倉持はキャンプへ行く(深夜-2)
キャンプ場の木造のトイレで、倉持は金剛の背中をさすっている。
金剛もだいぶ落ち着きを取り戻し、パンツは履いている。
金剛「すまんな倉持… お前にばかり負担をかけて」
倉持「いえ、気にしないでください。 金剛部長には、お世話になってますから」
金剛「気にするなよ。 私はお前が放っておけないだけだから… お前が落ち着くまではおちおち結婚でもできやしない。 おかげでチャンスを逃したぞ」
倉持「…すみません」
金剛「お、じゃあ、責任とってくれるか?」
倉持「…老後の、面倒はお任せください」
金剛は無言でトイレットペーパーの芯を倉持のほっぺに押し付けた。
倉持「イタイイタイ」
金剛「そこまで、年齢差ないだろ」
倉持「失礼」
金剛「お前、2人きりになると、結構失礼だな」
倉持「まあ… ですね」
金剛「いや、いい。 お前にもそんな人間は必要だ。 私としては、その一人になれるのはやぶさかじゃない」
倉持「ありがたいですよ。 ホントに、気軽に話せる人がいるのは」
金剛「…けど、私としてはな… 気軽にお前が相談できる相手も見つけて欲しいのよな。 酔った勢いで言うけどな… お前は心の内を見せなさすぎる。 まあ、最近ちょっとマシになってきた気がするけど… それでも、まだ人に頼るってことが全然できてない」
倉持「まあ、そうですね」
金剛「そんなに、他人は頼りないか? それとも、自分には頼る権利がないとでも思ってるのか?」
倉持「…難しいですね。 頼ってもどうしようもないと、思うのが少し… けど、まあ、確かに、自分なんかが人に頼るのはどうかなとは思います」
金剛「…明日には、多分これから言うことは忘れるからよ。 お前も明日には忘れなよ?」
倉持「なんでしょう?」
金剛「お前は、愛されてるよ。 お前が思ってる以上に… だから、お前が頼れば人は助けてくれるさ。 時間…無いんだろ? もう。 だったら、人を使え、時間がないなら人を増やせ。 人が増えれば手段も増える。 できることは格段に増える。 覚えておけ、少なくとも、この会社内だけでも、私と白銀がいる。 向こうには家族がいる。 他にもいるだろ? その一人一人に何をどう頼むか… よくよく考えろ」
倉持「覚えておきます」
金剛「説教臭くなってすまんな」
倉持「いえ、有り難い事です… 最近、特にみんな、声をかけてくれるのは… まあ、正直少し重荷に感じることもなくはないですが、けど… やっぱり、うれしいものです」
金剛は目をうとうとさせている。
倉持はなるべく見ないように、触れないように金剛にブラジャーをつけ、衣服を着せていく。
一方そのころ、ロッジでは女子トークが繰り広げられていた。
緑谷「青野さん… それぬいぐるみ? サメですか?」
青野「そうなんです。 最近は、こぬいぐるみと一緒に寝てるんですよ」
赤井「へー。 やっぱり、ファンシーなものが好きなの?」
青野「いいえ、ぬいぐるみ好きじゃないですよ。 というか、これぐらいしか持ってません」
筑紫「…プレゼントですか?」
緑谷「でも、プレゼントで贈るには柄が…」
赤井「確かに、柄が… 見た目は可愛いのに、柄で損してる気がする」
白銀「だな。 まあ、私は結構好みのデザインだが」
青野「ですよね。 なんかいいですよね」
緑谷「う、うん」
筑紫「ところで、白銀さんは何を持っているんですか?」
白銀「抱き枕だ。 枕が変わると眠れないんだ」
白銀はバナナ型の大きな抱き枕を持参していた。
昨年倉持からもらったものである。
白銀「これも… プレゼントでな」
青野は察した。
青野「へー。 抱き心地はいいですか?」
白銀「ああ。 体にフィットするようで、いいぞ」
赤井「意外ですね。 なんか、寝るとき、セクシーな服着てそうなイメージが」
白銀「え…あ、いや。 そうだな。 服装はセクシーなネグリジェだ」
緑谷「へー。 ギャップですね」
筑紫「似合いそうですね」
実際は白銀はパジャマやもこもこのフリースを着て寝ている。
青野はネグリジェで寝ている。
赤井、緑谷、筑紫はジャージで寝ることが多い。
白銀「藤壺さんは、どんな服装で寝るんだ?」
白銀は端の方に身を寄せている藤壺を呼んだ。
藤壺「…私、ですか?」
白銀「というか、そんな隅によらず、こっちへおいで」
青野「そうですよ。 もう、気にしないでください」
赤井「だね」
藤壺「…みんな」
緑谷「私、あまり面識ないんですけど… 緑谷です」
筑紫「筑紫です」
藤壺「藤壺です。 どうも」
青野「で、藤壺さんはどんな下着なんですか?」
藤壺「え、下着? 寝るときの服の話じゃあ…」
青野「し、た、ぎ。 です」
藤壺「笑わない?」
青野「笑いませんよ。 もしも、笑う人がいたら、デコピンです」
藤壺「ふんどし」
緑谷と筑紫は妄想しにやけてしまった。
青野によってデコピンされた。
白銀「ふんどしか、実は私も興味はあるんだが、中々購入には至ってないな」
藤壺「締め付け具合がいいですよ。 是非一度履いてみてください」
青野「ふんどしですか… ちょっと、面白そうですね」
白銀「で、そういう青野さんはどんな下着なんだ?」
青野「夜はノーブラです」
筑紫「ノ…ノーブラ、ほ、本当ですか?」
青野「ええ、締め付けが苦しいので、つけたくないんです」
緑谷(それが、巨乳の秘訣かぁ)
筑紫「い、今は?」
青野「いやー。 さすがに今は着けていますよ」
白銀「だな。 今は着けているよな…」
全員、自分が下着を身に着けているか確認した。
白銀(大丈夫、履き忘れていない…)
赤井(う、うん。 大丈夫)
青野(…さっき、一瞬つけ忘れたけど、気付いてよかった)
藤壺(実は下着付けてないけど…まあ、大丈夫だよね)
緑谷(パンツ…ない)
筑紫(ヤバい、ブラが無い…)
白銀「さ、さすがに大丈夫だよな。 みんな」
筑紫「え、ええ」
緑谷「ですね。 そんな間抜けなこと、そうそうないですよ」
筑紫は隣の緑谷のお尻をみた。
本来あるはずのパンティーのラインが出ていないことに気が付いた。
筑紫(緑谷… ノ、ノーパンじゃ? 薄手のパジャマだから、くっきりしちゃってるよぉ)
その頃、倉持は金剛に肩を貸しながら、ロッジに向かっていた。




