表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
倉持氏はラッキースケベでいつも金欠  作者: ものかろす
藤壺編
69/371

倉持と母(中編)

倉持は花を連れて、昼食へ向かう。

建物と建物をつなぐ歩道橋を歩いていると、ふと下から声が聞こえる。

「だれか… ドロボー」


倉持は即座に、下の状況を把握する。

ヘルメットをかぶった男性が、バッグを抱えて歩道橋の方へ走っていく。

倉持は即座に歩道橋から飛び降り男の前に降り立つ。


倉持は男性にタックルし、抑え込む。

そのまま、男性の身体をひっくり返し、腕を捕えて、バッグを取り返す。

「あ、ありがとうございます」


女性が駆け寄ってくる。

たゆんたゆんと揺れる胸。

ふわりとした髪。

薄いピンクを基調としたスカートがはためく。

その女性の華奢な足と足が交差する。

女性は体制を崩して、倉持に突進する。

その拍子で倉持は吹き飛び、男性の拘束を解いてしまう。

男性は身体を起こし、走り去ろうとする。


と、その前に一人の女性が立ちはだかる。

ハリのある胸。

後ろで束ねられた髪。

スラっとしたパンツルック。

その女性の足が男性の身体と交差する。

男性はその場に倒れ込む。


倉持は顔面にかかるおっぱいロックを解き、再確保に向かう。

しばらくして、花が呼んでいた警察が駆けつける。


男性は窃盗容疑で確保された。

倉持は女性たちとともに状況を説明した。

しばらくして、やっと警察から解放された。

ぼつぼつ歩き、百貨店に戻る。


スカートの女性は深々と頭を下げてお礼を言う。

「ありがとうございました。 本当に助かりました」

倉持「いえいえ、大したことはしてませんよ。 それよりお怪我はなかったですか?」

「はい大丈夫です… あの… 私、灰田理子と言います。 こっちは妹のミコです」

ミコ「どうも、ありがとうございます。 私が目を離した隙に… 本当に助かりました」

倉持「いえ… 私こそ一度逃してしまったので… 助かりました。 何か武道でもなさってるんですか?」

ミコ「まあ、ちょっとだけですけど」

理子「あの… もし… お昼とか…まだでしたら、お礼をさせていただけませんか? お済でしたらお茶でも」

倉持「あー… 悪いので、結構ですよ… イっ」


花が倉持の上腕筋の背中側をつねる。


花(空気読みなさい… ここはお言葉に甘えましょう)


倉持「あー… じゃあ、せっかくですので、お昼でも」

理子「いいんですか? 何か食べたいものありますか?」

倉持「えーと… うど…イっ」


花が倉持の上腕三頭筋の背中側をつねる。


倉持「ぎゅ…牛タンとか?」

理子「いいですね。 私も牛タン大好きです。 美味しいですよねー。 行きましょー」

ミコ「…」


倉持一行は、百貨店内の牛タン屋に入る。

倉持はメニューを姉妹に渡す。


理子「ありがとうございます… うーん、迷うなぁ…」

ミコ「理子は優柔不断だからな… なかなか決まらないぞ」

花「そうなの? この子も優柔不断なのよね」

倉持「ま、まあそうですね」

理子「あれ? この子? もしかして親子さんですか? てっきりご夫婦かと」

花「あらー。 そう見えちゃう? 私もう、50近いのよ」

理子「ええー… 見えないですー…」

花「いい子ね!」

倉持「…ははは」


花は無言で倉持の広背筋の側面側をつねる。


理子「へー… えーーと…」

ミコ「そういえば、お名前を伺ってなかったですね。 差し支えなければ教えていただけますか?」

倉持「倉持徹です」

花「倉持花です」

ミコ「倉持徹さん… どこかでお会いしたことあるような…」

倉持「実は私も、ちょっと思ってました…」

ミコ「うーん…けど、思い出せないんですよねぇ… あ、理子決まった?」

理子「まだ」

ミコ「はよしなよ」

理子「う、うん」

倉持「大丈夫ですよ。 ゆっくりでも」


理子は悩んだあげく、一番人気のセットに、倉持と花も同じものにした。

ミコは牛タン三種盛りにした。

昼時を過ぎていたこともあり、料理はすぐに運ばれてきた。


倉持はまず、麦飯を頬張り、良く味わう。

次に薄切りのタンをすくい上げ、ゆっくり口に運ぶ。

香ばしさ。食感。噛むほどにじみ出るタンの濃厚なうま味。

倉持はゆっくり咀嚼する。

そして、一気に麦飯をかきこむ。

麦飯が口内に残ったタンのうま味を身体へ運ぶ。

さらにおまけのとろろをかき混ぜ麦飯に投下する。

とろろと麦飯の相性は抜群である。

とろろが麦飯の口当たりを柔らかくする。


倉持が気が付くと、目の前から麦飯もタンも消えていた。

みそ汁を飲み干し、漬物を頬張る。

割り箸を袋に入れて、袋の先を折り曲げる。

トレイの上を片付ける。


倉持「ごちそうさま。 いやー美味しかった」

理子(なんておいしそうに食べるのかしら…)

ミコ(いい食べっぷりだなぁ)


理子「ごめんなさい。 私食べるの遅くて…」

倉持「いえいえ、職業柄 私が早いだけです… ゆっくり味わって食べる方がいいですよ」

ミコ「ちなみに… 失礼ですが、どんなお仕事を?」

倉持「ああ、証券会社で働いています」

ミコ「… そうなんですね」

理子「きぐ…」


理子が発言しようとした瞬間、ミコがタンで口をふさぐ。


理子「むごむが」

ミコ「このタンも美味しいよお姉ちゃん。 へー…証券会社ですか… すごいですね」

倉持「いや、私はそんな大したことはないですよ」

ミコ「そんな… 謙遜なさらないでください」


理子が食べ終わるのを待ち、店を後にする。

会計はすでに倉持が済ませていた。

店を出る際に、理子とミコは倉持を引き留めた。


理子「受け取ってくださいよ。 お礼のつもりですので、こっちがごちそうになるのはいけません」

ミコ「そうですよ。 そんなつもりで誘ったわけじゃないので」

倉持「いやー… ですが… ごちそうになるのに慣れてなくて…」

花「じゃあ、こうしましょー。 私が二人からお金をもらうわ」


理子とミコは花に代金を渡す。


花「で、これは私が預かっておくわ。 いざというときのためにね」

倉持「… すみません… それでも良いですか」

理子「え、ええ。 大丈夫です」


倉持と花は会釈し、姉妹と別れた。

姉妹は親子の後ろ姿を見送る。


理子「…なんか変わった人でしたね」

ミコ「かなりの変人だよ。 けど、ものすごく優秀… まあ、そのうち会うでしょうね」

理子「ふーん。 じゃあ、紹介してね」

ミコ「…私じゃ、不満なの?」

理子「そんなことないよー。 私が好きなのはミコちゃんだけだよ? けど… 久しぶりにちょっとオトコの人に興味が沸いたかも」

ミコ「…気乗りしないなぁ」

理子「ふふふ… 嫉妬?」

ミコ「…逆に私があの人に惚れたらどうする?」

理子「○す」

ミコ「…」

理子「…冗談だよ? 半分」

ミコ「…どこで切る気?」

理子「さあ…ね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