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倉持氏はラッキースケベでいつも金欠  作者: ものかろす
日常編① 起
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倉持は星が見たい(後編)

エレベーターに閉じ込めらられた倉持と白銀(残念美女)

白銀は案の定もよおす

倉持は左手にタンブラーを持ちながら、喉が渇いたと乱心発言



ー2年前 冬


しんしんと雪が舞い落ちる。

落ちては地面と同化する。

建物や木々には色とりどりの電飾が巻き付けられている。

行き交う人々は皆笑顔を浮かべている。


そんな中、一人公園の外灯の下たたずむ白銀を、倉持は見かけた。

まるで、誰かを待っているようだ。

しかし、倉持は白銀の目線から、それはフリであると理解した。

その眼は虚ろで、周りを見ていない。

誰かを待っているならば、普通は周囲へ気を配るはずである。


当時、倉持はそこまで白銀と面識がなかった。

システム部の優秀な人物ぐらいで、何回か言葉を交わした…程度の人だった。

そもそも倉持はその体質、故に積極的に女性に声をかけない。

だから、この日も戸惑った。


だが、今にも雪に紛れて消え入りそうな人間を放っておくようなことはできるはずがない。


倉持はそっと近づく。


倉持「白銀さん? だよね。 システム部の」

白銀「… えーと…倉持さんでしたっけ?」

倉持「そうです。 どうかしたんですか?」

白銀「待ち合わせをしてるんですよ? 今日はイブです。 決まってるでしょう」

倉持「そうですか… 野暮なことをしました… けど、ここは寒いでしょう? ここで会ったのも何かの縁です。 良かったら、その人が来るまで、私とお茶でも飲みませんか?」

白銀「……変な人」


こわばっていた白銀の表情が緩む。


倉持「寒いと表情がこわばりますよ? 今のような顔で待つ方がいい」

白銀「ふふ… 分かった。 ちょっと、付き合ってくれる?」

倉持「気が済むまで」


倉持と白銀は近くのコーヒーショップに入る。


倉持「ん? あ! これは」


お店に入るなり、倉持が声を上げる。


白銀「どうしたの?」

倉持「いや、このタンブラー…クリスマス限定柄ですよ… これ、あちこち回って手に入らなかったんですよ。 再入荷してたんだ。 これは買わないと」

白銀「へー、オシャレね。 私も買おうかしら…」

倉持「…それじゃあ、お互いにプレゼントしません?」

白銀「え? 同じものを? なんでそんな非効率的な…」

倉持「まあ、そうですけどね。 でもいいじゃないですか。 自分で自分に買うよりも、誰かに贈ったり、誰かからもらったりした方が、より特別になるじゃないですか? 付加価値ですよ」

白銀「…以外…そんな子どもっぽい一面もあるのね… 分かった。 じゃあ、これは倉持さん分ね」

倉持「では、これは白銀さん用に…」


その後、二人はしばらくコーヒーショップで雑談をする。

時計の短針は9を指す。

白銀はさすがに気が引けたのか、話を切り上げる。


白銀「…そろそろ…出ましょうか」

倉持「はい」


人通りは減り、イルミネーションの道を歩くのは男女の二人組ばかりになっている。

白銀はちょっとした、ダメもともいたずら心から…イルミネーション通りの方へ向かう。

イルミネーション通りを何も言わず歩く二人。

イルミネーションの主着点にはハートのオブジェがある。

オブジェの手前で、白銀は足を止める。


白銀「…ごめんなさい… 嘘ついた… もう誰も待ってない… もう来ないの…」

倉持「私が来ました。 それに、たとえ私が来なくても、誰かは来たと思いますよ。 白銀さんを気にかけてる人は結構いると思います」

白銀「…う…うう」


白銀には長年闘病している幼馴染がいた。

白銀はこれまで、献身的に支えてきた。

その中で恋心も芽生えていた。

しかし、12月に入ってすぐ、冬の訪れとともに幼馴染は帰らぬ人となった。


倉持は赤井からその話を聞いていた。

その時は、自分が関わるとは思っていなかった。


倉持「白銀さん。 私には白銀さんの失ったものの大きさは計り知れません。 慰めの言葉も思いつきません。 けど…ちょっと、気持ちをそらすことならできるかと思いますよ」


ジングルベルの歌が鳴り響く。


白銀「…ねえ… このまま帰りたくない… もう少し一緒にいて…」

倉持「はい ですが、この時間から、どこに行きましょうか… カラオケ…バー… どこも混んでそうですね」


白銀はホテル街を指さす。


倉持(ホテル… うーん… 確かに二人でじっくり話すなら、適所か… うん。 お金もボーナスがあるから、大丈夫だな)

