表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
倉持氏はラッキースケベでいつも金欠  作者: ものかろす
決意編
180/371

倉持と討論(前編)

弁当事変の3日後の仕事終わり

倉持は筑紫に誘われて、仕事場近くのコーヒーショップに来ていた。

いつになく神妙な面持ちの筑紫であった。


筑紫「倉持さん…」


倉持は唾を飲み込み、筑紫の次の言葉を待った。

心を開いてくれるようになったのは嬉しいことであったが、筑紫は時折突拍子もない発言をする。

倉持も予想が難しいのである。


筑紫「妊娠しました!」


倉持の脳は震えた。


筑紫「倉持さんが!!」


倉持の脳がフリーズした。


筑紫「出産しました!!!」


倉持の脳内が盛大にバグった。


倉持「ごめんなさい… 説明を」

筑紫「ああ… 言葉足らずですみませんでした」

倉持「ええ…」

筑紫「緑谷さんが青野さんをTSしたあげく、オメガバース展開を繰り広げました。 青野さん(♂)がα(アルファ)で、倉持さん(♂)がΩ(オメガ)で、イチャラブセッ○スの果てに倉持さんが… 倉持さんがぁ… 妊娠しました… 元気な男の子を産みました」

倉持「聞いても、半分しか分かりませんでした」

筑紫「半分、分かれば十分こっち側です」

倉持「ですが… 青×倉は以前もありましたし… どうしてそんなに取り乱しているんですか?」

筑紫「それはですね… 私はオメガバース反対派だからですっっ」

倉持「は、はあ…」


筑紫「それと… 実は私… そもそも青×倉派じゃないんです… 倉×青派なんですよ… 以前も実はそれで、やきもきしてまして… 私は後輩の無自覚誘い受けが好きなのにぃっ…」


カップリング論争

それは時折、戦争を巻き起こすことさえある。


余談であるが、近年は学校教育において掛け算を教える際にもかける数とかけられる数の順番をきちんと指導することが重要となっている。

学習指導要領において明確な規定はなく、あくまで現場の裁量となってはいるものの、教育者においては重要な観点である。


かける方とかけられる方…

交換法則を柔軟に使える人もいれば、リバシはNGという人もいる。

緑谷は柔軟である。

灰田はキャラによってはNG。

藤壺はOK。

倉持はキャラや描写によってはOK。

筑紫はNGである。


しかも、筑紫は攻めに強いこだわりを持っていたのだ。


筑紫「まあ、あれです… リバシはあくまで私の趣向ですから… それを押し付けることはできません… けど… けど… 妊娠までしちゃったら… そこまで描かれちゃったら… 倉×青が捗らなくなるんです!!!」


倉持「…」


倉持はお金だけ置いて立ち去ろうとした。


筑紫「待ってくださいよおおお。 このままじゃ、私、友里とカプ論しちゃいます」

倉持「そ、その… オメガバースの話はですね… ちょっと、私ではついていけないと言いますか… 業が… 深すぎて…」

筑紫「…そうですか。 分かりました… すみません。 変なことに巻き込もうとして」

倉持「いえ… お力になれず… すみません」


倉持がその場を立ち去ろうとする。


筑紫「これじゃあ、イラスト本の執筆が捗らない… せっかくの百合イラスト本(R-18)… ああ… せっかく巨乳むちむちネコ耳少女のラフまで書いたのにっっ」


倉持は椅子に腰かけていた。


倉持「話を聞きましょう」

筑紫「私、倉持さんのそういう欲望に正直なとこ好きですよ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

金曜日の夜

急遽シェアハウスのリビングにて、有識者たちが集った。

騒音や費用の事を考慮し、ここが最適だと判断された。

桜や青野は宇美の事を考慮して、避難することにした。


倉持は今回の問題を解決すべく3つのテーマで話し合い和解を促そうと考えた。

討論テーマ①「リバシはアリか否か」

討論テーマ②「オメガバースの是非」

討論テーマ③「自由討論」


まずテーマ①のリバシについての話が始まる。


ジャッジ 紅葉

解説進行 倉持

アリ派  緑谷 藤壺 由紀

ナシ派  筑紫 灰田 真冬


倉持「それでは… 両陣営よいでしょうか? 一応条件付きでOK、NGとした方も、便宜上アリ、ナシに分けさせていただきました。 解説と進行は私倉持が、ジャッジは紅葉さんにお願いしています」

紅葉「よろしくお願いします」

倉持「すみません。 中立且つ、知識のある人が紅葉さんしかいなかったので… 紅葉さんがそういうのを知っているというのは意外でしたけど…」

紅葉「ホモが嫌いな女子なんかいません!!!!」

女性陣全員(女子?)


