倉持はキャンプへ行く(深夜-3)
女性用のロッジは2棟ある。
もともとは、3棟借りており、男性陣で2棟女性陣で1棟使う予定であった。
しかし、男性の参加予定者31名のうち30名が、急遽都合が悪くなったことを受けて、慌てて金剛と黒田で調整した。
管理者からキャンセルはしても良いと言われたものの、金剛も黒田もさすがに悪いと思い1棟だけキャンセルし、2棟を女性陣15名で使うことにしていたのだ。
1棟の方は特に、何かあるわけでもなく、平和に夜を過ごしていたのだが、白銀達のいる部屋には今まさに倉持が迫ってきていた。
だが、この場合、オオカミが羊の群れに飛び込むというよりも、雄のライオンが雌のライオンの集団に飛び込むという方がふさわしいかもしれない。
女性陣は変わらず談笑している。
藤壺「さすがに、シャネルの5番では寝ないんですね」
白銀「いやいや、それはお腹がひえ… あ、いや。 風邪ひくぞ」
青野「何ですか、シャネルの5番って」
赤井「香水の事よ。 つまり、香水だけを身に着けているってこと」
緑谷「えー。 えっちですね」
筑紫(今のあなたもよ)
白銀「そんなことする人、さすがにいないだろ」
青野「こないだの、ジョディさんはしてるみたいですけど」
赤井「ああ、プールの? いつ話したの」
青野「え、あれから一回食事に誘われたんですよ。 美味しいレストランでした」
白銀「私も誘われたけど、予定が合わなくて、来週会うつもりだ」
赤井「へー」
赤井(白銀さんと青野さん… あの人、どういうつもりかしら… 私には何も来てないし、見たところ緑谷さんと筑紫さんも知らないって顔してる…)
藤壺(あの人も…イマイチ何を考えてるか、読めないわね)
青野「で、その時に色々とお話していて、寝るとき話になって、たまたま聞いたんですよ」
白銀「普通に話していて、なかなかそうはいかんと思うが」
青野「え? 今もなってるじゃないですか?」
藤壺「まあ、確かに…」
コンコンコンとドアが響く。
倉持「すみません。 金剛部長をお届けにあがりました」
青野がささっと、ドアを開ける。
青野「はいはーい」
倉持「どうもすみません。 えーと、さっきまで酔ってて、今休んだところです」
白銀「すまない。 ありがとう」
倉持「いえいえ、疲れているみたいですので、そこに寝かせますね」
倉持は金剛用の布団スペースに金剛を運び、そっと布団をかけた。
倉持「それでは、おやすみなさい」
倉持がロッジを出ようとしたとき、赤井が引き留める。
赤井「そんなに、すぐ帰らなくてもいいんじゃない?」
緑谷「そ、そうですね。 なんならおしゃべりしましょうよ」
白銀「…そ、そうだな。 良ければどうだ?」
青野「ですねー」
倉持「え… いや」
倉持は藤壺を見る。
藤壺は無言でうなずく。
倉持「そ、それじゃあ、少しだけ」
倉持は少し腰距離を置いたところに座る。
白銀のバナナと青野のサメに気が付いた。
倉持「あ、そのバナナとサメ」
白銀「え、あ。 そうだ。 使ってるぞ」
青野「私も、一緒に寝ています」
赤井(やっぱり、倉持さんからのプレゼントだったのね… この二人… 特に青野さん、侮れないわね)
緑谷(いいなー 倉持さんからのプレゼント)
青野(やっぱり、バナナは倉持先輩からのものだったのね…)
白銀(サメか… うーん。 バナナよりも可愛いかも)
青野「そうだ。 せっかくなのでトランプしませんか? 持ってきたんですよ」
青野がごそごそと自分の荷物を漁る。
四つん這いで探すので、お尻のラインがくっきりとしている。
青野「えーと。 んーと… あ、ありました。 トランプです。 じゃーーーん」
青野がトランプを取り出した。
青野「この間行ったお店で気になって買ったんですよ。 罰ゲームが書いてあるんですよ」
倉持(ん? そのトランプは…)
白銀(それ、S○Dの罰ゲームトランプじゃ…)
藤壺(S○Dだ…)
赤井(罰ゲーム… 絶対やばいじゃん…)
緑谷(…え、と…)
青野以外(でも、めっちゃいい笑顔だから、やめろと言えない)
青野「さあ、正々堂々と勝負です!」
白銀「あの、青野さん… そのカード中を見たことは?」
青野「ありません。 初めて開けます。 なんかデザインが面白そうだったので買いました」
白銀(なんて、綺麗な眼… そうだな… やましいと思うからやましいんだ。 純粋にゲームを楽しめば、なんてことはない)
倉持「し、しかし、青野さん… ちょっと、辞めておいた方がいいかもしれないですよ」
青野「え… ダメ… ですか? 私、友達も少なくて…お家も厳しくて… だから、みんなでトランプで遊ぶことが無くて… 実は今日、とても楽しみにしていたんです… けど、みんながそういうなら… 仕方ありません… 諦めます」
倉持「や、やりましょう」
赤井「そ、そうね。 罰ゲームがあった方が盛り上がるよね」
緑谷「そ、そうです。 しましょう」
青野「ありがとうございます。 みなさん優しいですね」
青野(ホント… お優しいことで… 確かに、私は友達とトランプ遊びをした経験はありません。 けど、ネットゲームのトランプでは無双の腕前。 そして、確かにこのトランプを開けたことはありません。 けど、この中に『どんな指令を出してもOK』カードがあるのは知ってるんですよ。 それを使って、倉持さんを抱き枕にするんだ)
青野「えっとー。 なんか、ブラックジャックって言うのが簡単そうですよね。 どうですか?」
白銀「そうだな。 それでやってみよう」
青野「ルールは… まず、2枚のカードを配ります。 その後、カードを引いて足すこともできます。 最終的にカードの合計が21点に一番近い人が勝ちです。 もちろん21点丁度は勝ちです。 それを超えたらドボンです。 ちなみに2~10はそのままの数。 J、Q、Kは10、Aは1でも11でもOK… ということでどうですか?」
緑谷「分かりました」
青野「で、罰ゲームですけど、ドボンした人と一番21に遠い人が受けるでどうですか? その人はカードを引いてそこに書いてある罰ゲームをする。 罰ゲームの効果は明日の朝まで継続」
白銀「異論なし」
青野「あと、10回勝負して、一番21になった回数が多い人は、好きな指令を出せるってどうですか?」
赤井「なるほど、それなら21を狙う意味もあるわね」
白銀「じゃあ、それで、行こうか」
青野(そう、この作戦は二段構え。 もちろん狙うは優勝して、好きな指令を出すこと、それができず、私が負けても、指令カードを引いて指令を出す… 完璧な作戦よ)
熾烈なブラックジャックが始まる。




