倉持は逃れられない(前編)
倉持は山へ向かった。
山と言っても、険しい森を切り開いたものではなく、ちょっとした森林公園程度の山である。
装備もリュック一つで事足りる。
そこまで有名なスポットではないので、人が少ない。
平日ならば、誰一人いないという状況も珍しくない。
それが倉持にはありがたかった。
人に囲まれるのは好きな方であるが、人に迷惑をかけることは悪いと思ってしまう。
そのため、定期的に一人きりの時間を作る。
そうすれば、ラッキースケベが起きる可能性は低いからだ。
だが、この時も、倉持は自身のラッキースケベ力を侮っていた。
というよりも、女性たちからの好意が倉持の想定を超えていたといった方が良いだろう。
街では、桜と宇美が買い物をしている。
喫茶店が修理工事のため、お休みなのだ。
二人は来る夏に備えて、水着を見に来ていたのだ。
桜「ねぇ、これはどうかな?」
セパレートタイプの水着である。
ピンクを基調にフリルで装飾されている。
宇美「確実にポロリすると思います。 あと、下が空いているので、そこから手が入ると思いますよ」
桜「やっぱそうかぁ… 可愛いと思うんだけどなぁ」
宇美「まあ、水着の時点で布一枚、倉持さんの前では全裸と一緒ですよ」
桜「だよねぇ。 この上下ついたのはどうかな?」
宇美「スク水タイプは、めっちゃ危険ですよ。 上からのずり落ちやポケットからの侵入、最悪全身はちきれる恐れもあります」
桜「だよね。 そうすると、やっぱりセパレートタイプの方がいいのか…」
宇美(まあ、全部倉持さんと行く前提での話ですけど… でも、桜さん誘う気満々だし… 地味に積極的なのに… 報われないなぁこの人… あ!)
宇美「せっかくですから、倉持さんに聞いて見てはいかがですか?」
桜「ええっ! 倉持さんに… うーん… そうだね。 聞いてみようかな」
近年水着の試着は不可であるが、この後の展開のため、リアリティよりもエロをとることをご容赦いただきたい。
桜は最初に選んだ、セパレートタイプの水着を試着する。
慣れない手つきで、手を高く上げ、全身が入るように自撮りする。
桜(て、手がつる。 こ、これでいいかな)
桜(撮れた。 早速送ってみよう!)
倉持サイド
倉持(ん? 桜さんから? なんだろ? 水着の感想… うーん。 私そういうの疎いからなぁ…桜さんなら、どれでも可愛いとは思うけど… ん? ん?)
倉持に送られた写真。
自撮りの時に水着がずれてしまったのか、桜の片方の乳房の頂点が映りこんでしまっていた。
倉持(生だとなるべく顔をそむけるようにしてるけど… 画像…じっくり見てしまった… しかも、ここには人がいない… うわああああ… どうする? 指摘すべきか?)
倉持が苦悩していると、さらに連絡が入る。
桜 メール「どうかな? ちょっと、過激かな?」
マイクロビキニである。
しかし、ぽろりはしていない。
倉持(さっきの方が過激でしたああああ。 いや、これもエッチですけど… ああ、連絡しないと…既読スルーはご法度…えーっと…)
倉持 メール「どちらも可愛いですよ。 しいて言うなら、もう少し控えめが良いかもしれません。 ずれると大変ですから」
倉持(これで、気付いてもらえるか?)
写真が送られる。
桜「これなら、控えめかな?」
全身タイプの水着である。
倉持「これは… 身体のラインが… けど、露出していない分… これが一番安全…」
倉持の手が止まる。
倉持「……」
倉持 メール「少々お待ちください」
倉持は桜にそう返すと、ネットで水着を探す。
倉持(違うだろ倉持。 桜さんは水着を真剣に選んでいるんだ。 私も真剣に探すのを手伝わないと…桜さんに似合う水着…桜さんに似合う…)
倉持(!! このクロシェタイプの水着…綺麗な紋様だ…きっと…似合うだろうなぁ)
倉持は画像のURLを添付した。
桜 宇美サイド
桜「…あ、カワイイ…」
宇美「決まりました?」
桜「うん… 倉持さんが調べてくれたの、これにしてみる」
宇美「へー いいじゃないですか」
桜は倉持の添付写真と同じようなものを選び、試着後倉持に送った。
倉持(そうそう、こんな感じ… うん、やっぱり似合いますね)
倉持 メール「とても似合いますよ。 可愛いと思います」
桜「これにする!」
宇美「はは、良かったですね」
宇美❘(さて、私はどれにしようかな…私もついでに聞けたらよかったなぁ)
桜「宇美ちゃん。 一緒に来てるって言ったら、倉持さんが宇美ちゃんに似合いそうなものも送ってくれたよ」
宇美「え? ホントですか」
桜「うん。 ほら」
宇美(…セパレート… パーカーとのセット… 下も短パンタイプかぁ… 似合いそう… )
宇美はチョイスの的確さを賞賛しながらも、自分の、桜たちと比べると決して豊かとはいえないバストやヒップを呪った。
倉持サイドへもどる
倉持(二人とも、いい水着があったようでよかった。 さて、もう少しで開けたとこに出るぞ、そこでお弁当を広げよう)
職場サイド
白銀と赤井が倉持のデスク前に来ている。
白銀「倉持さん。 あれ?」
赤井「倉持さん…ん」
白銀「赤井さん… 先日はどうも」
赤井「こちらこそ… お騒がせしましたぁ」
そこに、トコトコと青野がやってくる。
青野「どうしたんですか? 倉持さんなら、しばらくお休みですよ」
白銀「え。 休み? なんで?」
赤井「聞いてないわよ」
青野「まあ、急でしたしね。 ここ最近、倉持さんずっと働きづめだったんで、早めの夏休みを取ったんです。 山に行くって言ってたので、今頃山頂でお弁当を広げているころでしょうね。 ん? お二人とも、お弁当持って… これからお昼ですかぁ?」
白銀(誤算… こないだので、距離が縮まったと思ったから…お昼に誘いたかったのに…)
赤井(マジかよ。 昨日そんなこと言ってなかったのに… 倉持めぇ)
青野「そうだ。 良かったらみんなでお昼にしません。 ねぇ緑谷さん」
緑谷「は、はい。 え? お昼ですか? ご一緒していいんですか?」
白銀「…」
白銀(まあ、いいか… 彼女達とも、話してみたいことがあるし)
白銀「そうですね。 せっかくだから、屋上に行きましょうか、鍵を借りてきましょう」
倉持サイド
山頂でお弁当を広げる倉持。
この後どうなるか、知る由もなかった。




