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倉持氏はラッキースケベでいつも金欠  作者: ものかろす
日常編②
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倉持は出張する 金曜日(前編)

朝食はホテルで済ませてから、支社へ向かう。

支社長と挨拶を交わし、すぐに研修室で機材の確認を行う。

何事もなく研修を終える。


倉持と白銀は参加者を見送り、控室にもどる。


倉持「お疲れ」

白銀「お疲れさま。 不具合が出なくて良かったわ」

倉持「だね。 システム系は予期しないことが起こることも多いからね」

白銀「そうそう」

倉持「さて…行こうか」

白銀「ん? どこへ?」

倉持「お昼ご飯」

白銀「え! いいの」

倉持「時間もあるし、せっかくだから行きましょう」


倉持と白銀はビルを出て飲食店街へ繰り出す。

倉持は目移りすることなくずいずいと進む。


倉持「ここだね。 うなぎ嫌いじゃ無かったよね?」

白銀「ああ、むしろ好物だ」

倉持「なら良かった。 今日のお昼はひつまぶしです」

白銀「おおー。 もう店先の匂いで美味しいのが分かる」

倉持「匂いだけで白米が進む」

白銀「おいおい、訴えられちゃうぞ」

倉持「じゃあ、小銭をチャラチャラさせないと」

白銀「お後がよろしいようで…」

倉持「行きましょう」


倉持と白銀は入店し、すぐに席に案内された。


白銀「いつ予約取ったんだ」

倉持「研修の合間」

白銀「さすが、抜け目ないな」

倉持「お昼休憩を少しずらしたのも、このため」

白銀「職権乱用じゃないか」

倉持「まあまあ」

白銀「さて、注文はもう決まってるのかな?」

倉持「ああ、ひつまぶし一択」

白銀「おいおい私がうなぎ嫌いだったらどうする気だったんだ?」

倉持「大丈夫。 食べ物の好き嫌いやアレルギーは大体把握している」


白銀(誕生日は覚えてないのに… まあ、こいつらしいと言えばそうだな)


午後の研修の流れを確認していると、ひつまぶしが運ばれてきた。

倉持と白銀は店員に軽く会釈をする。


白銀「やばい… 匂いが…お櫃から漏れ出てる…」

倉持「ここは出汁もあるから、3度楽しめますね」

白銀「じゃあ…早速… おおーーー」

倉持「うなぎが…お櫃いっぱいですね」

白銀「いただきます」

倉持「いただきます」


倉持と白銀はまずはお米とうなぎをすくい口に運ぶ。


倉持(ああ…うなぎの身が…ふっくらしてほくほく…絶妙な焼き加減。 ご飯も適度な食感でよく合う。 そしてタレ…うなぎのうま味を最大限引き出す甘味… うまい)

白銀(美味しい… サクッとした皮の食感…タレが絡んだご飯… 噛めば噛むほど旨味が広がる…さすがクラさんセレクト…)


二人は無言で、黙々と食べ進める。

もう一度うなぎとご飯、次に薬味に手を出す。

のり、ネギ、わさび、とろろ…いずれもうなぎのうま味を存分に引き出す。


倉持(吸い物もうまい… この細部まで手を抜かない丁寧な作り…さすが老舗ッッ)

白銀(やばい… マジで美味しい…これは精がつきますわ。 とろろの粘りもしっかりしてる)


残り5分の2のところで、倉持は出汁を入れる。

出汁にすべてのうま味が溶け込む。

倉持も白銀も一気にかきこむ。


倉持(うまい… このすべてのうま味が融合した形… まず一つ一つのおいしさを存分にインプット…頭がおいしさを覚えたところで、そのおいしさを一気に押し込む… おいしさの連続攻撃、これはやばい… うま味の積み重ねが一気に爆発する…)

白銀(はぁー… おいしい…)


倉持「ごちそうさま」

白銀「ごちそうさま… ああー美味しかったぁ」

倉持「そう… それは良かった」

白銀「でさー… こんなに精つくもの食べて大丈夫?」

倉持「ああ、夏バテしちゃいけないからな。 しっかり食べないと」


白銀(ん? 話が噛み合わんぞ… 逸らされたか)


倉持と白銀はあったかいお茶をすする。


倉持「夏でも、こういう時はお茶が良いですよね」

白銀「だねー 落ち着くわー」


しばしまったり過ごす。

倉持が会計札を持ちレジに向かう。


白銀「おお、クラさん。 私も払うぞ」

倉持「いや。 ここは私が…」

白銀「…」


倉持はささっと会計を済ませて店を出る。


倉持「ごちそうさまでした」

白銀「ごちそうさまでした」


白銀はお代を倉持に押し付ける。


白銀「はい」

倉持「いや…いいって、ここは私が選んだんだし」

白銀「そういうわけにもいかないわ。 私だって働いてるんだし、こういうところきっちりしておかないと気が済まないの」

倉持「うーーーん」

白銀「はい」

倉持「じゃ…じゃあ、夜はお願いしていい? あ、もちろんあまりに高い場合は私も払いますんで」

白銀「…」

倉持「…ダメですか?」

白銀「はぁー。 お互い頑固ね… 分かった。 じゃあ、それで。 夜は私に任せて」

倉持「はい。 楽しみにしています」



一方そのころ 

シェアハウスでは由紀と紅葉が二人でお湯につかっていた。


由紀「ふうーー。 これ維持費大丈夫か?」

紅葉「大丈夫よー」

由紀「そうかー ああーー…昼から風呂に浸かれるっていいなぁ」

紅葉「ねーー」

由紀「しかし… 倉持… 抱えてるなぁ…」

紅葉「そうね…」

由紀「まあ…かといって… 私にできることはないんだけど…」

紅葉「難しいわよ… 下手に動いても、かえって倉持さんの負担になるだけだし」

由紀「だよなぁ… 律儀すぎるんだよな… あれはいつか人間関係で潰れてしまうよ」

紅葉「難しいでしょうね… しみついたものはなかなか落ちないわ…」

由紀「…対等な…関係になれる人間がいれば、また違うんだろうけどな」

紅葉「うーん… 難しいでしょう。 彼と同じレベルで話したり考えたりできる人はそうそう多くないわ」

由紀「だなぁ… あいつが合わせることはできても、あいつに合わせることができる奴はそうそういないわな」

紅葉「そういう… 友達がいればいいのにねぇ」

由紀「んだ」

紅葉「まあ、案外もういるかもしれないけど… 職場とかに」

由紀「それならいいけど…」

紅葉「そうなると… また別のややこしい問題が発生しそうだけどねー」

由紀「はは… 何角関係だろな」

紅葉「…さあ… まあ、半端な数なら角が立つけど、ものすごい数になればかえって円満になるかもね」

由紀「だなー… ふうーー。 それにしてもいい湯だなー」


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