倉持は眠りたい(後編)
今回の主な登場人物
倉持徹 27歳 178 67
二重 キリっと目つき 整った顔立ち
春野桜 27歳 163 54
大学生からの付き合い
ロングヘア― すべてにおいて平均的
喫茶店勤務(正規雇用)
冬野由紀 30歳 165 58
だらしない
髪は長くぼさぼさ 無造作に縛っている
巨乳
フリーランスで何かしている
秋野紅葉 34歳 162 57
シェアハウスの管理人
ロングヘアー
主に食事や日用品の補充、掃除をしている
ラッキースケベ発動率は低め
貧乳
倉持は桜に、アルコール度数1%のカクテルを注ぐ。
倉持「ちょっと失礼します」
倉持は席を立ちお手洗いへ向かう。
桜はちびちびと口を付けていく。
由紀もマイペースにハイボールを飲んでいく。
最近どう? とか天気の話など世間話を何度か交わす。
ふと、由紀が桜のピンク色の唇に目を向ける。
由紀「桜ってさ… キスしたことある?」
桜の手が止まる。
桜「…そ…そりゃあ。 今年で27になりますから…ありますよ… キスの一つや二つ」
由紀「へー。 てっきり、そういうの興味ないと思ってたわ」
桜「何ですか? モテないって言いたいんですか?」
由紀「いやーーー そういう意味じゃあないんだけど」
由紀がお手洗いから帰って、先ほどから手持無沙汰にしていた倉持に目線をやる。
倉持「由紀さん。 桜さんはモテますよ? キャンパスでよく桜さんを紹介してほしいって頼まれたことありますし、喫茶店でも桜さん目当てのお客さんたくさんいましたよ。 ですから、当然お付き合いもしているかと…」
桜はうれしいやらなんやら複雑な表情をしている。
由紀「…… へー。 そうなんだ。 けど、私が聞きたいのはさぁ。 モテるモテないじゃなくて。
経験があるかどうかなんだよ」
倉持「同じじゃないんですか?」
由紀「倉持はまだ、童貞だけあって、分かってないなぁ。 女性はな、好きでもない人にモテてもうれしくないんだよ」
桜「ちょっと、由紀さん」
倉持「なるほど、確かに じゃあ、学生時代に桜さんに色々な人を紹介していたのは、かなり迷惑だったんですね… それは、過ぎたこととはいえ、申し訳ないことをしました」
由紀の顔がこわばる。
由紀は桜にだけ聞こえるように耳打ちした。
由紀「マジで? 倉持から紹介されてたの?」
桜「…はい。 悪気は全くないのも分かってましたし、変な人は紹介されなかったので、許容してましたけど」
由紀が倉持に目を向ける。
由紀「ってか、あんた的に桜はどうなの?」
倉持「可愛いと思ってますよ? 優しいし、しっかり者だし あと」
由紀「あと」
桜が唾を飲む。
倉持「あーーーいえ… なんでもないです」
由紀「もったいぶるなよ。 言えよ。 気になるだろ」
倉持「あと… 優しいし」
由紀「重複してんだろ 言っちまいなよ? あと、何だって?」
由紀は倉持に迫る。
前回描写したとおり、由紀はショーツしか身に着けていない。
桜「うーーーヒック」
倉持と由紀が桜の方に目をやる。
桜は由紀のハイボールを飲み干していた。
緊張から、極度に喉が渇いた桜は、近くにあった透明っぽい飲み物に手を出してしまっていた。
桜「倉持いいいい。 さっき私のこと何て言ったあああ」
倉持「さ…桜さん。 落ち着いて」
桜は倉持に言い寄る。
あまりの迫力に由紀は退いた。
桜「もっかい… 言ってほしいな」
情緒不安定である。
倉持「カワイイ? ですか?」
桜「可愛いと思ってくれてるのね? じゃあ、じゃあ…キスするよ」
