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虎姫伝  作者: くろさぼ
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7.咲と彩羽

 (さき)は空を見上げて物思いにふけっていた。

 今は周りに誰もいなかった。

 やけに澄み渡った青い空が虚しく見えた。

 今日、1日で世界は一変した。

 クラスメートたちは無残な姿に変わり果て、知世(ともよ)とシンは目の前で殺し合いをした。

 知世は何も言わなかったが、こうなることを知っている風だった。

 その知世は咲に家に帰っておとなしくテレビでも見てなさいと言って立ち去っていった。

 去り際に「無事でいてね」と告げられた。

 その台詞は咲の方が知世に向かって言いたかった台詞だった。

 血を流したからだろうか。

 すごく体が重かった。

 傷は知世の魔法で治して貰ったが、服は自分の血で悲惨な状況になっていた。

 咲は目を瞑った。

 全てを忘れて眠ってしまいたい気分だった。


   ◇◇◇◇


「おい、こんな時に居眠りとはいい身分だな」


 突然声をかけられ飛び起きた。

 いつの間にか本当に眠ってしまっていたようである。

 目の前には見覚えのある、虎の顔があった。


彩羽(さいは)!!」

虎姫(とらひめ)の立場が危ういと聞い様子を見に来たんだが、その様子だともう戦争は始まってるんだな」


 戦争?

 非日常的な単語を出され、混乱する。


「誰と誰が?」


 何とか事態の心理に近づこうと、質問を投げかける。

「世界と《(ことわり)の外の者》――――ようは虎姫の仲間たちとの戦争だな」

「世界と戦争って!」

「おい、こっちの世界には国民に国の出来事を伝達するシステムがあるんじゃないのか? 確か()()()とかいう……。何で俺より何も知らないんだ?」


 彩羽の言葉の意味を考える。

 そして、彩羽が言いたいことがニュースだということを理解する。

 同時に知世が家に帰ってテレビを見ろと言った意味を理解した。

 つまりは、今回の出来事は大々的に報道されているような出来事なのだ。

 そして彩羽の言うことが本当であれば、知世とその仲間の公開処刑といっても過言ではない。

 知世が咲を置いて行ってしまうのも頷ける話だった。

 その結論に至ると、じっとはしていられなかった。


「彩羽、知世を追えますか?」

「無理だな。咲には俺のマーキングの臭いが残っていたから見つけることが出来たが、虎姫には俺の臭いはつけてないから」

「そう……」


   ◇◇◇◇


 結局、咲には家に帰ってテレビのニュースを見ることしか出来なかった。

 咲の体は思いのほか消耗していたらしく、自分の足で立つことも出来なかった。

 彩羽に家まで運んで貰い、2人でテレビを眺めていた。

 もしも両親がいたら、娘が血まみれになって虎男を連れてきたのだから、パニックを起こしていたかもしれない。

 テレビをつけると、どこの局でも臨時の報道番組が組まれていた。

ニュースのタイトルには「悪魔の処刑」や「人外の者への制裁」等、知世たちがまるで化け物であるかのように書かれていた。

 テレビ画面にはヘリコプターから撮影された、海岸沿いで集まる少年少女たちとそれを取り囲むように陣取っている軍隊の映像が映されていた。

 合図ひとつで軍隊の一斉攻撃が少年少女たちに行われるのだろう。

 画面に映された少女の1人が地上から飛び上がり、遥か上空のカメラマンを乗せたヘリコプターに飛び乗った。それは、まるで合成で出来た映像だった。

 ヘリコプターに飛び乗った少女はカメラに向かって笑顔で手を振ると、ワンテンポ置いてからカメラに向かって手に持ったナイフを振り下ろした。

次の瞬間に映像は途切れ、しばらくしてからスタジオの映像に戻ったのだった。

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