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プロローグ
トラックが少女の手に押さえられていた。
向かってくるトラックを、ソイツが手で受け止めたのだ。しかも、片手で。
「な、おま……お前……だだだ、大丈夫か……?」
華奢な少女の手が、暴走したトラックを片手で受け止める、という有り得ない状況。
俺は恐る恐る少女に言った。
「全然平気だ。それよりお前、怪我とかねえか?」
少女が平然と答える。
「いや……お、お前の方こそ……」
俺はそう言ってソイツの姿を見る。
神父服をチャイナドレスにしたような服装の下半身に、赤・オレンジ・黄色のヒラヒラ。ポニーテールに束ねた赤毛と八重歯が、強烈な女だという印象を植え付ける。そして、よくよく考えるとそんな格好の人間はそうそういない。
いやいや、と思いながら俺は言った。
「お、お前一体、何なんだよ……?」
「アタシの事かい?」
俺に返って来たのは、ありえないハズの俺の想像を肯定する一言だった。
「アタシは魔法少女。お前がトラックに轢かれそうだったから、助けてやったのさ」