倉持はとばっちりで鎖骨を殴打された。


倉持「そ… それでは、リバシの可否について… お話しください」


筑紫「なし! なしです! BLは関係性の美学です… その関係性をコロコロと替えるのは侮辱です」

由紀「関係性だって? フフフ、人間は成長過程において、人との関係性を変えていくものだ… 昨日の友は今日の敵… 昨日の受けは今日の攻め… その場その時のありようで関係は変わっていくものだ」

筑紫「ぐ… 一理あります。 成長過程において、関係性が変わるというのはジュブナイル系の話では良いと思います。 ですが、成熟した大人は一度築いた人間関係をそう簡単に覆せますか?」

藤壺「確かにそれは難しいですが、例えば恋愛はまさに関係性の劇的変動ですよね? むしろ恋愛によって関係性が変わるのは大人ならではの事象では?」

筑紫「ぐ…」

灰田「ちょっといいですか? 関係性という言葉は少々抽象的だったんで、迷走するのは仕方ありませんがね。 話がずれてきているので、修正しましょうかね。 まあね。 私から言わせれば、リバシが生じるのはいいと思うんですよ… ただ、大事なのはそれが興味本位や逆張りのようなものなのか… それとも必然的なドラマによるものなのかってとこだと思うんですよね」

藤壺「どういうことですか?」

灰田「関係性は変わるものです… それはそうです。 成長と人間関係は切っても切り離せないものです… ですよね?」

由紀「ああ…」

灰田「ですね! じゃあ、成長も何もなく、ただただ関係性が変わるだけの現象をどう見ますか?」


緑谷由紀藤壺に衝撃が走る。


灰田「悲しいかな… リバシ表現のいくつかには、そういった理由が見られます…」

真冬「特に理由もなく、攻めキャラが受けになり…」

筑紫「総受けキャラが、なぜか脈略もなく攻めるとか…」

灰田「結局のところ描写ってことにはなるのですが… 単なるリバシは冒涜になるだけだと思うんですよね」


倉持「さあ、灰田さんの一手… これは大きいですね」

紅葉「ですね。 確かに安易なリバシは萎えますね」


緑谷が手を上げる。


緑谷「もはや死語になりつつありますが… 801… や(やまなし)お(おちなし)い(いみなし)という言葉があります…」

真冬「いかにも…」

緑谷「創作は難しいものです… ストーリーをかける人はいいでしょう… 脚本を思いつける人はいいでしょう… でも、世の中には妄想を上手に表現できない… 思いを上手に表現できない人もいるんです… やおいはそんな人たちの救いなんです。 やまもおちもいみもない… けど、そこに萌があれば何とかいける… 成長や関係性を描くことができない人間に残された創作手段なんです。 そういった人たちは、あの手この手で登場人物たちを表現しようとします。 時にリバシによって、別の顔を描いてみたくなるんです」

筑紫「はっっ」

緑谷「いけないことでしょうか… 好きな人の色々な一面を見てみたいって思うことは… 責めるときの顔… 受けるときの顔… 色々な顔見てみたくないですか?」

由紀「例えば、キスをするときの顔… キスを待つときの顔… 想像してみな… 両方味わえた方が… お得だろぉ」

藤壺「BLもとい… やおいの真価は受け手の想像力にある。 関係性の描写云々言うのなら、自分で、その描写を補完すれば良いのよ」


筑紫「くうっ…」

真冬「そういわれると…」

灰田「…」


倉持「おっとー、ここで形勢逆転だぁ。 さあ、テーマ①もいよいよ佳境です。 ここで、ナシ派はどうでるか?」


紅葉(倉持さん… 結構こういうノリ好きよね)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