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倉持氏はラッキースケベでいつも金欠  作者: ものかろす
日常編②
43/371

倉持と危険な夜(後編)

数本のベクトルが球に向かう。

およそ2時間で、全ての問題の解説が終わった。

さしもの倉持も、少々疲れていた。


三奈「クラさんありがとー。 これで空間ベクトルバッチリだよ」

倉持「それは良かった。 基本もできてるし、公式も覚えられてるから、後は図を書いて整理すれば大抵大丈夫だと思うよ」

三奈「へへ、ありがと」


三奈(あれーーー。 普通に問題解説だけで終わっちゃった…)


三奈はきちんと解説を聞きながらも、要所要所で倉持に胸を当てたり、机に胸を乗せたり、パタパタと胸元をはためかせてパイチラをしたりしていた。

しかし、暖簾に腕押し、糠に釘、倉持に効いている様子はなかった。


三奈(…私やっぱり、眼中にないのかな…)


倉持「さて、じゃあ、だいぶ遅くなったし、帰るね。 また難しい問題があれば言ってね。 出来る問題なら協力するから」


倉持はこっそり500円を置く。


三奈「う、うん。 ありがとう」


三奈は名残惜しみながらも、倉持を玄関まで見送る。

靴を履く倉持の背中をただただ見つめる。

ドアから出る瞬間、倉持はもう一度向き直り、別れの挨拶をして、外に出る。

三奈は手を振って見送る。

ドアがパタンとしまる。

その音が廊下に響く。


突如外から音がする。

ザ―――――

ビュオ―――――

ガガシャー と


ものすごい勢いで雨が落ちる音、風の音、雷鳴。

三奈がドアを開けると、門の先に、びしょびしょの倉持の姿があった。

倉持がフラフラと戻ってくる。

恥ずかし気にうつむきながら、倉持が三奈の家の前に来る。


倉持「申し訳ない… 電車も停まってしまったみたいで… 少し休ませてもらえませんか」

三奈「いいよ!」


三奈は気の毒そうな表情を必死に作りながらも、内心は狂喜乱舞していた。


三奈「クラさん。 ヤバいですよ。 お風呂どーぞ」

倉持「い、いや、それは悪いですよ。 少し軒先で休めば…」

三奈「ダメダメ、風邪ひいちゃうよ。 ささ、入って入って」


三奈はこの千載一遇のチャンスを逃すまいと、倉持をとにかく家の中に押し込み、半ば強引にお風呂に入れた。


三奈(キター。 クラさんには悪いけど… これはチャンス。 もう一度アタックできるチャンスだわ。 さっきは何もできなかったけど、今度こそ… と、その前に着替えと、バスタオル…)


三奈は父親の服と、バスタオルを持ってお風呂場に行く。

積極的に…とはいっても、一緒にお風呂に入るというところまではできない三奈である。

一瞬よぎるが、さすがにそれは早い、と却下していた。


三奈(あれ? 電気ついてない… シャワーの音もしていない… もう出ちゃったのかな? カラスの行水なのね)


三奈は真っ暗な浴室を見つめる。


三奈(お手洗いにでも行ってるのかな… じゃあ、私も入っておこうかな…)


三奈はパーカーのチャックを降ろす。

胸が露わになる。


三奈(うー。 さすがに直は… こすれてちょっと痛かったなぁ)


その後ホットパンツを降ろす。

浴室のドアを開ける。

そこでは、倉持が糸のようにちょろちょろとシャワーを流しながら、身体を温めていた。


倉持「あ…」


倉持が振り返ると、三奈が何も身に着けず、浴室の入り口で固まっていた。

三奈の眼から、涙がこぼれる。


倉持「…」

三奈「…背中…」

倉持「大丈夫… 痛くないから…」


三奈が小学生の頃、一度階段から落ちたことがある。

その時、家庭教師に来ていた倉持が下敷きになり、無傷で済んだ。

階段の下で、倉持の顔に下着を押し付けてしまった程度で済んだ。

三奈はその時、倉持が死んでしまうと思い、号泣した。

その時に、倉持は三奈に傷の一部を見せて「大丈夫。 私は頑丈だから、これぐらいじゃ死なないよ。 この傷に比べれば、大したことない。 だから安心して」と三奈を慰めた。