倉持「ええ、行きましょう」


倉持と白銀はラブホテル『アイス』に入った。

倉持は入店すると、すぐに料金体系などを理解し、宿泊を選択した。


白銀(え…え… 宿泊? それって、絶対にするヤツじゃん… マジで…)


部屋に入ると、早速倉持はお風呂の支度をした。


倉持「冷えたでしょ。 先にお風呂どうぞ」


白銀は、この後の展開に緊張しながらもお風呂に入る。

上着、スカート、ストッキング、キャミソール、ブラジャー、ショーツと一つずつに身に着けていたものを置いていく。


白銀(すぐそこには、倉持さんがいるのよね… やばい… 人前で裸になるなんて…初めてだし…私大丈夫かな? 変なとこないかな)


白銀は、鏡で自分の身体をくまなく確認する。

鏡は見る。 化粧もする。 ムダ毛の処理はする。

しかし、それでも気になるのが乙女の性である。

シャンプーを手に、これでもか出し、その髪に塗りたくる。

コンディショナーをしながら、洗顔をする。 少し気になる産毛を剃る。

コンディショナーをそのままに、備え付けのスポンジにボディソープをこれでもかと出す。

半分ぐらい使っている。よくよく泡立てると、左肩、腕、指先まで丁寧に泡を広げていく。

右腕、胸、お腹に背中と洗っていく。特に胸の周囲は念入りに泡を付けた。

すらっと長い脚を伸ばし、そこにも泡を乗せていく。

全身に泡が行き渡ったところで、ボディソープを手に取りだし、その繊細な部分を一部一部、丁寧に洗っていく。


白銀(ふー… よくわからんけど…大丈夫だよね…変な匂いしないよね…)


しばらくしてから、勢いよく泡を洗い流すと、ゆっくり湯船に身をひたした。


白銀(しかし…これはどういう展開だ… このまま、ヤッテしまうのか…)


頭に血が上るのを感じた白銀は、湯船から上がると、すぐに身体を拭いた。

白銀はバスタオルだけを身に着けて、部屋に戻る。


倉持「お上がり。 じゃあ、私も入ってきていいかな」

白銀「は…はい」


倉持がドライヤーを持ってくる。


倉持「まだ、濡れているから、これどうぞ。 風邪ひきますよ」


白銀は髪をとかしながら、心の準備を整えていた。


白銀(てか、倉持さん。 やっぱり慣れてるのかな。 入り方もスマートだったし… まあ、カッコイイし、モテるわな… ってことは、これも遊び… まあ、そうだよね)



白銀が考えこんでいると、倉持がお風呂から上がった。

バッチリ服を着こんでいる。


倉持「あれ? どうしたんですか? まだ、服着てないんですか?」

白銀「え…あ…え?」

倉持「風邪ひきますよ。 というか髪も乾いてないですね。 ちょっと、失礼していいですか」

白銀「あ…え…はい…え?」


倉持はドライヤーを取ると、慣れた手つきで、白銀の髪を乾かしていく。


倉持「すみません。 本当はあまり、女性の髪にうかつに触れるべきじゃないんですが」

白銀「あ…いえ… ありがとうございます」

倉持「…沈んでいる時は、無理しない方がいいですよ? ここなら私たちしかいません」

白銀「…」


倉持の手が、少しずつ白銀の髪をほどいていく。

白銀は、ドライヤーの音に紛れて、むせぶ。

倉持は、ゆっくり、じっくりと乾かしていく。 


倉持「終わりましたよ」

白銀「う…う… 倉持さんんんん」


白銀は抑えきれなくなって、倉持に抱きかかる、その瞬間、身に着けていたバスタオルがはだけ、その肢体があらわになる。

倉持の目の前には、白銀の潤んだ顔が、少し下には綺麗なバストが、その下にはうっすらとした茂みが…


倉持は白銀の身体をそっと抱きしめて、背中をポンポンとたたく。

その後、頭をそっと撫でる。


倉持「話してください。 全部聞きます。 私で良ければ」

倉持「でも、その前に、服を着ましょう。 白銀さん。 自分を大事にしましょう」


倉持は、白銀に服を渡す。

白銀はいわれるがまま、服を着る。



倉持「そろそろ、ルームサービスが届きます。 お腹すきましたし、食べながらお話ししましょう」


ピザやパスタ、ワインが運ばれる。

倉持はワインを開けると、白銀のグラスに注ぐ。

白銀は倉持のグラスに注ぐ。

ふちをそっと合わすと、同時にグラスに口をつける。

白銀は、そっと言葉を発する。

幼馴染との思い出を一つ一つ。

時に涙がこぼれそうになると、ベッドの枕元にあるティッシュを倉持が渡してくれる。

倉持はひたすら話を聞く。


いつしか白銀は眠りにつく。


朝、白銀が目を覚ますと、そこに倉持の姿はなかった


白銀(変な人… でも、いい人…)


メモと5000円が置かれていた。

メモには、帰るということと、料金は支払い済みである旨が書かれていた。


白銀(??? 5000円は? 何? やっぱ…変な人?)


