きて街に入れるか否か、という具合。


 ズシン、と彼の後ろで音がした。直後、唸り声。

 彼は恐る恐る後ろを見た。


 そこから何が起こったのか、彼にも分からなかった。




 男の部屋には、電源の付いたPCだけがテーブルに残っていた。

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