倉持とハロウィン(前編)
時は遡り青野の誕生日の前日
倉持は目覚めた瞬間からずっとそわそわしていた。
そわそわの要因の8割は青野の誕生日のことだが、2割ほどは別のことだった。
「Trick or Treats」お菓子をくれなきゃイタズラするぞ
ここ数年ですっかりおなじみとなったハロウィンである。
もともと仮装は子どもたちが悪魔やお化けから身を隠すためであった。
ごちそうやお菓子は悪魔やお化けの機嫌を損ねないようにするためのものであった。
そこから、仮装した子どもがイタズラかお菓子かと尋ねながら家々を回る行事になっていったという。
そして現代の日本において、その行事は大人たちのコスチュームプレイ大会となってしまった。
※一部界隈の話です。
ここぞとばかりに、非日常的な衣装に身を包む。
この行事は倉持にとって、非常にまずいものであった。
倉持(明日… どうしても決めたい… だから、今日、なるべく何も起こさずに一日を終えたい)
奇しくもこの日は金曜日…
ハロウィン+金曜日はもっともマズイ組み合わせである。
ただでさえ介抱的になる金曜日にハロウィンブーストが加わるのだ。
倉持は準備をして、走りに出掛けた。
ジョディがこの行事でなにも起こさぬはずが無かった。
ジョディはネコ耳カチューシャをつけている。
ランニングパンツからはしっぽが生えている。
倉持「おはよう。 ジョディ」
倉持(ネコ耳だああああああ)
ジョディ「Trick o…」
といいながら近づこうとしたとき、ジョディはふらふら揺れたしっぽに足を引っかけ、バランスを崩し、そのまま倉持の背中におっぱいを押し当てる形になった。
倉持「せめて、選択の余地を!! あ、当たってますよ?」
ジョディ「ソーリー… でも… 今はあててるのよ?」
倉持「は、離れてくださいよ」
倉持は100円を払いながら、飴を渡した。
その後も、5回もおっぱいが当たる。
うち1回は生パイであった。
900円を追加で支払った。
倉持(これが、ハロウィンの洗礼… 果たして、持つのか…)
倉持がシェアハウスに戻ると、最近服を着るようになった由紀がいた。
由紀はミニスカナース服を着ていた。
倉持「おはようございます」
由紀「おはよ」
倉持「…その服」
由紀「大型ディスカウントストアで買った」
倉持「いえ… なぜその服をまとっているのかを聞きたかったんですが…」
由紀「ハロウィンだからだろ?」
倉持「ハロウィンはコスプレ大会じゃないですよ?」
由紀「…時代は変わるんだ。 これから、ゾンビコスをするんだよ」
倉持「ゾンビですか… ああ、まあ、定番ですよね」
由紀「腐女子だけにな?」
倉持「ははは… おもしろーい」棒読み
由紀「今日は早めに帰って来いよ? ハロウィンパーティがあるからな?」
倉持「そうですか… まあ、楽しみにしておきます」
由紀「おう」
由紀が背を向けて立ち去ろうとしたとき、由紀は服を着ていたせいで、バランスを崩して、転んで女豹のポーズになってしまった。
当然… ノーパンである。
倉持はミニスカの中に目線が行ってしまった。
由紀は慌てて、後ろ手でそれを隠す。
由紀「あ///」
しかし、隠しきれず、指の隙間から覗く。
倉持はチラリズムに弱かった。
倉持「ぐううううう」
倉持は1,000円支払った。
由紀「このスケベ…」
倉持「そんな… 理不尽なっっ」
このままでは身体がもたないと感じた倉持は、いつもよりも早めに家を出た。
しかし、三奈には読まれていた。
三奈「おっはよー」
倉持「おはよう…」
三奈は倉持の隣に座った。
そして、カバンからネコ耳のカチューシャを取り出して装着した。
三奈「…トリックオアトリート?」
倉持(ネコ耳女子高生がおじさんにそれを言うのは… ダメですって… いや、逆ならもっとヤバいけど…)
三奈は、人差し指で、早速倉持の乳輪付近をくるくる練り練りする。
倉持「ちょっ… 返事を待ってくださいよ…」
三奈「じゃあ? トリックしますか?」
倉持「トリートで…」
三奈「甘いですね… 倉さん。 トリートにはご褒美って意味もあるんですよ?」
倉持「さすが受験生」
三奈「この間は結局、倉持さんの特訓になっちゃったんでぇ… ちゃんとしたご褒美… 欲しいなぁ」
三奈は倉持の腕をおっぱいと腕でロックして離さない。
上目遣いで懇願する。
倉持は片方の腕で三奈の頭を撫でる。
撫でた。
ネコミミに触れつつ、撫でまわした。
三奈は撫でられやすいように頭を傾ける。
倉持「ま、また今度… あの… 冬の模試… そう、冬の模試で判定が良かったらっっ」
三奈「…分かりましたよ 今回はこれで、我慢してあげます」
倉持は三奈に100円渡して、窮地を脱した。
だが、これから向かうのは会社である。
何が起こるか分からない…
倉持(…もしかしたら… 全員コスプレ状態でもおかしくない …いや、さすがにそれはないか)
あった。
さらに営業部の男性社員は全員偶然有給休暇をとっていた。
魔女コスの黒田が事情を説明するが、ほとんど倉持の耳には入ってこなかった。
黒田「と、いうことで、頑張ってね」
倉持(マジか… え… マジですか…)
黒田「こないだ。 大変な目に合ったばかりで悪いけど… まあ、倉持さんなら大丈夫」
倉持「大丈夫な要素が一切ないのですが…」
倉持は自分のデスクにカバンを置き、仕事の準備を始めた。
少し遅れて灰田が来た。
灰田はキョンシーのコスプレをしている。
灰田「おはようございます!」
倉持「おはようございます」
灰田「おかしてくれなきゃイタズラしちゃいますよ?」
倉持「二択に見せかけて… 実質一択じゃないですか!! はい… お菓子」
灰田「くそっ… 引っかからないか…」
倉持「仕事しますよ。 仕事」
午前中… 倉持は何とか仕事をこなした。
倉持「ふぅ… 一段落だな」
灰田「ですね。 お疲れ様です」
そこに赤井と筑紫、緑谷がやってきた。
吸血鬼コスの赤井
フランケンシュタインの怪物コスの筑紫
化け猫コスの緑谷
赤井 筑紫 緑谷「トリックオアトリート?」
倉持「どうぞ… お菓子…」
倉持はコスプレに飲まれて血迷いかけた。