三奈「傷…だらけじゃん…」

倉持「それだけ、助かってるってことだよ」

三奈「痛くない?」

倉持「…痛くないよ」

三奈「…」


三奈はおもむろに体にボディソープをプシュプシュとかけて、泡立てる。

そのまま、胸を倉持の背中に押し当てて、プニフニと泡を塗りたくる。


倉持「み、三奈さん… 何を」

三奈「洗う。 背中洗う…」


倉持は身動きが取れない。


倉持「せ、せめて、ボディタオルで…」

三奈「そんな固いのじゃ痛いよ…」


三奈は胸で倉持の背中を優しく包んでいく。

一つ一つの傷を癒すように。

横に横に、縦に縦に、ぐるんぐるんと背中をなぞる。


三奈「ま… 前も」

倉持「さすがに、勘弁してくれ…」


三奈がシャワーで泡を流すと、依然として、そこには傷があった。

三奈は肩甲骨の間にある傷の一本をなぞる。


三奈「痛い?」

倉持「今は…もう大丈夫」

三奈「クラさん… いつか死んじゃうよ?」

倉持「…かもね」


三奈は倉持に全身を押し当てる。


倉持「…大丈夫…大丈夫だから」

三奈「…私…子どもだから… 何もできない… 何も…」

倉持「そんなことないよ… 私は三奈さんのおかげで、助かってるよ」


倉持はみぞおち当たりにある三奈の手に、そっと、手を添える。


倉持「学生時代の私を必要としてくれた… 今も通勤中、声をかけてくれるお陰で、今日も頑張ろうと思える…… それが私には…とても嬉しいし…救われてるよ」


三奈は真っ赤に染まった顔を伏せながら、全身の泡を排水口に流していく。

ふと、倉持が下半身に巻いているバスタオルに目が行く。

タオルが倉持の臀部にぴたりと張り付いており、前方に引っ張られているようである。

三奈は一層赤面し、先に浴場から出ることにした。


三奈「わ、私、あとで入りなおすね。 風邪ひくといけないから、ちゃんと温まって出てね。 バスタオルと着替え置いてるから…あと、明かりも着けてね。 じゃ、じゃあ」


三奈は勢いよくドアを閉める。

そのまま、へたり込んでしまう。


三奈(なんて…大胆な…こと… それに…クラさん… あれって、たってるよね…ああ、見ればよかった… でも、でも…コワいし… 友達は彼氏としてるっていうけど…あれを…)


三奈はまだ、水気を取っていない自分の秘部に眼を降ろす。

胸で見えないので、指を使って、その部分をまさぐる。

濡れた亀裂の横に指をあて、指を少し開く。


三奈(こ… ここに…)


三奈はいまさらながら、自分の行動に驚いていた。

水気を拭き取り、パーカーを羽織る。

下着をつけてからホットパンツをはく。

ドライヤーで少し濡れた髪を乾かす。


ほんの数分で三奈の情緒は外の嵐のように乱れていた。

台所に行き、瞬間湯沸かし器のスイッチを入れる。

ぐちゃぐちゃの思考がまとまる前に、お湯が沸く。

マグカップに、ドリップタイプのコーヒーのパックを破らないように丁寧に広げる。


風呂場のドアが開く音が聞こえる。

その音を合図に、お湯を注ぐ。

まずは、1分ほど湿らす。

そして、溢れ出ないように、少しずつお湯を加えていく。


三奈(やっぱり… 無茶はダメだわ… クラさんの傷を増やすだけ… でも… もうちょっとだけわがまま言うぐらいは良いわよね… だって、私… 子どもだもの…)


お風呂から上がった倉持に三奈はコーヒーを振舞う。


三奈「じゃあ、私入りなおすからね。 コーヒーどうぞ」

倉持「ああ、ありがとう。 さっきは…ごめんよ」

三奈「大丈夫だよ」


三奈はまず、部屋に戻り、手持ちの中でも一番可愛らしい下着を取り出す。

さらに、もこもことファンシーなパジャマを用意する。

三奈は脱衣所へ着くと、パーカーを脱ぐ、下着とホットパンツをまとめて降ろす。

ささっと、シャワーを済ませると、下着で下半身を包み、パジャマを着る。


台所では、まだ倉持がコーヒーを飲んでいた。


倉持「どうも、ごちそうさま… 雨少し、弱まったから、ぼちぼち帰るね」


三奈はこの日最後の勝負に出る。

パジャマの袖に手を隠し、もじもじと体をよじらせながら、可能な限り甘えるような声で囁く。


三奈「…三奈ね… カミナリコワいの… パパもママもまだ帰ってこないから… 一緒に寝てほしいの」

倉持「…え… いや…さすがにそれは…」


三奈テーブル越しに、ずずいと倉持に顔を近づける。


三奈「おねがい」



三奈は倉持を部屋に連れ込む。

倉持は…ならばと、眼を隠し、口にマスクを当て、手足を縛り、ベッドの真横に敷いた布団に身を置いた。さらに、自分にスマホを向けて、録画を始めた。


三奈「何も…そこまでしなくても…」

倉持「いえ…これでもまだ、足りないぐらいです」

三奈「はは…」


三奈は聞こえるかどうか分からないぐらいの声でつぶやく「こっちはいつでも同意なのになぁ」と。

三奈はベッドの上から、倉持を眺める。

倉持の鼻をちょんとつまむ。


倉持「な…なに… なんですか? 何かが」

三奈「ごめんごめん… 布団がずり落ちちゃった…」


三奈は…倉持の背中にある多くの傷に死を意識した。

そう遠くない未来に別れを予感した。

しかし、だからこそ、無理なことはやめようと思った。

無理に迫って、倉持を傷つけるよりも、少しだけ、近くにいられれば良いと思った。


三奈(とりあえずは、近くの一人になれればいい。 だから今日はこれでいいや… あ…でも… もう一回ぐらいなら…)


三奈「クラさん…手握っていい?」

倉持「いいよ」


倉持は身体の前で縛った手を差し出した。

三奈はその手をぎゅっと握りしめた。

倉持は両手で包み込むように握り返した。

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