表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
REMOTE MODE  作者: 津辻真咲
9/14

酸素

酸素の青い雪の降る惑星。それが彼の原点だ。

調査員としての……。


青い空。しかし、その惑星では、青い雪が降る。

地球から遥か遠方の星だ。


空から青い雪が降ってくる。彼はそれを掴もうと手を伸ばす。しかし、それは手をすり抜けて、地面へと舞う。宇宙コロニーの資料室。立体映像で、その資料を開いていた通がいた。すると、そこへエリカが現れた。今は、午前1時。休憩時間だ。

「どうしたの?」

「いいや、何でもない」

 エリカの問いに通は首を振る。

「珍しいね。資料室へ来るなんて」

「あぁ、ちょっとな」

彼は黒装束のまま、ここへ来ていた。今日は友引。



地球時代。彼はそれから生きていた。科学の発展による不老不死だ。なのに、彼は今宵、死を選んだ。治療を拒んだ尊厳死。


――まだ、悩んでいるのか? 宇宙を制御することに。

――なぜ、躊躇う? 誰も傷つかない方法に。


彼の言葉が胸に突き刺さった。彼は、科学の発展がこの世界を救うと、そう思っていた。


これは、あの青い雪の降る惑星から始まる。

あの世界から……。



「おはよう」

 通はユーキ・キシに挨拶をする。

「おはよう。元気そうだな」

「あぁ」

通はそっけない。ユーキ・キシは自分のデスクで資料の整理を始めた。

「そうそう、今日の惑星は酸素の青い雪が降るそうだ」

「酸素の?」

 通は聞き返す。

「あぁ。酸素の青い雪だ」

「へぇ。珍しい」

 通は席に着く。

「何だ、分かるのか。雪」

「資料室で見た」

 資料を手に取る。

「地球のか?」

 ユーキ・キシは通の方を見る。

「あぁ。地球の雪は白かったな」

 通は淡々と答える。

「水だからな。元々は」

「それもそうだな」

通は少し口角を上げると、資料の整理を始めた。



1時間後。二人は現地へ到着していた。空からは相変わらず、青い雪が降り注いでいた。

「さ、行こう。火口へ行けば、水があるだろう」

「そうだな」

二人は火口へと向かった。彼は、その火口の水を検査機にかける。すると、生命体の反応は出なかった。

「どうやら、生命体はいないみたいだな」

「そうみたいですね」

通は辺りを見渡しながら答えた。


「お前は、どう思う?」

ユーキ・キシが急に尋ねて来た。

「保護になるかどうかは、五分五分ですかね」

「違うよ。このシステムだよ。この惑星保護プロジェクト、正しいと思っているか?」

「え」

 通は聞き返す。

「いや、いいんだ。賛成でも」

 ユーキ・キシは苦笑する。

「ユーキは、どっちなんだ?」

 通は尋ねる。

「賛成だよ。あのルールがなければ」

「ルール?」

 通は眉根をよせる。

「惑星を保護するかどうか、投票させることだよ」

「あ」

「不平等だろ? 俺は全生命体を保護したい」

「でも、それは予算的に無理があるんじゃ……」

「そうだよな、分かってるよ。ただ、全生命体を保護できれば、何かが変わるんじゃないかなと思って」

「何か?」

「価値観かな」

「……」

通は返事が思いつかなかった。

「帰ろうか」

一通り、調査を終えると、二人は宇宙ステーションへと帰って行った。



「おはようございます」

ユウが立体映像で姿を現す。いつも通りの景色だ。しかし、通は暗い。

「今回の宇宙は、第4中枢宇宙のすぐ近くの宇宙です」

「何かあったの?」

 エリカが尋ねる。

「真空崩壊しております」

「!」

エリカは驚いた。

「大丈夫なの!?」

「なので、至急、この資料にサインを」

「え?」

「保護課のサインがいるのです」

「あ、分かった」

エリカは慌ててサインをする。

「では」

彼はそう言うと、光の速さで次の部署へと飛んで行った。


「大丈夫?」

エリカは通を気にかけた。

「あぁ、大丈夫だ」

彼は苦笑した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