Big Bang
ユウは姿を現した。立体映像には今回の調査惑星の情報が映る。
「今回の惑星は、惑星系第4惑星。自転の早い岩石惑星です」
ユウが説明をする。二人は立体映像の情報を見ている。
「では、よろしくお願いします」
二人は現場へと向かった。
スペース・シャトルは低空飛行で空中を行く。二人はいつものようにスペース・シャトルから飛び降り、地面へと着地する。
すると、二人に暴風が襲った。自転が早いせいで、地表は時速200kmの暴風が吹いていた。
二人は必死に目を開けるが、生命体の気配などまるでない。周りには、吹き曝しにあっている岩石が連なっているだけだった。
「エリカ、大丈夫か!?」
「はい!」
二人の会話は暴風にかき消される。すると、二人の立っていた地面が陥没し、二人は落下していった。
「いたた……」
エリカはしりもちをついていた。一方、通は無事に着地出来ていた。二人は上を見上げる。光は届いていない。辺りは暗い。エリカは装備されているライトをつけた。
すると、そこは広い洞窟のような空間だった。
「ここは……」
「洞窟だな」
通は辺りを見渡す。
《どなたですか?》
すると、後方からテレパシーが伝わってきた。知的生命体だ。二人は振り返る。そこには、視力の退化した羽のある生命体が立っていた。
彼は2等身だった。頭部が大きく、頭脳が発達しているようだった。背の高さは、人類の半分くらいだった。
「あなたは?」
エリカは質問に質問で返してしまった。
《……あなたは?》
その知的生命体はもう一度、問う。
「あ、ごめんなさい。私たちは宇宙環境省から来た調査員です」
エリカはそう答えた。すると。
《私はカゲン・ウチ、ここの洞窟を住処にしている者です》
彼はそう名乗った。
「あなたの家?」
《はい。正直、驚いています。別の方々がいて》
「すみません。実は地表から落下して来てしまって」
《落下?》
カゲン・ウチは上を見上げる。彼は額から出した超音波で視力を得ていた。
《本当だ。壊れてる》
カゲン・ウチは困ったというように、腕を組む感じで羽同士を絡めた。
「地上に出ることってあるんですか?」
《ないですね。地表は暴風が吹き荒れているので》
「そうですか」
《ところで、宇宙環境省って何ですか?》
カゲン・ウチが尋ねて来た。
「それは、この宇宙空間に存在している惑星を調査して、その惑星の景色や生命体を保護しようとする組織です」
《ふーん》
カゲン・ウチはまた上を見た。
《この地表を吹き荒れる暴風を超えて、あの宇宙空間から来たんだ》
「はい」
エリカは微笑んだ。
《宇宙ってどんなところ? 何がある? 何がない?》
「うーん。何だろう」
エリカは困る。すると。
「自分の目で確かめたらどうだ?」
通はカゲン・ウチに言い放つ。
《え?》
「宇宙連合に加盟しますか?」
通が尋ねる。
《え?》
「そうしたら、分かるよ。この宇宙の全てが」
通は口角を上げる。
《本当に?》
「人類もそうだった」
《うん!》
カゲン・ウチは心を躍らせて、返事をした。
入国ターミナル。二人はゲートから出て来た。
「お疲れ様です」
ユウが出迎えてくれた。
「では、待機室へ」
ユウは二人と共に、部屋へと向かった。
「今回の宇宙なんですが、インフレーション期に突入しているそうです」
「え!?」
――第2のインフレーション期?
「それで、いつ、2度目のBig Bangが起こってもおかしくないそうです」
「それで?」
「インフレーション期に突入してしまったこの宇宙のBig Bangを阻止してほしいそうです」
「分かりました」
二人は現場へ向かった。
二人はBig Bangを阻止して、待機室へ戻って来た。ユウが出迎える。
「どうでしたか?」
「大丈夫。ばっちりだよ」
エリカは笑顔で答えた。
「それはよかった」
ユウは安堵した。しかし、一方でエリカの隣の通は眉をひそめた。
――生命体はインフレーションまで、操作し始めたのか。
――永久インフレーションを操作すれば、生命体は再び、新たなステージへ向かうのだろう。
――どこまで進めば、いいのだろうか。
――きっと、終わりはない。