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REMOTE MODE  作者: 津辻真咲
3/14

物理法則

全ては、自然のループに帰属する。

科学の発展は、自然の変化に追随する。

生命体の自由意志は、物理法則から離脱する。

自由意志は、物理法則を操り始める。



ユウがエリカたちの待機室へ立体映像として姿を現した。すると。

「今回の資料です」

ユウは立体映像の資料を二人に見せた。

「今回の宇宙は、膨張が自然停止している宇宙です」

「自然停止?」

「珍しい」

「しかし、まだ若い宇宙でもあります」

ユウは淡々と話す。

「それで、惑星の方は?」

「はい。こちらです」

ユウは立体映像の画面を変えた。

「恒星が二つ?」

立体映像の画像を見る限り、そう見える。が、しかし。

「惜しいです。一つは恒星。もう一つはまだ原始星です」

「そうなんですか?」

「えぇ。双極分子流と降着円盤が確認できます。それから、今回の惑星は第3惑星です。二つの恒星を行き来していますので」

「分かりました」

エリカは笑顔で手を振った。そして、二人は出国ターミナルへと向かった。



出国ターミナルでは、担当のヨウが待っていた。

「お待ちしておりました。98番です」

リモート・モードの搭乗口へ向かう。そして、宇宙から宇宙へと移動した。そのあとはスペース・シャトルだ。

「21番です」

二人は、スペース・シャトルの搭乗口へ向かった。そして、スペース・シャトルに乗る。そして、ワープ・エリアへと進んだ。そこからは、数分で目的の惑星系へたどり着いた。

「見えて来た。あれだ」

エリカは窓から外を見ていた。


スペース・シャトルは惑星に到着し、低空飛行で空気中を飛行した。そして、扉が開く。すると、二人は驚いた。

そこには、一面、球状の物体でいっぱいだった。

「何これ?」

 エリカは驚く。そして。

「空中に浮いているのか」

通はつぶやいた。

――表面が緑色。植物性なのかな。

エリカはそう思った。その生命体は球状の体内に水素を作り出すことができ、それで空中に浮いているのだった。

「知的生命体なのか、確認しよう」

「はい」

二人はスペース・シャトルから飛び降りようとした。すると、急に風向きが変わった。それにより、その球状の生命体がいくつもスペース・シャトルへ衝突して来た。

「わっ」

 エリカが声を上げる。

「気をつけろ。振り落とされるな」

 通がエリカをかばう。すると。

《大丈夫ですか?》

二人の脳内に直接、言語が入って来た。どうやら、テレパシーのようだ。二人の目の前にいる球状の生命体、その正体は知的生命体だった。

「あの……」

エリカは言葉に詰まった。すると。

《あなたたちにぶつかってしまい、誠に申し訳ございません》

知的生命体、ヒカイ・ジジが謝って来た。

《あなたたちは誰ですか? 珍しい姿形をしていますが?》

ヒカイ・ジジはエリカたちの容姿を見て質問して来た。

「えーっと、私たちはこの惑星の生命体ではありません」

《なんと。そうでしたか》

ヒカイ・ジジは、少し驚いているようだった。彼は気球のバルーンのような姿形をし、その球状の部分に眼が二つついているだけなのであった。

《それで、この惑星に来た目的は何でしょうか?》

ヒカイ・ジジはエリカの方を見て言った。

「この惑星を保護しに来ました」

ヒカイ・ジジはもう一度、眼を見開いた。

《なぜ、保護を? 何かあるのですか?》

「この惑星系の恒星はもうすぐ赤色巨星へと変化していきます。隣に原始星があるからといっても危険です」

《だから、保護なのですね》

「はい」

《では、私たちがこの惑星を案内します》

「え?」

《全て、見て下さい。この惑星のこと》

二人は、その知的生命体の触覚に掴まり、地表へと下りていった。



地面には、辺り一面、苔のような植物が広がっていた。

よくよく見ると、その植物は葉が鋭い星型になっていた。水分を大量に含んでいるのだろうか、歩くと靴に水がまとわりついた。二人はそんな中を、知的生命体に連れられて進んでいった。


緑色の海、緑色の花、緑色の川、緑色のプランクトン。全てを見て回ったあとには、もう既に空は暗かった。

《最後に、これを見ていって下さい》

「?」

エリカは首をかしげる。すると、ヒカイ・ジジは上空を見上げた。

――わぁ。

そこには、恒星の代わりに輝く原始星が見えた。それには、双極分子流や降着円盤の姿もうっすらと見えていた。

――素敵。

エリカは目を輝かせて見ていた。


「今回はありがとうございました」

 エリカは彼らにお礼を言った。

《いいえ、こちらこそ》

 彼らは目を細めた。

《また、来てくださいね》

 彼らはそう言うと、エリカと通の二人を見送った。

一方、エリカと通の二人は、知的生命体たちに別れを告げるとスペース・シャトルへと戻って行った。



入国ターミナル。そこから二人は出て来た。そして、待機室へと向かっていた。すると、担当人工知能のユウが立体映像をスライドさせて、こちらへ向かって来ていた。

「エリカ、通」

「どうしたの?」

エリカは尋ねた。

「少々問題が発生していまして」

「問題?」

「えぇ、少し厄介です」

「分かった。待機室へ行こう」

「はい」



待機室。二人はそこで今回、発生した問題の資料に目を通していた。

――第6の相互作用が発生しようとしている?

「何の相互作用か、もう分かっているのですか?」

エリカは尋ねた。

「いいえ。しかし、閉弦になりそうだと担当の観測者たちがそう推測しました」

「重力以外の閉弦……」

「確かにそれは珍しいかもな」

「えぇ、そうなんです」

「それで、どうしてほしいんだ?」

通は尋ねた。すると、ユウは答えた。

「上層部は今回、発生するといわれる第6の相互作用を残したまま、その宇宙を守ってほしいそうです」

エリカは息をのんだ。

――まるで、物理法則に自由意志が加わったようだ。

そう思った。しかし。

「分かりました。お任せください」

エリカは承諾した。


 今回は新たな物理法則の保護。しかし、新たな物理法則が誕生してしまうと、今までの宇宙環境とは別物になってしまう。それにより、宇宙生命体たちは保護されなくなってしまう。

それを回避するために今回は、相転移の前に新たな物理法則の予兆をデータ化して、相転移を防ぎ、今までの宇宙環境を守ったら、今度はデータを使用して、人工宇宙として新たな物理法則を保護することにしたのだった。


「これで対象の宇宙と閉弦、両方保護できます」

エリカは表情を明るくした。一方、通は厳しい表情のままだった。

――物理法則までにも生命体の自由意志が入り込むとは。


待機室への帰り道。二人は一面窓の宇宙を見ていた。そこには超銀河団が宇宙大規模構造を形成している姿が見えていた。

神秘的な景色だった。


全ては、自然のループに帰属する。

科学の発展は、自然の変化に追随する。

生命体の自由意志は、物理法則から離脱する。

自由意志は、物理法則を操り始める。

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