インフレーション期終了空間
ユウは立体映像で姿を現した。そして。
「今回の惑星です。惑星系第5惑星の岩石惑星です」
ユウは資料を映し出した。エリカと通は資料に目を通す。
「地殻の上には水があり、海洋となっている。しかし、恒星から少し遠いために海洋には氷が張り、その氷は地殻と同じくらいの厚さをしている」
ユウが説明をしてくれた。
「その海洋の中に生命体が生まれているかもしれない。よろしくお願いします」
ユウは瞬きをした。立体映像で。そして、二人は現場へと向かった。
惑星系第5惑星。二人は現場へ到着した。二人はスペース・シャトルの開いた扉から外を見下ろす。惑星の表面は真っ白になっていて、厚い氷の層が見えていた。
「行こう」
「はい」
二人はそのまま、飛び降りた。そして、無事に地面へと着地をした。この惑星は大気が薄く、恒星の光が当たる場所は熱く、ダークサイドはとても冷たかった。
すると。
「至急、宇宙ステーションへ戻って来て下さい」
ユウからの緊急連絡だった。二人は、現地の惑星で彼の連絡を受け取っていた。
「どうしたの?」
エリカは尋ねる。しかし。
「説明は後です。至急、リモート・モードで中枢宇宙へ戻って来て下さい」
――え?
急なことでエリカは少し戸惑った。が。
「分かりました」
彼女はそう返事をした。そして。
「急いで戻ろう」
しかし、時既に遅し。リモート・モードはエラーを示した。二人は、現地の宇宙ステーションで足止めになった。
「ユウ、説明して」
エリカは通信機器でユウに連絡を取った。すると、彼は立体映像で姿を現した。
「大丈夫でしたか?」
ユウはおずおずと尋ねた。すると。
「大丈夫。宇宙ステーションには戻れたから」
エリカはそう答えた。
「そうでしたか。分かりました」
ユウは立体映像での姿を変えた。画面は背景が黒色の宇宙図になった。
「説明しますと……
インフレーション期終了空間に、〈中枢宇宙〉のブレーンが所属している11次元空間が挟まれ、完全に切り離されたようだった。
それにより、リモート・モードの座標位置がずれ、エラーを起こしていた。
インフレーション期の終了した宇宙に挟まれた、インフレーション期の終了していない宇宙は、膨張により、押し出されるように次第に別の次元軸の方へ歪んでいく。そして、インフレーション期が終了した宇宙によって完全に切り離される所もあるのだ。
「分かったわ。復旧するまで、こちらの宇宙ステーションで待機します」
エリカがそう答えると。
「よろしくお願いします」
ユウは通信を切った。
それから、十数時間後。リモート・モードは復旧した。
入国ターミナル。いつものようにあわただしくなかった。人はまばらで、空いている空港の様だ。
「おかえりなさい」
ユウが出迎えた。彼の立体映像は揺れている。
「大丈夫でしたか?」
彼は尋ねる。すると。
「大丈夫」
エリカは少し微笑んで答えた。
二人は待機室へ入る。
「でも、良かったね。リモート・モードが復旧できて」
エリカは微笑む。
「あぁ。そうだな」
通も微笑む。
――このまま、生命体は自ら進化していく。
――科学という手段を使って。