倉持「いやいや、何でですか! どういう理屈ですか!」
桜「うるさい… キスさせなさい」
桜は目をつむり、倉持にキスを迫る。
桜の唇に、ぷにゅとした感触がある。
桜は満足したのか、そのまま倉持に倒れ込んだ。
桜「やったー…キス…で…き…ZZZ」
倉持はとっさに机の上のウィンナーを桜の口に当てていた。
倉持「お酒弱いのに…ムリして…」
由紀「…倉持…そりゃないんじゃないか?」
そこに、紅葉が入ってくる。
紅葉「ちょっと、みんな、もうこんな時間よ? そろそろお開きにしない?」
倉持「紅葉さん… そうですね…」
倉持が机の上をまとめる。
紅葉「ああ、倉持君 いいわよ。 ちょっとだけ、私も飲むから… そのままにしといて。 それより桜ちゃんを運んであげて」
倉持「…分かりました… すみません。 ありがとうございます」
倉持は桜を抱きかかえて、部屋を後にする。
倉持「…分かってますよ? でも、桜さんは恩人ですから…」
倉持はそう言い残して、部屋に消えていった。
由紀「…だよなー はぁー 報われねぇな―」
紅葉「そうかしら? 私はいつかみのると思うわよ?」
由紀「そうか? 私はあねさんほど、経験豊富じゃないから、わかんないわ」
紅葉「ふふふ 倉持くんはねぇ… 誠実なのよ」
由紀「そりゃ…分かるけどな…… 何飲む?」
紅葉「水でいいわ」
由紀「たまには付き合ってくれない?」
紅葉「週末ならいいわよ」
由紀「私は週末が山場なんだよ」
紅葉「ふふ… 知らんし まあ、予定が合うときに飲みましょうよ」
由紀は形だけでもと、グラスを持ち上げる。
紅葉はそっと、水の入ったグラスをつける。
紅葉「そういえば、由紀さん…倉持さんって、トイレ行った?」
由紀「 ???どういうこと?」
一方倉持は、桜を壁にすがらせてから、布団を敷いていた。
桜は寝息を立てている。
倉持「…ごめんなぁ… 応えられなくて…」
倉持がつぶやく。
倉持「さ、布団しけたぞ… もう横になれるか?」
倉持が桜の肩に手を触れる。
桜はん、んと応える。
桜はゆっくりと目を開けると、うっとりとした表情で倉持を見つめる。
桜「倉持… キス…してほしいな…」
桜はそっと、倉持の首に手を回す。
先ほど飲んでいたカクテルのせいか、かすかな果実の匂いが漂う。
倉持は自分の鼓動の速さを感じていた。
倉持「桜さん… 起きて…」
桜「ん。。。ん」
桜がキスをせがむ。
倉持は観念した。
桜の髪をかき上げ、桜の額を露出させると、静かに唇をつけた。
倉持「これで、勘弁してくれ」
桜「…ん……うーん…ん…許す」
満足した桜は倉持に全体重を乗せる。
不意をつかれた倉持はバランスを崩してしまう。
その時、お手洗いに行った時、うっかり上げ忘れたジッパーから、ギンギンに硬直した倉持Jrが顔をのぞかせる。
倉持は瞬間、体をよけようと、後ろに自身の身体を引っ張る。
しかし、勢い余って、反対側の壁に激突してしまう。
そう、シェアハウスは結構狭いのだ。
さしもの倉持も酔った状態で、頭をぶつけては、機能停止は必至である。
そのまま、しばし、気を失ってしまう。
一方桜は口に何か硬いものを感じていた。
桜「ん…んんん… ほっひいし…ふぁふぁい…ほのふうぃんふぁー」
もごもごと舌を動かす。
翌朝、いつも通りの時間に二人は起床し、何事もなかったかのように仕事へ向かったのは言うまでもない。
ただ、いつもと違うのは目を覚ました桜の頭元に2000円置かれていたことである。