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REMOTE MODE  作者: 津辻真咲
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宇宙大機構

数十億年後、生命体は永久インフレーションを操り、自由自在にインフレーション期を終了させ、新たな宇宙空間を誕生させていた。

一方、エリカと通は、インフレーション期を強制終了させた新たな宇宙空間を調査していた。



「それでは」

エリカは小さく手を振った。

《こちらこそ》

 この惑星の知的生命体も手を小さく振った。後ろには青く燃える夕日があった。まるで、空は火星のような惑星だった。


 入国ターミナル。

「ただいま」

「おかえりなさい」

 担当人工知能のユウは立体映像で姿を現した。

「今回の調査、お疲れ様でした」

 立体映像が瞬きをした。そして、少し揺れた。

「次の調査惑星です」

 ユウは立体映像を変化させて、情報を映し出す。

「今回の宇宙はインフレーション終了から50億年経過しております」

――50億年。まだ幼い。

 通の隣で聞いていたエリカはそう思った。

「これが調査惑星です」

 立体映像が移り変わる。

「惑星系第4惑星の巨大ガス惑星です。木星でいう大赤斑が複数あるのが特徴です」

 立体映像が揺れる。そして、通常の画面に戻った。

「分かりました。これから、向かいます」

 エリカはそう言うと、通と共に出国ターミナルへと向かった。


 リモート・モードで宇宙から宇宙を移動し、スペース・シャトルで現場の惑星系へと向かった。


《到着いたしました》

 スペース・シャトルの簡易人工知能が知らせた。どうやら、目的の惑星へ到着したようだ。

 スペース・シャトルの扉が開いた。外には赤い夕日が見えた。

――濃い赤色。

 エリカは少し見とれていた。

「行くぞ」

 通の声に我に返る。

「はい」

 エリカは頼もしく返事を返した。そして、二人はスペース・シャトルから飛び降りた。

 トントントンと二人は宙を行く。そこには赤い布が舞っているかのような生命体たちの世界があった。

――これは。

 赤い生命体がまとわりついてくる。二人は少しかわす。

「気をつけろ。毒があるかもしれない」

「はい」

通が注意をした。

 一方、赤い布は風に舞う。向こうから迫ってきている嵐、大赤斑の風に勢いを増す。

――言語がないのかな? テレパシーが伝わってこない。

 いつもなら伝わってくるはずのテレパシーが伝わってこなかった。知的生命体たちなら、あちらから話しかけてくるのがよくあることだ。

――植物なのかな?

 エリカはそう思った。植物なら、動物性の生命体には分からない、また違うコミュニケーションがあるはずだ。


 トントントンと夕日の中を進む。二人は大赤斑の風をよけてゆく。暴風域には近づかない。何があるか分からないからだ。

「どうやら、空気中にはあの赤い生命体たちだけのようだな」

 通がエリカへ話しかけた。

「そうだね」

「一旦、戻ろう。日没になる」

 二人はスペース・シャトルで宇宙ステーションへ戻って行った。

 すると、宇宙ステーションはあわただしかった。


「何があったのですか?」

 エリカは近くの職員に尋ねた。

「システム・エラーにより、インフレーション期終了とBig Bangの連鎖が暴走してしまっているようです」

「え!?」

 エリカは声に出して、驚いてしまった。そして。

「新たな宇宙が無数に誕生してしまっているのです」

 早く鎮静化しないと無限に宇宙が誕生していってしまうとのことでした。


「大丈夫かな?」

 エリカは心配で眉が少し下がる。

「永久インフレーションに影響を与えないといいけど」

 二人は宇宙空間が映った窓の外を見た。



数十時間後、事態は収拾した。


「良かったね。被害が何もなくて」

 エリカは通へ話しかける。彼女は少しほっとしている様子だった。

「でも、新しく生まれてしまった宇宙はそのまま、成長するのを見守ることになるんだろうな」

 通は遠い宇宙空間を見た。

「そうだね」

 エリカは苦笑した。

「俺たちがその宇宙に調査へ行くのは何十億年もあとの話だろうな」

 通はエリカへ視線を移した。すると。

「その時まで、一緒?」

 エリカはドキドキして尋ねる。

「いくつ終焉が来ても、一緒だけど」

 通が目を合わせず言う。

 エリカは嬉しくて、彼に抱きついた。

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