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倉持氏はラッキースケベでいつも金欠  作者: ものかろす
日常編②
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倉持は出張する 金曜日(中編)

倉持が午後の研修をしている間、白銀は支社のシステム部にて、稼働状況のチャックやトラブル時の対策方法の指導をしていた。


白銀(優秀なエンジニアが多いな… 対応能力も高い… これなら今後は遠隔の指示でも大丈夫そうだな…)


白銀が一通りの業務を終えて、倉持を探しに行くと、何やら人だかりができている。

倉持がたくさんの女性に囲まれていたのだ。


白銀(ほう… ま、まあ、確かにクラさんは普通にしていればただのハンサムな好青年だからな… 好かれるのも無理はない…)


女性社員の囲い込みが止む気配はない。

何人かの女性は身体をグイグイと押し付けているようにも見える。

倉持がきょろきょろとあたりを見渡し、白銀に気が付く。

倉持は目で助けを訴える。

白銀は眉間にしわを寄せる。


白銀(…はぁ… こんなことだと、簡単に助けを求められるのに… どうしてもっと大変なことは、一人で何とかしようとしてしまうんだろうな…)


白銀は携帯電話を鳴らす。

倉持は着信を理由にその場を後にする。


倉持と白銀は支社長室前で待ち合わせ、挨拶をすると、すぐにオフィスを後にする。


倉持「ありがとう。 助かった」

白銀「良かったの~? あの中の人とワンナイトもできたんじゃない?」

倉持「いやいや、そんなことはできないよ。 それに夜は白銀さんとの約束があるでしょ」

白銀「…フフフ、よさそうなお店探しておいたわよ」

倉持「ああ、で、何時の新幹線で帰るの?」

白銀「え?」

倉持「今日の宿泊代は出ないでしょ? 私はネットカフェに泊まる気だけど、白銀さんは新幹線の予約があるんじゃないの?」

白銀「…何も聞いてなかったわ… 新幹線…明日になってる… ホテルのチケットは… ないわね… あー、まあ、いいやどこか適当に泊まるわ」

倉持「昨日満室だったし、大丈夫かな?」

白銀「普通は大丈夫だと思うわよ」

倉持「そうかなぁ」

白銀「まあ、それなら私もネカフェに泊まるわ。 鍵付きの個室もあるでしょうし… ホテルよりはマシだわ」

倉持「そうか… じゃあ、大丈夫か」

白銀「そんなことよりも、はやく行きましょう」

倉持「ああ」


白銀は個室のある和食のお店を案内した。


倉持「おおー、中々風情があるね」

白銀「でしょー。 この佇まい… 美味しいに決まってるわ。 さ、行きましょう」


靴を脱いで個室に入り、お手拭きで手を拭く。


白銀「さ、メニューどうぞ。 私はもう大体決めてるから」

倉持「あ、ああ… 迷うな… どれも美味しそうだ」


倉持はメニューとにらめっこしながらうなる。


白銀(迷ってるなぁ… 普段あんなに判断が早いのに… こういうとこでのメニュー決めはすごく優柔不断なんだよなぁ…)


白銀「はい。 時間切れ―」

倉持「ええ、まだ。 決まってないよ」

白銀「どうせ、値段気にして、決めかねてたんでしょ… 実は…もう頼んでましたー」

倉持「そうなの」

白銀「最近、ずっとお昼はもやしだったでしょ? ここは私がもつから、美味しいもの食べなよ」

倉持「…ああ、ありがとう」


二人の前に御膳が運ばれる。

ご飯に吸い物、天ぷらにお刺身、そして極めつけは存在感抜群のアワビ。


倉持「おおー… これは、スゴイ」

白銀「ねー。 写真見て、ここ一緒に行きたいって思ったんだ。 あ、予算的には昼と変わらないから気にしないでね」

倉持「あ、ああ… それじゃあ、いただきます」

白銀「いただきます」


二人は御膳を堪能し、店を出た。


倉持「いやーー。 本当に美味しかった」

白銀「良かったぁ」

倉持「さて、宿を探そうかな」

白銀「そうだな」


二人は3件ほどネットカフェを回るが、どこも空いていなかった。

倉持はこっそり個室ビデオ店を訪ねるが、そこでさえも空きはなかった。

ホテルに連絡をするが、全て満室であった。


白銀「…何かイベントでもあるの… 確かに金曜日は多いと思うけど…」

倉持「分からない… これまでこんなことなかったのに…」


二人の頭に、同時にある考えがよぎる。

しかも都合よく、それはすぐ目の前にあった。


『エンガン』『ジャズ』等々、看板が煌めく。


倉持「…」

白銀「…」

倉持「…」

白銀「…そういえば…さっき個室ビデオ店に行こうとしたでしょ」

倉持(バレてたッッ)

白銀「…もしかして… 溜まってる… とか うなぎとか…とろろとか食べてたし…」

倉持「い…いやぁ…別に…」


白銀が倉持の顔を覗き込む。


白銀「目は口ほどにモノを言う… その目の動きでバレバレよ」

倉持「…まあ… 男性なので」


先日三奈にもバレたことで、やや開き直っていた倉持であった。


白銀「分かった。 じゃあ、私がお風呂にゆっくり入るから、その間に抜くがいい」

倉持「いや、どんなプレイだよ」

白銀「だって、その…できないんだろ? なんか色々と事情があって… だから抜けばいいさ… 

なんならおかず位にはなるよ」

倉持「それはさすがにダメだって…」

白銀「何よ。 私じゃ役者不足って言いたいの?」

倉持「そんなことないよ。 かなり魅力的だよ」

白銀「ウソだ。 二次元の女の子の方が魅力的なんでしょ!」

倉持「なぜ、それを」

白銀「…そうなの?」

倉持「え…」

白銀「…いや… 金剛伯母さんから、ちらっと聞いてたけど…まさかほんとに?」


倉持は赤面した。


白銀「…これは… 脅しになるかしら? ホテルに行かないなら―――とか…」

倉持「えーと… ホテル行きます?」

白銀「あら、それが女性をホテルに誘うときの文句かしら?」

倉持「…お願いします… とりあえず、一緒にホテルに入ってください」

白銀「…まあ、いいわ。 それと、じっくり聞かせてもらおうかしら」

倉持「…」

白銀「あ、その前に飲み物とか買いましょうよ」

倉持「…そうね」

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