当時白銀はそのお金の意味が分からなかったが、後に赤井から聞かされる。


この一件以来、白銀は倉持に心を開くようになり、度々食事にも行くようになる。



現在に戻る。


倉持は床に寝転んでいる。

そして、目を思い切りつむっている。


倉持「よし、これで大丈夫だ」

白銀「いやいや…マジか」

白銀「…」


白銀はストッキングを脱ぐ。

そして、ショーツを膝まで下げる。


白銀「ほ…本当にいいんだな? 体に良くないらしいぞ」

倉持「大丈夫、後でコーヒーで薄める」

白銀(じゃあ、コーヒー飲めよ。 って野暮な突込みだよな。 こいつはこういうヤツだ…こういうヤツだからこそ…私も)

白銀「ん…」


チョ…ピ


その瞬間、エレベーターがゆっくり起動し始めた。

白銀はとっさに、股に力を入れて、決壊を防いだが、少々の放水は止まらなかった。

さらに、衝撃で姿勢を崩した白銀は、その繊細な場所を倉持の顔に押し付けることになる。


倉持「もごふご…」

白銀「す…すまん クラさん」


白銀はそそくさと、ショーツとストッキング、スカートを身に着けると、エレベーターが止まった瞬間、一目散にトイレへ駆け込んだ。

去り際に、倉持はポケットから2000円、白銀のスカートのポケットに突っ込んだ。


白銀「じゃじゃあ、また詳しく話そう」

倉持「あ、ああ」

倉持(今は17時30分か…)


倉持はすぐに営業部に戻り、状況を確認した。

幸い特に影響は見られなかった。

その後、金剛に報告し、デスクにつく。


そこに赤井がやってくる。


赤井「倉持。 大丈夫だったか?」

倉持「ああ、何とか大丈夫だった」

赤井「なら良かった… 心配したわよ… と…それと…」

倉持「大丈夫。 約束は守る。 悪いけど先に行っててくれ。 ちょっと本気を出す」

赤井「分かった。 じゃあ、待ってるよ」


倉持はふーと一息つく。

普段倉持は本気を出さない。 

出すまでもないというのが理由の一つだが、一番の理由は本気を出すと反動が出てしまうためである。

しかし、今はそうも言ってられない。

倉持は全力で仕事を進め。

18時きっかりには全ての業務を終えた。


倉持(あと…30分…ここから、ダッシュで行けば間に合う)


倉持は本気モードのまま、机を片付けて、プラネタリウムに向かった。



一方プラネタリウム入り口


三奈「ねえ。 何で、桜さんがいるの?」

桜「別にぃ。 倉持に誘われたからいるだけだけど」

三奈 小声「二人きりのはずだったのに… 邪魔すんなし」

桜「聞こえてるわよ。 小娘」

三奈「何よ 桜おばさん」


三奈は一時シェアハウスに住んでいたこともある。

桜とは旧知の仲であり犬猿の仲である。

そこに赤井がやってくる。


赤井「あれ? 二人? いつ増えた」

桜「えーと…赤井さんですか? 倉持がいつもお世話になっています。 同居人の桜です」

赤井「ど…あー、シェアハウスのね… こちらこそ、同期で友人の倉持がお世話になっています」

三奈(速い… マウント合戦。 けど、どっちも決定的な仲じゃないから、マウント取れてない!)

桜「倉持…どうかしたんですか?」

赤井「あら、ご存じない? 連絡貰ってないんですね? 同居人なのに」


そこへ、颯爽と倉持が現れる。

バチバチとした空気もお構いなしに、倉持が割って入る。

倉持の頭には星の事しかなかったのだ。


倉持「お待たせ。 ゴメンみんな。 早速入ろう」


倉持を挟むように桜と三奈、そのとなりに赤井が座る。

倉持は終始目を輝かせながら、星の話に入り込んでいた。

そのあまりに無邪気な表情に桜も赤井も三奈も、すっかり毒気が抜かれてしまった。

その帰り道、倉持の前を歩く3人のスカートがめくれて、星柄の下着があらわになるというオチは蛇足であるが、述べておく。

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